見出し画像

どくはく12「ずっと続けていた習い事」

保育園時代から、ずっと続けていた習い事があった。
ピアノ教室である。
個人経営の教室で、めちゃくちゃ好きというほどでもなかったが、やはりなんとなくピアノを弾くのは、心洗われる時間であった。
それに、やっぱり怒られたり褒められたりたくさんいろんなことがあった教室だったし、先生との関わりもあったし、辞めることは考えていなかった。

でも高校に進学して、勉強も部活も慣れない中で、なかなか教室に行けなくなった。
そこで先生と、週1回だときついかもしれないから、2週間に1回にして頻度を落とそうか、曲を減らそうか、という風に、これからどうやって続けるかを考えて、話していた。
私も学校に疲れていてなかなか考える時間はなかったから、難しかった。

しかしある日。
家に帰ってくると母親から言われた。

「あんたピアノ大変そうだったから辞めるって連絡しといたよ」

と。

え?
何にも言ってないのに?
母親に相談したこともないのに?
辞めるなんて考えてなかったのに?
なんで勝手に連絡したの?
私の気持ちは?
なんでなんで?

頭の中が?で埋め尽くされた。
意味がわからなかった。
母がなんでそんなことしたのか、理解ができなかった。

保育園の頃から今までずっと続けていたものだった。
私は、急に自分の中の一部を、母に奪われたような感覚がした。
母親が勝手に連絡した手前、挨拶にも行けない。
挨拶に行ってもよかったが、「母が勝手に連絡したから辞めます」なんて、恥ずかしかった。
どうしたらよかったんだろう。
なんで勝手に言ったんだろう。
わからなかった。

毎日のコーヒー代に。