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NFTでメシは食えるか? ~Episode 2 「99%のNFTは無価値になる?!」~

カルチャー&スポーツがけん引するNFT

NFTは前回お話した通り、ブロックチェーンの技術の上に成り立ち、デジタル資産を唯一無二の価値として証明することが可能になりました。NFTの火付け役となったのがNFTアートだというのも納得できますね。
代表的な先駆者はアートプロジェクトLarva LabsのCryptoPunks(クリプトパンクス)や、Suum Cuique LabsのHashMasks(ハッシュマスクス)、それに育成収集ゲームのCryptoKitties(クリプトキティーズ)の存在はあまりにも有名です。ひとつのキャラクターが1000万円から億単位で取引されるという状況。Twitterの創業者ジャック・ドーシー氏の2006年に投稿された初ツイート”just setting up my twttr”が2021年に3億円超で落札されたニュースも皆さん、ご存じの方が多いでしょう。

アートの世界だけではありません。世界ではスポーツやエンターテインメントの分野でもNFTが本格的に参入しています。NBAはNFT Top Shotというデジタル・トレーディングカードのプラットフォームを立ち上げました。ここで発売されるのは、人気選手の名場面クリップで、人気選手ともなれば2000万円以上の価値がつきます。アメコミヒーロー・ブランドのMARVELもオンライン・マーケットプレイスVeVeと組んでスパイダーマン等のデジタルフィギュアを展開しています。こうなったらファッションブランドも黙ってはいません。グッチやルイ・ヴィトン、ドルチェ&ガッパーナなど、ラグジュアリーブランドが限定コレクションやファン向けコンテンツを以てグイグイとNFTに参入しています。
もちろん、日本もお忘れなく。アニメコンテンツに焦点を当てたNFTのマーケットプレイスAnimapや大手ゲームメーカー、レコード会社などの大手企業のNFT参入が続いています。
そして個人による作品の発表としてもNFTは一気に広がり、新たなクリエイターやアーティストが発掘・育成される場としても世界的に着目されています。

「で、実際のところNFTは儲かるの?」

猫も杓子もNFT。もう何が何だか、これぞNFTバブルの時代なのでしょうか?そしてこれだけ人気だということは、やっぱり「NFTって儲かるの?」。
NFTで作品を発表したら、自分ももしかすると、お金持ちになるかも?

いやいや、そうは甘くないです。

調査機関Market Research.comを始めとする様々なシンクタンクでは、世界のNFT市場規模は順調に成長すると予測され、2022年現在で16億ドル(約2,000億円)から2028年までに76億ドル(約1兆円弱)に成長、CAGR(年平均成長率)は22%になると推計されています(Market Research.com)。アートを中心とする販売単価が爆上がりしている中、市場規模の数字に弾みがついている状況です。
その一方で、今現在世界中のマーケットプレイスで売れているのはたった1%とも言われています。北米のニュース専門放送局CNBCや経済誌Forbes、NFT専門誌や著名アーティストが今年2022年になってこぞって「今マーケットプレイスに出品されている99%のNFTは無価値になるだろう」と言い始めています。ちなみにForbesによると前述のJ.ドーシー氏の3億円ツイートは今年転売市場に出した結果、最高入札額が3.5万円でまさに99%下落。ほぼ「紙屑レベル」になりました。
現実的には圧倒的に供給に対して需要がそこについていかず、9割以上がオーバーサプライ(供給過多)になっていると言っても過言ではありません。

そしてこれだけお祭り状態のNFTマーケットプレイスも、世界ナンバーワンのOpenSeaですら世界で100万人の利用者しかいません(2022年7月現在)。もっと細かいことを言いますと、実際利用者(アクティブユーザー)といっても、ウェレット(Web上の財布)の数が100万人分で、ウォレットは複数持ちする人がいることを鑑みると、実際のユーザーはその半分程度だと言っても過言ではないかも知れません。
日本に至っては、NFTユーザー(所有者)は世界ランキングでもほぼ最低の2.2%、「今後買いたい」を入れても4.6%(Statista調べ)。市場規模では世界の1/80しかありません。

これらを総合すると、市場は思ったよりもまだ小さい。著しい供給過多の状況がそこにあるわけです。

そして供給に対して需要がないと、市場にある商品(NFT作品)の価値はどうなるのか?当然、出品者のコレクションの価値は下がりますし、出品者(アーティスト)や出品者のブランドの評価も下がることが予想されます。
それって、絶対見栄えが悪いし、かっこ悪い。
NFT出品が芳しくなければ、中長期的には自らの資産価値を下げることにもなりかねないのです。

丸腰ではアカン、NFT市場参入

NFTは、今はまだその先進性や話題性があるので、元々のブランド力があればそれなりのノイズが上がります。体力のあるブランドやアーティスト、コンテンツオーナーはプロモーションの一環として、そして新たな利益創出の検証の場としてNFT市場に参入することが出来ます。ですがそれ以外の大多数の参入予定者は、まずはマーケティングプランありきで臨むべきだと思います。NFT利用者が少なく、売り手が9人いて、買いたい人が1人しかいない状況…もはやそこに健全な市場はあるとは言い難いのです。ちょっと大袈裟ですが、今後のNFTという戦場は、“売れそうだから”で「丸腰」で参戦した者たちの死屍累々の場となるかもしれません。

じゃあやっぱりNFTは避けて通るべき?いえいえ、NFTはこれからの知的財産をマネタイズする上でも、そして世界中のクリエイターたちの活躍の場を育むためにも、必ず明るい未来を見つけることが出来ると筆者は信じています。
NFTは地球の裏側で瓦礫の下から創作活動に邁進する、若き無名のアーティストを取り上げ、活動の場を与えることもできるのです。もしかするとNFTは知財活動を通じて発展途上にある国々や経済的弱者を救う、一つのプラットフォームになるかも知れない。しかし、NFTで結果を出すためには、多くのハードルが存在します。NFTの本来の使命をもう一度考えながら、どうしたらそれが可能なのか?「丸腰」でアーティストや著作権オーナーに戦場に向かわせないためには、何を必要とするのか?前述した「マーケティングプラン」の重要性を交えて、それを次回、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。