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海外のUXチームの職種や体制を探る

前回の投稿では、DX成功のためにUXが重要であることの理由についてお話しました。今回は、UXがビジネスの場にしっかりと根付いている海外の状況について、海外メディアに投稿されたいくつかの記事を見ながら、私なりの解釈を交え解説していきたいと思います。

海外のUXチームの構成を詳しく見てみる。

まず、UXチームに所属するメンバーのそれぞれの役割について見ていきます。
UXチームは、UIデザインからUXリサーチャー、インフォメーションアーキテクチャなど、多様な職種で構成されています。会社全体で、これらの複数の職種が適切に連携するように設計すること。それがUXチームの構築を開始する最善の方法になるそうです。
また、チームはUXとデザインをさまざまな視点から見ることができ、多様なスキルと知識を持つ個人で構成する必要もあります。
 
では、UXの各職種の役割を見ていきましょう。

UXリサーチャー

「UXリサーチャー」は、ターゲットユーザーと体系的に関わり、ユーザーの行動、ニーズ、問題点、モチベーションを理解し、UX リサーチの活動の計画と実施。さらには収集されたデータの分析、主要な利害関係者への調査結果の提示を担当する役割とのこと。
要するに、インタビューなどを行ってユーザーの行動やニーズを調査・分析する仕事です。

UXデザイナー

プロジェクトの計画やユーザー調査の実施から始まり、プロトタイプの作成、ユーザーテストなど、UX設計のプロセスの全てに関わるデザイナーです。ユーザー調査によってニーズや課題を特定し、問題を解決するためのアイデアを生み出します。ユーザーにとって適切なプロダクトやサービスの利用体験を目指します。

UIデザイナー

ユーザーが操作する画面の設計から始まり、プロダクトやサービスのアイコン、ボタン、メニューバー、タイポグラフィ、色など、ユーザーが見て、触れる可能性のある全ての要素の設計を行うデザイナーです。「UXデザイナー」がプロダクトやサービスを使う際の体験をデザインするのに対し、「UIデザイナー」は、目に見えるビジュアル部分を扱います。

インフォメーションアーキテクト

ユーザー調査によってユーザーが必要な情報をすばやく見つけ、プロダクトやサービスをユーザーに対してどんな効果的な方法で提供するのかを設計する仕事です。
ビジネス目標やコストを考慮しつつ、ユーザーのメンタルモデルや期待、コンテンツの内容など、幅広く理解する必要があります。さらには、UXリサーチャー、デザイナー、プロダクトマネージャー、エンジニアなどステークホルダーと密接に連携することが求められます。

UXライター

ユーザーのニーズを深く理解した上で、ユーザーの行動を促すフレーズのボタンやウェルカム画面、エラーメッセージや通知メッセージまで、ターゲットユーザーをナビゲートする全てのテキストに責任を負います。UXデザイナーや開発チームと密に連携することで、プロダクトやサービスの全体的なユーザー体験の構築をサポート。ユーザーを導き、目的を達成するのを助ける上で、重要な役割となっています。

以上、5つの職種があります。
 
参考記事:Giada Gastaldello.” How to structure and manage a UX team: Setting team members up for success”. In the loop. Dec 15, 2021.

UXチームにおける重要な職種

海外のUXチームには、さらに2つの重要な職種が存在しています。

UXストラテジスト

UXを通じてビジネス全体の改善戦略を考える役割です。クライアントとビジネス目標について話し合い、重要なビジネス上の意思決定に貴重な情報と提案を提供します。
後ほど説明しますが、表層、骨格、構造、要件、戦略という5つに分かれるUXの5段階モデルにおいて根幹となる、戦略の部分に携わる職種です。ユーザー調査、競合分析、インタビューを行い、ビジネス戦略をドキュメントの形で提供します。
 
参考記事:Joseph Dimaculangan.” What Does a UX Strategist Actually Do? ”. Career Foundry. Aug 5, 2021.

Research Ops Manager

社内にUXリサーチを浸透させるため、組織の編成や最適化を目指します。メンバーマネジメント、ガバナンス、ナレッジマネジメントなどを担当。さらに、組織の教育者としてUXリサーチの価値について共有し、組織の文化としてのUXの浸透を目指します。
企業内にUXリサーチの価値や考え方を認知させるためには必須の職種です。
 
海外のUXチームでは、現在以上の職種が存在しています。
参考記事:Lizzy Burnam.” Research Operations: The Practice, The Role, and Its Impact”. user interviews. Aug 30, 2022.

UX5段階モデルにおける各職種の役割

海外では、UX5段階モデルのそれぞれの段階で職種が分かれているところがポイントです。一概には言えないものの、2種類か3種類くらいのカテゴリにしか分かれていない日本の状況とは大きな違いだと思います。
ただこれについては、可能性として日本人はマルチタスクが得意なので一人で複眼的な視点で動くことができる、とも言えるかもしれません。

UX5段階モデルで見る職域と領域

一般的なUXチームの3タイプ

UXのチームの編成方法は、その時々のプロダクトに対するニーズ、リソース、企業文化などで変わりますが、主に3つのチームがあると言われています。

一元化されたUXチーム

「社内代理店モデル」と形容されることも多い、集中型のUXチームです。
利点として、UXチームのメンバーはさまざまなプロジェクトを担当するため、ビジネスの多くの部分に触れることで、やりがいとモチベーションを維持しやすく、スキルを伸ばしやすい点があります。反面、さまざまなプロジェクトを横断するため、1つ1つのプロジェクトの理解度が浅くなってしまう可能性があります。

一元化されたUXチーム

分散化型のUXチーム

複数のプロダクトチームごとにUXチームのメンバーが組み込まれているタイプです。
利点として、一元化チームとは逆にプロダクトへの理解やチーム内の結束は深まりやすくなり、生産性の向上が期待できます。ただ、チームごとのUX専門家の人数が少なくなってしまう場合は、UXのプロセスなどについて関係者を教育することにコストがかかり、デザインやユーザーリサーチに割く時間が少なくなってしまう可能性もあります。

分散化型のUXチーム

マトリックスのUXチーム

こちらはニジボックスでも取り入れているチーム編成です。前述した2つのチーム編成の利点を生かし、U X組織全体の統率とプロジェクトごとの深いコミットが実現できます。ただ、こちらにもデメリットはあり、UXチームのメンバーはプロダクトチーム、UXチーム、どちらのマネージャーにも報告しなければならないため、組織マネジメントが若干複雑になります。ですので、このタイプのチーム編成を行うには、役割や責任をしっかりと決めておくことが求められます。

マトリックスのUXチーム

参考記事:Giada Gastaldello.” How to structure and manage a UX team: Setting team members up for success”. In the loop. Dec 15, 2021.

UXチームの成功とパフォーマンス向上のために

ここまで、海外のUXチームの職種や編成タイプの現状について解説してきました。どんなチーム編成を行ったとしても、チームメンバーが一丸となって目標に向かえるようにするには大変な労力が必要です。マネージャーはその重要な役目を担っており、理想的なUX組織の構築にあたって、明確なゴールと期待を設定することも大切なポイントです。UXストラテジストでなくとも、目標に向かって自分たちが何をすべきなのかを個々のメンバーが理解することが重要になってきます。
 
今回は、海外のUXチームの現状について参照記事を基にお話ししてきました。
もっとも、その手法を丸ごと取り入れる必要はないですし、日本の現在の手法が間違っているかと言われれば、私はそうではないと思っています。なぜそうなっているのか?を分析しながら、エッセンスを私達の文化に合わせて取り入れていくのが適切なアプローチなのではないかと考えています。参照記事にある、「UXチームのメンバー全員が明確な役割分担と現実的な目標を設定し、誰もが心地よく意欲的に貢献できる環境を作ることが、UXチームの成功とパフォーマンス向上につながる」、という考えはまさにそうだと思いますし、私自身も強く意識していきたいです。

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
少しでもビジネスのヒントとなることがあれば幸いです。次回もUXにまつわる記事を投稿していければと思います!

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