昼寝で見た夢のやつ。蛍のイベント

昼寝の夢は妙だ。

地元の川に蛍を呼ぶイベントの計画があることを3ヶ月ほど前に知った。テレビ局が主催だが、ほとんどの人は知らなくて、一部の熱心な人や関係者以外気にもとめていない。わたしはそのイベントを異常に待ち望んでいた。
夏が近づき、わたしは蛍を楽しみに毎日を過ごしていた。
区内に蛍が住んでいる川があるのは知っていた。地元の川は一級河川で橋桁から5mはあるし、蛍が住むような場所ではないが、区内にあるならここへ呼ぶことも可能なのだと思っていた。
そして当日夕方になって、近隣住民にテレビのイベントらしいと噂が回り、わたしは楽しみゲージが最高潮に達していた。
しかし日が暮れてテレビが準備し始めると、ネット上で批判が集まり始めた。テレビ局のやり方が蛍にとって良くないという。わたしは猛烈に恥ずかしくなった。
3ヶ月間心の支えにしていたものが良くないものだなんて知らなくて、地元民はミーハーな感じで盛り上がっているし、この町をそんな風に映さないでくれと泣きたくなった。
蛍は3ヶ月かけて呼び寄せていたものだから、突然中止したってやってくる。そして夜になり、暗闇の川の沿いに、チラチラと蛍が光りだした。
わたしは蛍を見ながら半泣きになっていた。テレビ局とイベントに関わっていた地元の数人は、批判の声を踏まえて、最小限の場所をひっそりと撮影している。長い川沿いに、チラリチラリと蛍が光っては消えている。
わたしはひとりで川沿いを歩いていた。他に見物している人はいない。ほとんどの蛍は、無駄に呼ばれて、ただただそこで、毎日の延長の生命を営んでいた。空中で手を振り回して元の川に返してやりたい気持ちになったが、それはエゴだと思ったので、やめた。
不自然に呼ばれた住宅街で、きっといつもの夜と同じように飛び続けている蛍を眺める。もしかしたらこれで少し寿命が縮んでしまったかもしれないと思ったら、せめてわたしが見続けて、無駄にしないようにするしかないと思った。
カーブした川の向こうへ目をやる。川の形を示すようにチラチラ舞う蛍たちをひたすら見た。
ただ命をすり減らされたということにならないように、一生懸命見た。

それで起きた。

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