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【発禁本】読書する権利、読書する自由?

村上春樹の中編
「スプートニクの恋人」が
ロシアで発禁になりました。

ロシアのミサイルを
タイトルにしてあるせいか? 
と思いきや、中身で、
女性の同性愛の話が出るから、
というのが理由だそう。

ロシアでは同性愛について
触れた本は発禁小説になるのか?

でも、もともとロシアで
発売になった時は発禁にならず、
今このタイミングで
国から指定されたのは、
プーチンの方向性がより一層、
強硬になった証拠でしょうか。

ところで、日本は書物について
国や政府に発禁にされることは
あまり耳にしませんね。

ただ、空気的に何となく、
発行が控えられる本って、
歴史的に見たら何冊もありますね。

猥褻過ぎると裁判になった例では
ロレンスが書いた
「チャタレイ夫人の恋人」や
著者不明「四畳半襖の下張」は
昭和文学史を騒がした作品でした。

でも、これらは
スケベさにまつわる例で、
読んでいたら読者も罪になるなんて
恐ろしい本じゃないですね。

最近は解禁になり、
電子書籍で読めるように 
なりましたが、
深沢七郎が書いた、
左翼と皇室がトラブルを起こす小説
「風流夢譚」。
この本を出した中公出版社の社長宅が
右翼に襲撃されて、
お手伝いさんが殺されました。
作家の深沢七郎は
しばらく雲隠れした程です。

これは発禁になったというより、
出版社というか、
業界全体が、その後ずっと
天皇や皇室を文学では
扱わないことになりました。
自主的な発禁?ですかね。

日本の書籍の歴史で
人命が犠牲になったのは、
イスラム教の大著「悪魔の詩」を
訳した筑波大学の教授が
1991年に殺害された事件が
衝撃的でした。

これは前年に日本で翻訳された
「悪魔の詩」が反イスラム的だとの
理由から、  
これを書いた作家や
この本を翻訳した人を死刑にせよと
イスラムの指導者が魔の司令を
出していたと言われます。

この指導者が支配していたのは、
当時のイランでした。

このイランでは
80年代、90年代、反米が叫ばれ
欧米の文化を目の敵にしてました。
「ロリータ」やら
「グレートギャツビー」などを
家で読んでいることを誰かに
密告されたら、
特別警察がやってきて、
逮捕されていたんだそうです。

この逸話は、
「テヘランでロリータを読む」
(アザール・ナフィーシー著)
という、命がけの読書会を綴った
作品で読めるんですが、
ああ、イランの話に比べたら、 
日本はなんて自由で平和な国
なんだろうと、感謝してしまいます。

本を自由に読めない国なんて
絶対にいたくないですね。

でも、日本が太平洋戦争で
欧米と戦争していた時は、
欧米の本は表だっては読めませんでした。
時代小説家・隆慶一郎は、
若い頃、フランス文学が好きで、
「葉隠」という武士道の本の中を 
大きくくり抜いて、その穴に
フランスの文学書を隠していた話を 
書いていました。
隆慶一郎「死ぬことと見つけたり」
(新潮文庫)より。

それを思うと、 
今の日本は、余に読書天国ですね。
いや、でも、近い将来、
中国と対立が深まれば、
中国発のミステリー、
たとえば「三体」などが
発禁になるかもしれませんね。

その時、私たちはどうするだろう?
がまんするのか?
逮捕の恐怖に負けず、
読書し続けるか?
まさに、命がけの読書ですね。

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