【作家】小説家や漫画家に欠かせないのは、好きになるチカラ?

私は5年前まで、
マンガの編集者でした。
編集というのは、こんな仕事だ!
と定義しづらい仕事のひとつですが、
私はこう考えてきました。
マンガ家を愛すること、また
マンガ家が書いた作品を愛すること、
だと。

いきなり「愛する」だなんて、
大げさだなあと、人は言うでしょう。
特に同業者の人は。
たしかに、有能な編集者ほど、
独自のクールなスタイルを
持ってるでしょうから、
編集の達意は愛だなんて
一笑にふされそうですが、
平凡な私には、努力して
他人の倍は働かねばならない、
そう考えてきました。

愛するとは、どういうことか?
大好きになるチカラといいますか。
その一人のマンガ家が
私と伴走しながら、
ある作品を作ろうとして、
白い原稿用紙や白いタブレットに
黒い線画を引いていくには、
相当な虚無心とまず闘っていく
ところからスタートせねば
なりません。

創作は孤独な行為です。

それで、たとえば、
そのマンガ家が大のSF映画好きだ
と仮定しましょう。

今、お願いしてるお仕事とは
何の関係もなくても、です。
SF映画の新作が来たら、
一緒に観に行ったり、
その映画の類似作品も含め、
どの主人公が一番かっこいいかなど、
いつも、作家と連絡したら、
彼女のテンションが高まるように
していました。
来週はテレビで、
その映画監督の対談インタビューが
NHKであると知ったら、
すぐにマンガ家にお知らせします。
やはり、エンタメの創作には
好奇心がマストですから。
情報や感動やワクワクを
マンガ家さんと互いに共有し、
創作エネルギーを高めてもらうよう、
努めていました。
 
また、何歳になっても、
どんなジャンルにいても、
恋愛、男と女にまつわる刺激は
キープしていてもらおう、
そう密かに思っていた私は、
私や知人の恋愛話や失恋話を
笑い話にしてから、マンガ家さんに
ラインなどで送ってました。
週刊コラムみたいな感じで。

さあ、これで、創作パワーが
高まったマンガ家さんは、
よい作品を描いてくれるはずです。

ここで大事なのは、
マンガ家さん全員が
こんなサポートが好きではない、
ということです。
むしろ、苦手な人、
そっとしといて欲しい人も
たくさんいる!ということです。

結局、マンガ家さん一人一人に
合わせて、創作エネルギーを高めて
もらえる対策を練るしかないんですね。

なあんだ、秘訣は毎回変わるんじゃ、 
秘訣じゃないじゃん?
そうかもしれませんね。

ただ、ひとつ、共通しているのは、
そのマンガ家さんと、
できるだけ、より良く伴走すること。
あまり、構われるのが苦手な人には
また、なるだけ最小限に
連絡を控えることも、また
伴走者の秘訣ですね。

編集者はこんな風にして、
担当するマンガ家を、
心をこめて、創作パワーが
最大限になるように努めるのですが、
では、マンガ家や作家もまた、
自分が創り出したり、生み出した
登場キャラクター、
主人公やその友人や恋人や脇役を、 
責任をもって愛することだと、
私は思ってきました。
愛するというか、
凄く好きになるチカラです。

ある歴史専門のライターさんに、  
ふだんは、フィクションは
描いていないライターさんに、
歴史ドラマのシナリオを
描いてみませんか?と
声をかけたことがあります。

ライターさんも、
前からフィクションをやりたかった
と乗り気になり、
ラフを書いてくれました。
ただ、出てくる登場人物が
なんていいますか、
体重がなかなか乗らないんです。
人物が魅力的にならない。 
棒読みをしてる感じです。

二週間以上、やり直しを
何度も続けていただいて、
ライターさんも、どんどん
元気がなくなり、やつれてきました。
やはり、今回の依頼は
なかったことにしましょうか、
となりました。残念でした。

ライターさん曰く、
大河ドラマを観ていて、
つくづく思った、
三谷幸喜は凄いなあ、と。

自分が登場させたり創りだした人物に
それが実在にせよ、非実在にせよ、
凄い愛情を懐きながら動かしてる、 
脚本家としてのマストな責任です、
それが自分にはできるとは思えない。
自分の生んだ人物を
愛することができなかった、 
そうライターさんは言ったんです。

創作には、愛が欠かせない。
そんな、当たり前な話も、
本当に実行できるかどうか?

これは、小説を書いたり、
小説家を目指している方には
参考になるかもしれないですね。

あなたは自分が創造した人物を
本当に愛し、責任を持ってますか?
とことん好きですか?
意外にこれは盲点な部分がありますね。
特に、文章がうまくなってきた人は
心にスキができやすいですから。


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