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石渡紀美(イシワタキミ)
2020年1月27日 13:33
彼女からの連絡が途絶えて久しい月は欠けきったのち、また肥えはじめたわたしの髪は伸びきっと彼女も美容院にはまだ行っていない鍋を磨く味噌を溶いたり玉子を茹でたりキャベツを蒸したりそうして生活に寄り添った結果不本意ながら真っ黒なコゲを身にまとった我が家の鍋鍋を磨くたぶん明日も生きているだろう生きているからには米を炊き汁を用意することが必要になる鍋を磨く彼女の米を炊き
2020年1月15日 17:12
帰りたいな、といつも思っていた。目の前ですやすや眠る生き物をぼんやり眺めながら帰りたいな、と思っていた。どこにかはわからなかった。電車で一時間ちょっとの距離にある実家は、帰るたびに私の居場所はないと思わされる場所になっていった。2日もいると、いい加減に帰りなさいと言われて、おとなしく従った。最寄りの駅につくと、足は重たくなった。団地は坂の上にあった。家に近づいているのに、遠くとお
2020年1月12日 21:24
手をつながずにわたしたちは歩く暗い道を光の差す方へ小さな娘も自分の足で歩く手をつながずにそれぞれの足でわたしたちは歩くわたしたちの星のうえをこの星はあまりに軽くみずから光ることができない光が当たってはじめてその美しさがあらわれる照らされてわたしたちは光のなかを歩いてゆく同じ道をたどり同じ家に憩い眠り朝日を浴びてめざめる
2020年1月10日 11:41
整体の愉気の会に参加した。バッハのレコ―ドが終わり、先生が前に立つとほぼ同時に、窓の外から光が差してきた。雨がやんだのだ。久しぶりに会に出て、自分のからだのかたさを呪った。からだのかたさはこころのかたさ、とどこかで聞いた。「みぞおちを抜いて」と言われた。みぞおちは、ひとのからだのなかで、もっともやわらかい場所なのだという。そのもっともやわらかい場所をもっともかたくして、ひとは自分を守