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【読書術】要約はけっきょく、素読に劣る

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「本は読んだほうがいい」「知識を深めたい」という思いがあっても、忙しい日々の中でつい「要約で済ませてしまう」ということ、ありませんか?情報があふれる現代では、効率的な知識習得の手段として要約や要約動画、紹介動画など、要約コンテンツが役立つことも事実です。しかし、一見非効率に見える「素読・精読」こそが、脳に深く定着し、長く活用できる知識を築くためには効果的だと言われています。本記事では、要約だけに頼らない「深い読書」を無理なく楽しむ方法と、その価値を探ります。

内的モチベーション vs 外的モチベーションによる読書

まず、読書に取り組む際のモチベーションには大きく二種類のタイプがあり、それぞれが読書体験や継続性に異なる影響を与えます。一つ目は「内的モチベーション」に基づくもので、これは純粋に本を読む過程そのものを楽しみ、内容に対して好奇心を持って向き合う読書スタイルです。このタイプの読書では、「読むこと自体」が喜びとなり、結果や効率ではなく、プロセスに重きを置きます。読書に没頭するうちに理解が深まり、自然と知識が脳に定着するだけでなく、次第に「もっと知りたい」「もっと読みたい」という欲求が芽生え、自己強化のループが生まれやすくなります。このループが働くことで、読書は単なる知識取得ではなく、長期的に続く豊かな学びの体験へと変わるのです。

一方で、「外的モチベーション」に基づく読書は、効率的に知識を得る、評価されるために成果を上げる、試験に備えるといった、目的達成や結果重視のスタイルです。この場合、読書は情報取得のための手段となり、要約やサマリーに頼ることで素早く結果を得ようとします。しかし、こうした外的モチベーションはあくまで短期的な満足にとどまりやすく、読書自体への興味や楽しさが育たないため、時間をかけて内容を吸収し、継続する動機を生むのが難しくなります。そのため、表面的な理解に終わりがちで、読書の習慣がなかなか定着せず、断続的になってしまうのです。

こうした外的モチベーション頼りの読書は、インプットに対するモチベーションがどうしても一過性になりやすく、「次に何かを読みたい」という内からの動機が生まれにくくなります。結果として、読書をはじめとするインプット型の学習に積極的に移行できず、何かの目的がある時だけ読むという断続的なスタイルにとどまりやすいのです。これに対して、内的モチベーションで取り組む読書は、自己強化のループを通じて「読むことが楽しみ」となり、長期的に続けやすい特徴があるため、読書型インプットが習慣として定着しやすくなります。

このように、読書がもたらす知識や思考の深まり、そしてその継続的な習慣を育むためには、内的モチベーションによる読書体験が大きなカギとなるのです。

ペラペラめくり読書法 ~4ステップで自然に精読を楽しむ~

それでも、「精読が大事だとわかっていても、なかなか時間もやる気もない…」という方も多いでしょう。そんな方にこそおすすめなのが、この「ペラペラめくり読書法」です。

1回目はペラペラめくり読み

  • 全体の流れや要点をざっと把握。

  • あえて細部を気にせずざっくり読むことで、内容に対する親しみが生まれ、次の読み込みがスムーズになります。

2回目は少しスローダウン

  • ペラペラ読みで把握した流れを、さらに理解する段階。

  • 内容が頭に残り始め、理解が少しずつ深まることで読書が面白くなり、読み進めやすくなります。

3回目は気になったところだけじっくり

  • 興味を持った箇所に焦点を当て、理解を深める。

  • 疑問や関心がさらに明確になり、記憶にも残りやすくなります。重要な部分を見つけ、深く考えるきっかけになります。

4回目は全体をじっくりと読む

  • 全体を俯瞰しながら、既視感を利用してスムーズに内容を吸収。

  • 全体像がよりクリアに理解でき、ゲシュタルトの原理により、細部と全体が結びつき、内容が脳に深く定着します。

ゲシュタルトの原理は、人間は物事を「個々のパーツではなく、全体的なまとまりとして認識しやすい」という認知の法則です。たとえば、図や絵を見るとき、私たちはまず「全体の形」を理解し、細部をその後で捉える傾向があります。これは、視覚情報だけでなく、読書や学習にも応用できる原理です。

まとめ

「内的モチベーションによる読書」は、単なる知識取得ではなく、読むプロセスそのものが充実した学びの場になります。要約を利用するのもひとつの手ですが、読書本来の楽しみや価値を見つけるために、「ペラペラめくり読書法」を試し、内的モチベーションによる深い読書の体験を味わってみてください。効率的に感じる要約とはまた異なる、読書そのものが与えてくれる満足感に気づくきっかけになるはずです。

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