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突発的な短編マガジン

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1話完結の短編です。
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2022年5月の記事一覧

大人と子供に平等な犯罪を考えている兄弟の話

 時々思うのだ。大人が罪を犯すより、未成年者が犯罪行為に手を染める方が簡単じゃないか? と。
 だって、酒を飲んだだけで違法になれる。子供はやっちゃいけないことだらけで、ちょっとでも大人にしか許されないことをしたら、それだけで御用だ。
 ……ということを、16歳の弟に言ったら、ひどく叱られた。
「お前はなあ! 高校生が酒を買うことのハードルの高さを分かってない。コンビニ店員ってすぐ、『身分証の提示

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昼寝で見た夢のやつ。蛍のイベント

昼寝の夢は妙だ。

地元の川に蛍を呼ぶイベントの計画があることを3ヶ月ほど前に知った。テレビ局が主催だが、ほとんどの人は知らなくて、一部の熱心な人や関係者以外気にもとめていない。わたしはそのイベントを異常に待ち望んでいた。
夏が近づき、わたしは蛍を楽しみに毎日を過ごしていた。
区内に蛍が住んでいる川があるのは知っていた。地元の川は一級河川で橋桁から5mはあるし、蛍が住むような場所ではないが、区内に

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きょうの非行@ガオーシティ(1) 月を上げ下げする綱を切ってみる

 地球の地下奥深くには、マントルを避けるように、丸い空間が作られている。
 ガオーシティ。本当はすごく暑いらしいけれど、鉄球の中を空洞にくり抜いたような形の街の内面には、冷却用の水道管が張り巡らされているので、快適だ。
 僕こと綿貫カズオは、ハイスクールに通う十六歳だ。ちょっと悪いことをするのを生き甲斐にしている。
 非行の相棒は、クラスメイトの瀬尾。
 一見冴えない金髪もじゃもじゃだけど、頭が切

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