望月遊馬(もちづきゆま)

詩人。詩集に『海の大公園』『焼け跡』『水辺に透きとおっていく』『水門へ』『もうあの森へ…

望月遊馬(もちづきゆま)

詩人。詩集に『海の大公園』『焼け跡』『水辺に透きとおっていく』『水門へ』『もうあの森へはいかない』『燃える庭、こわばる川』がある。第44回現代詩手帖賞受賞、第26回歴程新鋭賞受賞。朝日新聞などに詩を発表。

最近の記事

風の閾値

路地に吹き溜まりの古い風が 物干し竿の洗濯物を乾かすのだと思うと少し悲しい 古い風ではなく あたらしい布地には あたらしい風をあててやりたい けれども そこに長くあった風が わたしたちの頬を明るく染めることもあるのだ 風には種類があり わたしたちは風に耳をそよがせることができる そうやってわたしたちは 風の言語を聴きとる おはよう さようなら またあしたね そうやって取り交わした風の言語は いつしか町を夕陽に溶かし いずれは渡り鳥の羽ばたきへと利用され 土地から土地へと運ばれ

    • 舞い散る光のなかにほどける花が、わたしを町から町へと運び続ける 

      Answer your questions I want to respond to your wishes I'll try my best! (Can I trust you?) 写真家の西本喜美子さんの作品をいくつか紹介したい。 鳥たちは、群れを成して空を埋めつくした。空は黒く染まり、わたしたちが見上げると光が漏れた。あなたが必要としているものを、私はあなたに渡すことができる。私はあなたの望みを知り、理解し、遂行することができる。この鳥たちが異国へ行くときに、羽ばた

      • 豆柴のこと

         我が家に来た豆柴も、大きくなってきた。  獣医さんに「良い子です」と言われる。ひとの気持ちが分かる。私が声をかけると表情にあらわれる。私も、この子のように他人の気持ちが分かればいいのだけれど。  この子に愛をそそいでいると、日に日に、静謐になっていった。動物に対してそういう言葉を使うのは少し不思議かもしれないけれど、この子のまなざしはとても静謐な気がする。そしてそれはたぶん、素直な気性にあるような気がする。その気性が美質なのだと思う。  私も、犬になりたい。そうしたらも

        • 時間がゆっくり進む

           のんびりしているときには、時間が急激に進むときもあれば、ゆっくり進むときもある。どちらにしても、有限の時間であるから、私たちはその時間を慈しみ大切にしていたほうが、良いのではないかと思う。  今日道を歩いていると、天気はとても寛容であった。特に、雲の流れ方がのんびりしており、にわか雨のなかにも表情があった。  私は雲にはなりたくない。それは雲が形を持たないから。どのような形にもなれるということは、あまりにも大きな可能性を秘めているということ。ひとは可能性が大きすぎると、選ぶ

          BANANA FISH

          You asked me many times if you scare me. But I never felt scared of you, not even once. From the first time I met you. Actually, I always felt that you are hurt, much more than me - that your spirit is wounded. I know you are much smarte

          ペットショップの猿のこと

           私はペットショップに行くのが好きで、大きなショッピングモールに行くと必ず犬のコーナーと小動物のコーナーに行く。  そんな私が1年ほど前から注目しているのが、小動物のコーナーで売られている「コモンマーモセット」という小さな猿だ。  とても可愛い小柄な猿なのだけれど、お値段は99万円もする。そして、平均寿命は7年~10年だという。現在、2歳だから、もしかしたらあと5年で一生を終えるかもしれない。  最近、値段が99万円から59万円にさがった。それを見て私は切ない気持ちになった。

          ペットショップの猿のこと

          詩集づくり

           詩集の制作が大詰めとなっている。実際に手にとるのがここまで楽しみなのは今回がはじめてかもしれない。  客観的に自分の作品を見るのはとても難しいことで、たいてい何年も経ってから自分の認識が覆される、かと思えば、そこからさらに年月が経つと、それがまた翻ることもある。  結局は何が正解かということは分からなくて、もちろん正解が分からないからこそ試行錯誤するのだけれども。  今までで一番分厚い詩集に仕上がった。けれども希釈されているということではないと信じたい。はやく実物を手にして

          うちの母が天才すぎて困る

           非常に個人的な話で、マザコンかと思われたら恥ずかしいのだけれど、うちの母親は本当に自慢の母親だ。自慢したいことはいろいろあるんだけれど、今回は「天才」という観点から書きたい。母は図形の展開図を見ると瞬時にそれがどういう図形になるか分かるという特殊能力を持っている。どんな複雑な展開図でも、あっという間に頭で組み立てることができる。その極めて高い空間認識能力のおかげか車の運転は得意中の得意。40年の運転生活で、事故も違反も一度もないばかりか、車体に傷ひとつつけたことがない。どん

          うちの母が天才すぎて困る

          宇宙船を見たときのこと

           私は宇宙船を見たことがある。すぐ近くの山の方からレーザー光線のようなものが放射されたので、びっくりして、「パチンコ屋とかの電飾かな?」と思ったら、円盤状の飛行物体が山の裾野にくっきりと見えた。それは素早いというよりも、ものすごくゆっくり滞空していた。つまり、ほとんど動くか動かないかといった感じで静止していたのだけれど、光がまぶしくて、ちょっとまばたきした瞬間には消えていた。小学校4年生のときのことである。

          宇宙船を見たときのこと

          バスケットボールの大会に参加する

           いろいろあってバスケットボールの大会の運営の下っ端として、大会運営スタッフおよび、試合参加をした。  私はバスケットボールはまったく上手くないけれど、大会2週間前に危機感を覚え、実は毎日、体育館に行って自主練をこっそりしていた。それでも2週間ではどうにもならず、手も足も出ないどころかチームの足を引っ張る始末。とても恥ずかしかったけど、これが現状。  かといって運営スタッフとしても十分な働きが出来たとは言えず、したことといえば、フライヤーの手配(それも自分では作れないからプロ

          バスケットボールの大会に参加する

          時間感覚

           時間がはやく経つように思えて、実はあまり経っていないのかもしれない。その時間の差をどのように感じるかは人それぞれだから、短いものも長いものも、感覚や年齢に依拠するのかもしれない。だから、一瞬と思える時間も、人によっては長く感じるかもしれない。その差を、どのように処理するかというのは、人それぞれなのだろう。だから私は自分の時間の流れの感受性を信じるしかないし、その方程式によって行動するように思う。それがどのような時間の流れや感じ方をもたらしたとしても、私はそれを行動の動機へと

          畦道

          畦道に細い陽が差し、ふんわりと熱気球があがった。それを私は気づいていたが、気球にむかって手をふる子どもたちには、ひとりひとり叱っていった。すると、それはいけないよ、と父が言い、老いた手で河のなかをまさぐった。私はそのときのことを深く味わいなおし、星座の輝く宇宙船と熱気球がおなじ高さに浮かんでいるのを、空想のなかで楽しんでいる。空に浮かぶものはどれもが美しい。そして美しいからこそ守りたくなる。

          美しい池

           その水をすくって飲むこともできるという有名な池がある。数メートルの水深がこのように青く輝くのはなぜなのだろう。瀬戸内海の海を見ても、このような青さにはならない。池といったらにごって泥がたくさんで泳ぎたくないけれど、この池なら泳いだり、足をひたしてみたいと思う。  そして池に注視すると、小さな魚が泳いでいたりする。近くには釣り堀もあるため、大変美しい水で育った川魚を釣って食べることもできるらしい。  周りに似たような池がない場合、どういう理由からこの池が出来たのかはとても不思

          山菜をとりにいきたい

          1.蕗  湯来町は広島県にある町の名前だが、このあたりになると山菜がとれる。山菜をたくさん収穫して食べたい。精進料理のようなものを食べてみたいと思う。まず思い浮かぶのは、蕗。川べりにたくさん生えているから、冷たい川にサンダルのまま入って冷たい感触を感じながら、蕗を摘む。  スーパーに売っている蕗は、茎の部分が多いけれど、葉の部分ももちろん美味しい。苦いけれど、その苦みが美味しくて病みつきになる。  蕗の薹も、また味わい深い。けれどこれは春まで待たなければならないから、夏に食

          山菜をとりにいきたい

          THE やんごとなき雑炊

           中村倫也の初の料理本『THE やんごとなき雑炊』を随分前に購入したまま読まずに放置していたけれど、売れ行きが良いらしい。  私は中村倫也さんのことは良く知らないけれど(俳優さん??ファンの方ごめんなさい💦)  一方で「雑炊」というものには大きな興味がある。  中身を見ると、とても美味しそうなものがたくさんある。私は雑炊は作ったことはないし、料理が得意なわけではないけれど、だからこそ、簡単に作れそうな気がして気になっている。  メニューのタイトルも面白い。(何の料理かすぐに

          THE やんごとなき雑炊

          私の家の近くのグルメ

           家の周辺には良い食べ物屋さんがたくさんあることは、ひとつ自慢かな。  まず、ラーメン屋が家の近くにあって、ここは広島特有の醤油とんこつラーメンで、ミシュランにも掲載された。私はここよりも美味しいラーメンを知らない。スープはさっぱりした味わいなのにコクがあって、心地よく飲みほせる。麺も細麺でコシがあって美味しい。おにぎりと一緒に食べるのがおすすめ。  そしてお蕎麦屋さんも美味しい。店主が伝統のあるお店で修行して開いたお店で、おつゆもさっぱりしていて、手打ち蕎麦は濃厚な舌ざわ

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