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「待ち合わせ場所まで後100mの悲劇」 #ファーストデートの思い出


忘れもしない大学1年生の秋、僕は学部の同級生とデートの約束を取り付けた。山本美月似のクールビューティーな女の子。「わたがし / back number」のMVに出てるような、まさにこんな感じ。可愛い。



彼女とはグループワークの授業で一緒になり、徐々に気になってデートに誘った。必死にイタリアンのお店を探して、「おすすめの美味しいパスタ食べない?」って誘い文句だった気がする。行ったことないのに(笑)。


早くに免許を取っていた彼女が車を出してくれることになり、ドライブデートとなった時は本当にうれしかった。周りの友人に相談してデートのタイムテーブルはもちろん、トラブルに備えていろんなパターンを想定した。


今思い返すと、付き合ってもないのに意味が分からないけれど、バイト代でカシミヤのマフラー(7000円)をプレゼントに買っておいた。超ふわふわなやつ。



19歳のファーストデートとして、準備は万端だったと思う。ついにリア充の仲間入りだと、前夜は涙しながら寝た。15分くらい歯磨きした。


そうして迎えた当日、集合時間になっても彼女は来ない。何度か送ったEメールにも返信がない。30分後くらいに届いたメールの文面は、僕の人生史上でも上位にランクインする衝撃だった。


「交通事故を起こしてしまい、行けません」


僕の下宿先から徒歩2分、コンビニの前の交差点で彼女は対向車との交通事故を起こしていた。幸い、軽い接触事故で双方怪我はなかったみたいだが、駆けつけたコンビニの駐車場で彼女は事情聴取を受けていた。

さすがに、交通事故は想定していなかった。しかも集合場所まで後100m・・。


修羅場の隙を見て、彼女に励ましの言葉をかけた。「これで元気を出して」ってカシミヤのマフラーを渡した。彼女は突然のプレゼントに戸惑っていたけれど、マフラーも降りかかった思わぬ大役にびっくりだったろう。カシミヤ、ごめん。


こうして僕のファーストデートは、交通事故で中止に終わった。


ショックではあるが、交通事故は仕方ない。
そりゃまあ「どんな確率?」って運命を呪いながらも、次のデートで挽回するしかないのだ。

彼女の予定が忙しくて次の日程はなかなか決まらなかったものの、なんとクリスマス当日に再度デートすることになった。


天下のクリスマスだ。恋愛の天王山、いやもうクリスマスデートの約束をしている時点でほぼ勝利と言っても差し支えなかったはず。

再び、友人たちに相談してデートプランを練った。テーマは「王道のクリスマスデート(交通事故が起きない)。駅前でランチからのカラオケ、ショッピングも楽しんで、高級イタリアンディナーで締めくくる。最後はクリスマスイルミネーションの前で告白する。王道が一番だ。


クリスマスプレゼントに、読書好きの彼女のために素敵なブックカバーを用意した。事前にプレゼント交換する約束も交わして、デート前から有頂天だった。


満を持して迎えたクリスマス当日、交通事故も起こらず、他にトラブルもなく、順調にデートは進行する。高級イタリアンディナーに舌鼓を打った後、クリスマスイルミネーションの前でプレゼントを交換した。彼女は手作りのケーキを僕にくれた。

気づいたら僕は彼女に告白していた。OKがもらえると確信していた。何の疑問も抱いていなかった。



「ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったです」


トラックに轢かれたかと思うくらい、衝撃の返答だった。
彼女の首元のカシミヤがうなだれていた。

直後の記憶はあんまり覚えていなくて、気づいたら僕は帰りのバスに揺られながら、彼女の手作りケーキを食べていた。美味しくて美味しくて涙が出てきた。


下宿に帰ってから、彼女にメールを打った。
今日はとても楽しかったこと、ケーキがすごく美味しかったこと、まだ諦めきれないからまたデートしたいこと。


数日後に返信があった。
「彼氏ができました。サークルの先輩です。もうデートできません」


こうして僕は自然の摂理を知った。「同級生の可愛い女の子は『サークルの先輩』とくっつく」。大学生活で得た、かけがえのない知見である。

そこから半年ほど、山本美月とカシミヤのマフラーを見るのが怖くなった。トラウマとはいえ完全にとばっちりである。カシミヤ、マジでごめん。


それ以来、彼女とは一度も喋ることもなく、現在の消息は知らない。ただ、日々の幸せと安全運転を祈るのみだ・・。



それでは聴いてください。back number で「わたがし」


ちなみに、3年付き合った彼女(サークルの後輩)にフラれた話はこちら。


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