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2年ぶりに動く美穂姐さんに会いに行った話。

久しぶりに東京へ行った。 

森川美穂姐さんのライブを観に。

姐さんに最後に会ったのは、コロナが始まる前だから、もう2年くらい会っていない。
その間、お母様が他界され、アレンジャーの小林信吾さんが亡くなり、以前担当されていた久永さんも亡くなり、美穂氏は、とても辛い日々を過ごしていた。

それなのに、姐さんたら、大学の授業は全く休まず、ライブもどんどん行い(配信が中心だったけど)、アルバムもドドンとリリースした。

そのドドンが、これ。

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アルバム「I.N.G」発売記念ライブは10月17日に行われた。今回は、2016年〜2021年にリリースされたアルバムの曲から披露される。

今回は、ライブハウスでもホールでもない、リハーサルスタジオで行われる。ファンのかた10名の限定のライブだ。

なんか、あやしい。
いや、違う。
なんか、特別感がある。

用賀のスタジオイーラに到着すると、リハーサルを終えた美穂姐さんが、楽屋にいた。
正しくは楽屋のベルベットのカーテンの中にいた。

「純子さん、お久しぶりぃ〜❗️」

腹式呼吸のよく透る声。

「美穂ちゃん、お久しぶり❗️
お着替え中なのね、ごめんねー」

私が言い終わらないうちに美穂氏が出てきた。

、イブニングドレスやないかい‼️

しかも紐なし。なんて言うの?上がビスチェみたいなやつ。

きゃあ‼️めちゃ、似合う‼️

最近、すっかり細くなった美穂氏に、マーメイドラインの黒のドレスがボディにぴったり張り付いて、めちゃセクシー。

今日は、何かが違うぞ。
姉さん、やる気だぞ。

近況を伝えあい、一足お先に会場へ。

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ほおら、怪しさ満載。
丸く見える数個のライトは、ランプのような形。始まる前から照明は、それしかなくて、暗い。ドラキュラの会合みたい。
いや、美穂宮殿の晩餐会のようです。

程なくして、メンバー登場。
今回は、ピアノの塩入俊哉さん、ウッドベースの河合徹三さん、そしてギターの岡崎倫典さんの3人。ミニマムながら豪華すぎるメンバーだ。

次いで美穂姐さんが登場。一曲目が始まる。
どこかで聴いたイントロ。
あ、Saison de l'amour
私が書かせて貰った曲です💦

2016年にリリースされたアルバム「Life is Beautiful」からの一曲でスタート。
ライブでは、あまり唄われないので、私も久しぶりに聴く。

10名しかいない会場。なんと、このライブは、ドレスコードがあり。是非、スーツで来てください。と、エスパー西嶋氏の指示があった。
コロナ禍の年末「今年も本当にお疲れ様でした」いう美穂氏からのプレゼント的ライブ。ピアノの繊細な旋律にウッドベースの重厚感、重ねてギターのささやき。高級感満載である。

きらびやかな雰囲気で始まった一曲目が終わると、美穂姐さん、何を思ったか話し始めた。

「塩入さん、ふぐ、食べてきたの?」

当日の朝まで下関にいたというピアノの塩入さんに質問する。
一瞬で、いつもの美穂姐さんに戻る。
会場が、取り調べ室みたいになった。

そして、何故か申し訳なさそうに「はい」と答える塩入さん。

なんでやねん。笑

2曲目は、2018年にリリースされたアルバム「Female」から「ユメサライ」。イントロが始まった瞬間、イブニングドレスが似合う美穂氏に戻ってゆく。さっきまでの「取り調べ室」の名残りは何処にもない。次いで「また、空が近い」「漂流夜行」「涙をいっぱいに目にためて」を披露。

これらが入っているアルバム「Female」は、
「今までなんで作らなかったの?欲しかったのは、こんな美穂姐さんなのよ!」というくらい美穂氏の素晴らしさを拾い集め、濃縮したアルバムだ。曲を提供する側の私が、こんなことを言っては恥ずかしいのだけど、作詞家松井五郎氏の作りあげる「おんな」は、私の細胞からは出てこない。女なんだけど、女からは出てこれない「おんな」を松井氏は作りあげるのが見事だ。

知りもしないものばかり名前をつけて
くちづけの跡も花のように

ってもう、ひれ伏すしかないじゃんねぇ。

6〜8曲目も、松井五郎氏の世界が広がった。
美穂氏初のカバーアルバム「Another Face」から「好きサ」「月に濡れたふたり」「行かないで」

どっぷりオトナの時間。
なんて、豪華な時間なのでしょう。
と、余韻に浸っていたら、次のコーナーでは、なんと、デビュー前の曲を唄うという。私も初めて聴かせてもらう「ハネムーン サラダ」
ベースの河合さんのコーラス付き。
さっきまで「行かないで〜」と切なく唄っていた美穂氏が、めちゃくちゃかわいい声で唄う。デビュー前、ヤマハで唄のレッスンを受けていた時代、「森川美穂」になる前の中学生の美穂氏が、そこにいた。

次いで、1986年のファーストアルバムから「ダーリン」、1987年のアルバム「Nude Voice」から「クリスマスはどうするの?」。

私も大好きな曲。12月の街でバッタリ顔見知りの男の子に会って「明日、クリスマスだけど良かったら一緒に過ごそうか?」と提案するワクワクする内容。なんてかわいいんでしょ。小林和子さんの詞だ。こんなに明るくて前向きな曲って、私、書けないなあ。和子さんも、私が大好きな尊敬する作詞家だ。

最後のコーナーは、いよいよ新譜「I.N.G」から「Half of me」。スパニッシュギターが印象的な心揺さぶられる曲。

そして、今回、私が書かせていただいた「Smile again」。
この曲は、今年の4月には受け取っていた。
(昨今、大抵の場合、歌というものは曲から先に作る。その後、詞をのせてゆくのだ)
作曲は羽場仁志氏。羽場さんとは「Bird eyes」でご一緒したり、ほかの歌い手さんの曲とも組ませていただいたり、大好きな作曲家さん。
今回の曲を初めて聴いた衝撃が忘れられない。美しいピアノのイントロで、まず、ヤラれて、美しい羽場さんの声で癒され、サビでボディブロー並みの衝撃を受け、一曲を聴き終わるまでに、ボロボロに泣いてしまった。

どうしよう、もう聴けない。
美しすぎて、こわい。

あまりにも素晴らしい曲を聴いた時、ショック過ぎて、脳内でどう処理すれば良いのか、分からなくなる。私だけかな。

その衝撃を、というか、感動を羽場さんに伝えようと、メールした。
「曲、聴きました。あまりの衝撃に2回目を聴くのが、怖いです。でも、頑張って書きます」
みたいなことを伝えた。そしたら返信がきた。

「息、してください」

爆笑。

ラストには、やはり新譜から「0時の鐘が鳴るだろう」、そして、私にとって大切すぎる曲、「Life is Beautiful」で、一部が終了した。


今回のライブで、気がついたことがあった。
「0時の鐘が鳴るだろう」を聴いていた時、様々なことが頭をよぎった。

頑張れば叶うなんて決して思わない
やれるだけはやったでしか私は計れない

誰だって、それを叶えるために頑張っている。
だけど、オリンピックでもそうだけど、金メダルを取れるのは、ひとりしかいない。
それならば、金メダルを取った人にしか、意味がないのだろうか、人生は。

違うだろう。

頑張りたい。って、思える何かに出会えたこと自体、奇跡だ。
私は、金メダルは、この人生で貰えないかもしれない。でも、気持ちを言葉にして、曲に乗せるという奇跡に出会えた。

金メダルではない違う何かにも、ちゃんと価値や意味がある。

そんなことを、ぼんやり思った。

楽屋へ顔を出して、美穂姐さんにそのことを伝えてみた。夜の部で着るドレス、ちょい大きいので「大丈夫?見てくださーい」という姐さんの確認リクエストにこたえながら、話した。
だから、うまく伝わったかは、自信がない。

たぶん、そんなことはとっくに分かっている姐さんは、さらりと答えた。

「成功に見えないものが積み重なって、いつか成功していたってこともありますからね」

40年近く唄い続けている美穂氏が、いぶし銀のように見えた瞬間だった。

私より、若いのにな。

やっぱ、ドラキュラ並みに長く生きてんのかな、ほんとは。
と思いつつ、美穂宮殿に手を振り、新幹線に乗った。

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美穂姐さんに出会えたことが、私の人生での金メダルだ。

おしまい。

※写真は、森川美穂さんのスタッフ、Fumi Akimuraさんからお借りしました。


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