街を見下ろす丘に住んでいた頃のこと
帰りたいな、といつも思っていた。
目の前ですやすや眠る生き物をぼんやり眺めながら
帰りたいな、と思っていた。
どこにかはわからなかった。
電車で一時間ちょっとの距離にある実家は、帰るたびに私の居場所はないと思わされる場所になっていった。
2日もいると、いい加減に帰りなさいと言われて、おとなしく従った。
最寄りの駅につくと、足は重たくなった。
団地は坂の上にあった。
家に近づいているのに、遠くとおく感じた。
団地の重たい扉がしまる音が背後に響くと、異常なほどの眠たさを感じた。
赤ん坊は寝息をたてていた。
一緒にずっと眠っていたかった。
そうして日々は過ぎていった。重力に抗いたくない私。抗って、ついに歩き始めた子ども。
季節はめぐり、また春がやって来るのだった。
楽しいことをしていきます。ご一緒できたら、ほんとにうれしいです!