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美術知識ゼロの人が美術館に行ったら号泣した話


美術(びじゅつ)とは、視覚で捉えることを目的として表現された造形芸術(視覚芸術)の総称。芸術とは、表現者あるいは表現物と、鑑賞者とが相互に作用し合うことなどで、精神的・感覚的な変動を得ようとする活動である。(Wikipedia)

演劇や音楽、映画。
私は何かと「芸術」の中で育ってきたし、表現者を目指すぐらいはこちらの世界が大好きだ。


でも。どうしても美術は苦手だった。




私はめちゃくちゃ絵が下手だった。




美術の授業で作品を提出すれば大体「C」で、成績は「2に近い3」だった。
幼い子供が泣いてしまうくらい不可解な絵しか描けない。


一方で妹は、めちゃくちゃ絵が上手かった。
絵を描けばたちまち展覧会に推薦されていたし、持って生まれた才能とはこのことかと、子供ながらに思い知らされた。




数字で評価されてしまうことも、周りから比べられることも「あなたは下手です」と言われているみたいで嫌だった。



高校に入学すると美術が選択制になったので、疎遠になるのは必然的だった。(美術に強い高校だったので目にする機会は増えたが)




2020年夏。私は妹と国立西洋美術館にいた。


「ゴッホのひまわりが日本で観られます」



テレビから聞こえてきたキャスターの言葉に私は顔を上げた。


ゴッホのひまわり。
そういえば小学生の時、図工の授業で「好きな絵画を選んで模写する」という課題があった。

その時選んだのが「ゴッホのひまわり」だった。
しかもテレビに映ったそれは、私があの時出会った4枚目のひまわりだった。




イギリスが誇るロンドン・ナショナル・ギャラリー。
歴史ある作品の中から61作品が日本に初来日した。


美術に無知な私は、作品どころか美術館の存在すら知らなかった。


歴史も技法も知らないので大きな絵を見るたびに「あの絵、サイゼリヤにありそう」なんて感想ばかりが浮かんでいた。



対して、美術系の高校に通う妹は知識量が桁違いで、絵の解説を読んでは私に分かりやすく説明してくれた。



1枚1枚丁寧に見つめていくといよいよ最後の1枚になった。

その部屋に足を踏み入れた瞬間、私は息が止まった。


そこには鮮やかな黄色の大きなひまわりが咲いていた。


すごいとかきれいとか色んな感情をまとめた「強い力」を感じられた。


しゃべらないし動かない。
ただそこにあるだけ。


でも、美術はこんなにも人の感情を動かすパワーを持っている。


気づいたら私は、ぽろりと涙を流していた。


この光景を、経験を、私は一生忘れない。



外に出ると3時間が経っていた。
初めての美術館。とにかく迫力が凄まじかった。
どの作品にも人々の行動や服装、食べ物、階級など、当時の時代背景が強く影響されていると思った。

ちなみに私が1番気に入ったのは、ディエゴ・ベラスケスの「マルタとマリアの家のキリスト」という作品。
ニンニクをすり潰す顔が絶妙だったので、ポストカードを買った。



数時間前は「美術何も知りません」だった私は、もう美術の虜になっていた。
美術館巡り。
新たな楽しみと出会ったひと夏の思い出。


ちなみに今月末まで大阪展が開催中とのこと。

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