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特定社労士試験対策①~労働条件の不利益変更について~

おはようございます。
社労士の生地です(  ´-`)zzZ

今回から特定社会保険労務士試験の対策として、よく問われるテーマを話していきたいと思います。
第1回目「労働条件の不利益変更」についてです。


1.労働条件の不利益変更とは?

労働条件の不利益変更とは、賃金や労働時間、休暇、福利厚生などの労働条件を従業員に不利益な方向に変更することをいいます。

2.労働条件はどんな方法で取り決めるのか?

① 労働者・使用者との個別の労働契約
就業規則
➂ 使用者と労働組合との間で締結した労働協約
の3つの方法があります。

労働条件の不利益変更する際も上記3つの方法により変更することとなります。
これらの方法による変更であっても労働基準法には労働条件の割いて基準があり(労基法1条2項)、労基法の定める基準を下回ることはできません(労基法13条)。

それでは、ひとつずつ見ていきましょう。

①労働契約の変更による不利益変更

労働契約の条件を変更するには、労働者と使用者の「合意」が必要です(労働契約法8条)。ただし、この「合意」は労働者の自由な意思に基づいている必要があります(最二小判平成28年2月19日、山梨県民信用組合事件、民集70巻2号123頁)。

同時に、就業規則(労契法12条)および労働協約(労働組合法16条)で定められた労働条件を下回る変更はできません。

②就業規則の改定による不利益変更

労働契約法においては、「使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない」と規定されています(労契法9条)。
ただし、合意がない場合でもいくつかの条件を満たすことにより就業規則により労働条件の不利益変更が可能です。
まず、【変更後の就業規則を労働者に周知】させ、かつ、【その変更が合理的】であれば、【労働条件は変更後のもの】となります(労契法10条)。
一方で、労働者と使用者との間で就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、労契法12条(就業規則の最低基準効)に該当する場合を除き、就業規則による不利益変更はできません(労契法10条)。また、変更後の労働条件が労働協約の内容に反する部分があれば、その部分は無効となります(労契法13条)。

➂使用者と労働組合との間で締結した労働協約による不利益変更

労働協約は、使用者と労働組合との間で労働条件に関して合意し、その内容を書面化し、両当事者が署名または記名押印したものです(労働組合法14条)。労働契約や就業規則に定められた労働条件よりも労働協約により定めた労働条件が優先されるため、労働協約によって労働条件を不利益変更することが可能です。

3.そもそも「不利益変更」に該当するかどうかはどう判断するの?

そもそも労働条件の変更が「不利益変更」に該当するかどうか(不利益変更の該当性)はどのように判断するのでしょうか?

これは不利益変更の存在の有無がどの時点で判断されるかという問題になります。
一般的には現在の労働条件と変更後の労働条件に一部でも違いがあれば(変更が形として認識できるなら)不利益変更が存在すると判断される傾向にあります。
具体的には、賃金ついて言えば、賃金が1円でも下がっていれば「不利益変更が存在している」ものとして判断されます。

ただし、この1円の減額が「不利益変更として有効であるか無効であるか」まではこの時点で判断されません。
あくまでも「不利益変更の可能性がある」という不利益変更の該当性の段階にとどまり、最終的にその1円の減額という「不利益変更が有効であるか無効であるか」裁判により認定されます。

4.就業規則による労働条件の不利益変更が有効されるためには?

就業規則による労働条件の不利益変更が有効とされるための法的根拠
個別の合意が取れないため労働契約による不利益変更ができず、労働組合もないため労働協約による労働条件の不利益変更もできない場合は、就業規則による不利益変更の方法とることとなります。 
就業規則による労働条件の不利益変更については労契法10条により次の通りに定められています。
「就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるとき」
つまり、この条文にしたがって不利益変更ができるかどうかを判断することになります。
~労契法が制定される前の最高裁判例~
「就業規則の不利益変更が合理的なものである」ためには、就業規則の変更によって生じる労働者の不利益の程度変更の必要性変更後の内容の相当性などが考慮されます。特に賃金や退職金など、労働者にとって重要な権利や労働条件に影響を及ぼす場合、その変更には「高度の必要性」が求められます。合理性の有無は、具体的な変更の必要性程度内容の相当性、関連する労働条件の改善状況、代償措置の有無、他の労働組合または他の従業員の対応などを包括的に評価します。(大曲市農協事件・最三小判昭和63年2月16日民集42巻3号170頁、第四銀行事件最高裁判決・最二小判平成9年2月28日民集51巻2号705頁)

5.まとめ

  1. 労働条件の不利益変更とは?

    • 賃金、労働時間、休暇、福利厚生などの労働条件が従業員に不利益な方向に変更されることを指す。

  2. 労働条件の取り決め方法:

    • 労働者・使用者の個別の労働契約

    • 就業規則

    • 使用者と労働組合との締結した労働協約

  3. 不利益変更の該当性の判断:

    • 不利益変更の該当性は、現在の労働条件と変更後の労働条件に一部でも違いがあれば、不利益変更が存在するとされる。

    • 不利益変更の有効性は最終的に裁判によって判断される。

  4. 就業規則による労働条件の不利益変更の有効性:

    • 就業規則による変更が合理的である場合、不利益変更が可能。

    • 合理性の判断は、不利益の程度、変更の必要性、変更後の内容の相当性、労働組合との交渉状況などを総合的に評価する。

  5. 最高裁判例の参照:

    • 最高裁判例によれば、特に賃金や退職金等の従業員にとって重要な権利に関する労働条件の不利益変更が合理的であるためには高度の必要性が求められ、合理性の有無は様々な要素を総合的に評価される。

今回は特定社労士試験でよく問われる「労働条件の不利益変更」について解説させていただきました。
社労士の実務でもよく取り扱う分野なので、ぜひ押さえておきましょう!

今後、特定社会保険労務士試験への対策、勉強方法や合格法などについてもまとめた記事を作りたいと思います!

それではまた (  ´-`)zzZ

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