これまでのジブリと違うところを見つけちゃったよ
やっと、観てきた。
「君たちはどう生きるか」
宮崎駿監督の集大成とも言われている本作品。
何度も見ないとわからないかも・・・と言う方もいたが、私にとっては分かりやすい内容だった。
(吉野源三郎氏の同名の作品をアニメ化とずっと思っていたが、全く違うものだった)
それは、ジブリそのものだった。
胸に迫る背景と、印象的な始まり。突然変わる場面設定。
「え?今までのは何だったの?」
も、含めてジブリだ。
気になるセリフや、キャストの意味は、それぞれの受け止め方で良いんじゃないでしょうか。
今回、一番印象的だったのは、人間の描き方。
ジブリ映画は、背景が実写か?と思うくらいリアルなのに対し、人物が「紙」のようにペラペラで、ちょっと違和感を感じていた。
(ジブリさん、すみません)
しかし今回、人間の描き方、特に主役の眞人の身体は、重さがあり、厚みがあり、体温があった。
冒頭の火事のシーン。着替えるために慌てて部屋へ戻るところ。大写しになる素足は、階段を軋ませていたし、怪我をして熱を出し寝込むシーンでは、寝汗が伝わるようだった。
そして、もうひとつ印象的だったのは、
足音。
母親が亡くなり、新しく母になる叔母の屋敷に呼ばれた眞人。
入り口から自分の部屋まで、長い長い廊下。
そこを叔母と共に歩く「足音」がとても印象的だった。
叔母が何かを話しても眞人は何も答えず「足音」だけが耳に残る。
裸足。
乾いた洋館の床にこすれるような足音。これから身を置く屋敷を歩いていくのに、身を守るものが何もない。靴下もスリッパも。
眞人の緊張感、違和感、不安感・・・それを全てあの足音で表現したのだろうか。
眞人は、寡黙な少年でセリフが少ない。
なのに、眞人の不安が伝わる。
それはストーリー設定や、背景の美しさが秀逸であるのはもちろんの理由だが、主役に体重や体温を与えたせいで「そこにいる感」が増したせいではないか・・・。
そして、最後にもうひとつ。
今回のテーマ曲、米津玄師氏の「地球儀」について。
作品との添い遂げ方が見事だった。
多すぎず、少なすぎず・・・な関わり方。これまでの米津氏の作品と比べると「引き算の美学」のような気がする。これはよほど、作品の意味を咀嚼できていなければ書けない曲だ。多くを語らず、行間ですべてを伝えてくる。
「あとはそれぞれの課題を全うしてください」と、突き放されたような、それでいてしっかりと米津氏の両手に抱きしめられているような・・・不思議な安心感と寂しさに包まれる曲だ。
エンドロールで大音量で聴いていた時、気づいたのが、
「軋む音」
ピアノの椅子が軋むようなキキキッ・・・という音。
何度も何度も。
アレンジャーの坂東祐大氏の母君がお使いになっていたピアノで演奏された曲。ピアノのペダルを踏む音と、椅子が軋む音らしいのだが、そのまま使ったらしい。
物凄い臨場感。
すぐそこで、私のためだけに弾いてくれているような感覚に陥る。
違うけどね。
このキキキッという音を聴くためだけに映画館にもう一度行ってもいいなと思うくらい素敵だった。