マガジンのカバー画像

曲の話

12
つくった音楽について書くノート。
運営しているクリエイター

#エッセイ

"Beautifully Untrue"

"Beautifully Untrue"

怒りや不義を貫く難しさについて、
思いを馳せる。

悪意を悪意と断定できるほど、
世界はシンプルではない。

人を憎んで眠れない夜もあるが、
怒り恨み続けることは、難しい。

今、忘れることや、洗い流すことは、
決して屈服や敗北ではないと、
わたしはやっと認めることができる。

選択的に盲目になることをも赦したい。
己に他人に。
遠くの知らない誰かにでさえも。

手の届く仮説のその先を思って歌う歌

もっとみる
カフカはピラティスをしていたか/dance tight/踊れない身体

カフカはピラティスをしていたか/dance tight/踊れない身体

踊れない身体を何十年も、持て余している。

悲哀と諦念と嫉妬が詰まった、血を抜くことすら許されない腐りかけの身体が残念で、すぐにでも手放したいと日々感じている。
だから、というわけではないが強烈に身体性そのもの、あるいは身体という表象の可能性に惹かれてperformance theoryを専門に選択した。(と、今となっては思う)

動、の肉体/身体。
静、の肉体/身体。

いずれも

もっとみる
信頼と回復

信頼と回復

いま録音している曲について。思うところあり、筆をとる。

先日、デモを録音したところ、
口に出せない言葉が入っていることに気づき、まるで縁に立っているような歌声が録れた。
当たり障りのないテイクで覆い隠したいところだが、もうせっかくだから恥ずかしげもなくそのまま残してしまうか、という気持ちでいる。

自分で書いた曲なのに、自分で書いた言葉に現在の自分自身を問われる状況は、少しおかしい。

この曲を

もっとみる
Keep You Safe

Keep You Safe

わたしは元来、血縁という幻想とは明確に距離を置いているタイプだが、親族であることを差し引いても最も信頼している人間と言える祖母が入院したので、会いに行ってきた。

さすがに自分が少しはショックを受けることを想定していたがそんなことはなく、むしろ勇気づけられてしまった。

わたしは親族のなかでは疑いようもなく人格や価値判断の基準が祖母に似ていて、だから言うわけではないのだが、こんなに凛とした美し

もっとみる
Humble me More -創作の悲哀

Humble me More -創作の悲哀

曲をつくることは悲しい。

昨今、今年中にまとめたいと願っているアルバムの曲をつくったり、また録音したりしている。

1曲目に入れようとしている曲は、ギターで書いた雨の曲だ。雨がどれだけ、人を(というかわたしを)謙虚にしてくれるか、歌っている。

弾きながら口をついて出た言葉をそのまま歌詞にしたのだが、
いま改めて聴くと、あらゆる後悔が織り込まれている。もっと心地よく、寛容でいられたのに。堂々とで

もっとみる