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うちの母が天才すぎて困る

 非常に個人的な話で、マザコンかと思われたら恥ずかしいのだけれど、うちの母親は本当に自慢の母親だ。自慢したいことはいろいろあるんだけれど、今回は「天才」という観点から書きたい。母は図形の展開図を見ると瞬時にそれがどういう図形になるか分かるという特殊能力を持っている。どんな複雑な展開図でも、あっという間に頭で組み立てることができる。その極めて高い空間認識能力のおかげか車の運転は得意中の得意。40年の運転生活で、事故も違反も一度もないばかりか、車体に傷ひとつつけたことがない。どんな難しい駐車場でも、狭い道でも、ぱっとみただけで、どういうふうに車を動かせば最短時間でクリアできるか瞬時に分かるのだという。そんな母はIQ160である。残念ながら私には母の素質は遺伝しなかったのか、図形の展開図を見ても完成図はさっぱり思い浮かばないし、車は傷だらけだ。(親子なのにこの違いは何?という感じ。)ただ、極めて頭脳明晰な母を間近で見て育ったためか、頭の回転が優れた人というのがどういうものなのか、なんとなく分かる。
 そういう意味で、うちのバスケチームは天才的なひとばかりで、私は大変に動揺している。
 この前、バスケの大会のあとにメンバーと大会に協賛してくれた関係者・関係団体にお礼に行ったんだけど、そのときにYさんというチームメイトのひとりが披露した特殊能力がすごい。どんな文字列を言われても、瞬時に後ろから言えるのだ。たとえば「きょうはみそしるをのみました」というと、1秒も経たずに「たしまみのをるしそみはうよき」と言ってしまう。私はまだ本人に確認をとっていないのでわからないけれど、頭の中で文字の映像を浮かべて逆に読んでいるのだろうか?だとすれば、映像記憶能力(フォトグラフィックメモリー)という数万人にひとりしか持たない能力を持っているということになる。
 生きていても、そんな特殊能力を持つひとにはなかなか会えない。Yさんは私の母と同じで一種の天才なのではないか。
 それだけではない。私のバスケチームには国立大の大学教授や、きわめてプロファウンドリーなギフテッドがなぜだかたくさん集まっていて、こんなコミュニティーはあまり他では見かけたことがない。
 もしかして私が知らないだけで、世の中にはこういうすごいひとが、大勢の中に知らないだけで確かに存在していて、その異能と呼べる能力を発揮しているのだろうか。もっと人間のことを知らなければならないとも思う。

 母の話に戻るのだけれど、私の母も驚くべき能力があるにも関わらず、学問の道に進むことを時代が許さなかった。私は母ほどの能力に恵まれなかったにもかかわらず、こうしてやりたいことに挑戦できるということを、感謝しなければならないのだろう。
(ここで自己弁護をしておくが、私にもひとつだけ特技がある。とにかく計算がはやい。クレペリン検査という計算をひたすら行う心理検査で、私は最後の行まですべて計算し終わって欄を埋めてしまった。あとから、そんなひとを今まで見たことがないと担当のひとに言われた。)
 計算がはやいけど、それによって仕事が出来たことはないので、これは役に立たない能力なのかもしれないが。
 そして、チームで一番バスケが下手なので、こっそり自主練をはじめた。このことは誰にも言わない。
 

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