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頼もしいアメリカ文学か、繊細なフランス文学か?

アメリカ文学が好きだった。

若い時は、人生を
変えてくれそうな本が好きでした。
ダイレクトに、ストレートに、
私の精神を高揚させたり、
信じてよさそうな言葉をくれる 
逞しい本が好きだった。

なかでも、
アメリカの文学には
惹かれる作品がいっぱいある。
ジョン・アーヴィングの
「ガープの世界」
「ホテルニューハンプシャー」や
レイモンド・カーヴァーの短編集
「頼むから静かにしてくれ」など
人生の真実に富んだ作品が
アメリカにはたくさんあった。

ヘミングウェイの初期短編集
「われらの時代」や
詩人チャード・ブローティガンの
「アメリカの鱒釣り」、
ストイックな作品で知られる
フラナリー・オコナーの短編集など
頼もしく生きるお手本に思えた。

アメリカ文学に比べると、
フランスの文学は、
言葉が繊細で豊穣で、
ページから受ける印象は
頼りがいがなさそうで、
脆弱さを感じてしまう。

イギリス文学は、
アメリカとフランスの中間に
あるように思えた。

今だからこそ、
究極のフランス文学、
プルーストを読みたくなる。
いや、プルーストは
こうなるべく待っていたような。

日本人の作家では、
やはり「人生いかに生くべきや」
を問い続けた夏目漱石が、
いちばん頼もしく見える。

川端康成は頼るには繊細過ぎた。
三島にもそんな印象を受けた。

でも、50歳を過ぎて、 
改めて見渡してみると、
頼もしさや強さを基準にした
学生時代の私の゙文学観は、
あまりにも大雑把で、
繊細さに欠けていたなあ。
今はそう痛感しますね。

直接、ダイレクトに
「人生をこう生きよう!」
とは書いていなくても、
川端や三島の耽美的な美意識を
披露してくれる作品には、
間接的に人生を教えてくれている、
そんな気がするんです。

若くて、無知で、愚かで、
焦りばかりだった学生時代は、
アメリカ文学など、
頼もしい作家、作品が
魅力的に見えた。
ダイレクトで、ストレートで。
それ自体はまちがってはないと
思うのですが、
ちょっと偏り過ぎていたかもな、
と反省したくもある…(汗)。

繊細な作品も、
頼もしい作品も、
両方を読んでいたら、
今の私とは違う人間に
なっていたかもしれないかも。
ちょっとゾッとしますね。

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