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秋刀魚には何かけて食べますか?

秋刀魚。
今年もまだ食べてないためか、
スーパーで毎回、
手にしてしまう。
焼いたのが一尾で300円は
高いのか?安いのか?

和歌山県新宮市を
故郷にもつ文学者は?
と聞いたなら、
今の時代は、
中上健次、と返って来るでしょうか。

でも、100年前なら
佐藤春夫という答えが来たでしょう。

佐藤春夫は、
谷崎潤一郎の妻・千代さんと
恋仲になってしまい、
数年後、谷崎から譲られた、
という事件?が有名ですが、
その頃に書いた詩歌
「秋刀魚の歌」は
和歌山ならではの食べ方が
描かれています。

それは、
焼いた秋刀魚にミカンを
絞って食べるんです。
今とはちがって、
今よりもミカンが青かったそうで、
酸っぱくて、レモンにも
似た爽やかな味がしたのかな? 
紀州の国だから、蜜柑は
山ほどあるんです。

その詩歌「秋刀魚の歌」が
作られたのが、1922年。
今からちょうど100年前でした。

谷崎が無事に夫人を
佐藤春夫に譲ってくれるか、
ドギマギしながら
待っていた独身男の
やるせなさと、
秋刀魚にしたたるミカンが
なんとも絶妙な味わい。

100年前に詠まれたそんな歌を
ご紹介させてください。

『「秋刀魚の歌」

あはれ
秋風よ
こころあらば伝えてよ
ーーー男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食らいて
おもいにふける と。

さんま、さんま
そが上に青き蜜柑の酢をしたたらせて
さんまを食うはその男がふる里の
ならいなり。

ーー男ありて
今日の夕餉に ひとり
さんまを食らいて
涙をながす と。

さんま、さんま
さんま苦いか塩っぱいか。
そが上に熱き涙をしたたらせて
さんまを食うはいづこの里のならいぞや。
あはれ
げにそは問はまほしくをかし。』

100年前に和歌山で読まれた歌です。
独り身の切なさというのは、 
谷崎潤一郎の夫人・千代への
一途な気持ちですね。
大正時代の文学史上の事件と言われた
谷崎夫人と佐藤春夫の悲恋でした。

まだまだ、秋刀魚は旬です。
みなさんも、今度よかったら、
蜜柑をさんまに絞りかけて
食べてみてください。
しっくり来るといいのですが。

あまり、甘すぎる蜜柑は
使わない方がいいですかしら。
ちょっと酸っぱいめが
焼き魚には合うと思います。

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