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一級建築士が思う、食品衛生責任者という資格について

私は現在、40年間シャッターが閉まったままだった、大正2年築の9坪ほどの木造建物「多忙飯店」を生まれ変わらせるべく、いろいろ進めています。どう生まれ変わらせるのかはまだまだ思考の途中なのですが、私自身が小さな飲食店が好きだということもあり、なにかしら飲食ができるスペースにしたいなと考えています。

とはいえ、私の本職は建築士。
大正2年築、築100年以上経った建物を建築として生まれ変わらせるのは得意ですが、食に関しては食べるばっかりで素人です。

そんな私が飲食を伴うスペースを運営したい!と思った時に必要と分かったのが「食品衛生責任者」という資格です。

飲食に携わっている人にとっては、我々が建築士の資格を当たりまえだと思っているのと同じで、当たり前の資格なんだと思いますが、正直この資格、私はこの事業を進めるにあたって初めて知りました。

食品衛生責任者とは

飲食店や喫茶店などの調理営業や食品の販売業等に必要であり、店舗、施設等の衛生等を行うことを目的としている。
食品衛生責任者の選任については国の法律で直接的に定められているのではなく、食品衛生法(昭和22年)第50条第2項に基づき、都道府県、指定都市及び中核市が施設の衛生管理上講ずべき措置として、地方の実情に合わせて条例として定めている。

ということらしく、地域によって違いがあるのか?と思ったけれど、どうやら講習カリキュラムは、1997年より全国で標準化されているらしいです。

食品衛生責任者とはどういう時に必要なのか

食品衛生責任者の資格は、簡単に言うと、飲食店のように食べ物を扱うお店(販売・製造)をやろうとした場合、各店舗に一人は置かないといけない有資格者です。
各店舗、事業所ごとに一人必要ということから、チェーン店のとある店舗の店長さんになる場合も必要なため、かなり多くの人が保有している資格です。

飲食店等を開業するとなった場合、保健所に営業許可を取る際に、修了証書の提示が必要なため、この資格保有が必要となります。

※先日の講習で知ったのですが、どうやら食品衛生法の改正により、令和3年6月以降は、米穀店にも食品衛生責任者を置かなくてはいけなくなったらしいです。

いろいろなサイトを見ていると、食品衛生責任者は国家資格です!と堂々と書いているサイトとかもあってびっくりするのですが、(店長専門転職サイトにもそう書かれていてびっくりです💦)決して国家資格ではありません。

この資格は、自治体が管轄する公的資格です。

よく似た名称でややこしいのですが、食品衛生管理者は国家資格です。

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資格の取り方

簡単に言ってしまうと、6時間の講習の場に居れば取れてしまう資格です(笑)

講習を「受ければ」ではなく、敢えて「居れば」と書いたのは、私自身受講してみて感じたことです。

講習は、都道府県によって違いはあるようですが、私が受講した大阪では、月に3~4回開かれていて、毎回150名ほどが受講しているようです。

講習費は10500円。これを高いとみるか安いとみるかは人それぞれだと思いますが、これを払えばだれでも資格をゲットできます(笑)

そして、6時間にわたる講習を受けます。
内容は
 講義:食品衛生学(2時間30分)
 講義:公衆衛生学(30分)
昼休憩(45分)
 講義:食品衛生法(3時間)
 確認テスト・修了証書渡し(15分)
なので、講習全体としては10時~17時でした。

確かに、椅子に座って6時間の講習を受けるというのはなかなか大変ですが、当初私はてっきりビデオ講習のような感じで、一方的に録画された講習を視聴するんだろうと思っていたのですが(建築士の定期講習がビデオ視聴なので、、)この講習はリアルに講師の方が出てきて、実体験を含む事例などの雑談も交えながら、食の衛生に関してお話してくれたので、私にとってはなかなか興味深いものでした。

で、先ほど、この講習を「受ければ」ではなく「居れば」資格が取れる!と書いたのは、「講習を受ける」というのは、ちゃんと話を聞き、内容を理解することだと思うのですが、この資格はその場に居るだけで修了証書を貰えてしまいます。

最後に確認テスト(全10問の○✖形式)があるのですが、全て自己採点、そして0点でも修了証書は発行されます(笑)

なので、講習を聞いていても聞いていなくてもその場に居たということだけで資格が取れてしまうのです。。(笑)

私の席の周りでも、寝ている人、ずっとyoutubeで競艇を見ている人、SNSをやっている人、、そんな人がいっぱいでした。

一応、携帯の使用は禁止で、注意されるとのことでしたが、注意に来るということはありませんでした💦

有効期限はあるのか?更新は必要なのか

この資格、有効期限も更新もありません。昔は更新性だったという話も聞いたのですが、調べたところ昔のことは分からずだったのですが、とりあえず今は有効期限のない資格で、一回取ってしまえば永遠に使えます。

講習や修了証書は各都道府県発行ですが、一回取ってしまえば全国どこでも使えるようです。

しかし、一応定期的に講習会を受けるようにとは書かれていますが、いったいどれくらいの人がそれをちゃんと受けているのかは不明です。

ちなみに、講習会を予約できれば取るのは簡単ですが、とにかく受講者が多いようで、申し込みから受講までに時間がかかります。
私は昨年の12月1日に申し込んで最短受講日が3月8日でした。

開業にはこの資格がいるので(後日提出でも可のようですが)、期限もないことですし、早めに取っておくことをお勧めします。

一方、一級建築士の資格とは

簡単に言うと、一級建築士とは、国家資格であり、二級建築士、木造建築士を含め「建築士」という資格は、建築物の設計監理に携わる者として必ず必要な資格です。

建築士事務所登録には、建築士の資格を取ってから3年以上の実務を経て「管理建築士」とならないと登録できません。

とはいえ、インテリアのみの設計や小さい規模の設計(確認申請が不要な建物)に於いては、資格がなくても行うことができます。

みなさんよく間違うのは「建築家」=「建築士」ではありません。
無資格者でも「建築家」は名乗れてしまいます(笑)もちろん有資格の人が多いはずですが。

建築士の資格の取り方

とにかく、凄い量の勉強をします(笑)

試験は、学科試験が7月、製図試験が10月にあるのですが、少なくともGWから猛勉強しないことには受かりません。
GWスタートは遅い方で、よっぽど頭のいい人じゃない限り、毎日4~5時間の勉強、休日は勉強詰め、、、という感じでやっと、、というイメージです。

ほとんどの人は年が明けたら勉強スタート、早い人では前年度の試験終了後から勉強を始めます。

他の国家資格である、医師免許もめちゃくちゃ大変だと思いますが、建築士の試験の大変なところは学生の間に取れない(今は学生の間に二級建築士は取れるようになりましたが)ので、仕事と並行して勉強しないといけないのがとにかく大変です。

私も、設計事務所スタッフ時代に学科試験を2度受けましたが、一回はほぼ勉強をする時間が取れず記念受験的な感じ、2回目は勉強時間が取りたくて、資格学校の講座を申込ましたが、それでも仕事を休ませてもらえず、講座を6割程度しか受講できずで試験も落ち、、、

なんとか、独立してから出産というちょっと時間に余裕のある?機会で資格取得、、、という感じでした。

と言っても、4月末まで事務所の仕事と学校の講師を続けていたので勉強スタートはGW。6月出産、7月学科試験&合格、10月製図試験落第、、2年目に製図試験を再受験してやっとの合格でした。

その間、建築士の受験に関しては、学科試験は独学でもなんとかなるのですが、製図試験はコツ&ノウハウがあるので資格学校(S資格やN学院)に通わずに合格することは稀です。

また、その資格学校の講習料が高い!!
なんやかんや、私は100万以上使いました、、、(たぶん相場)

建築士の資格の有効期限や更新について

建築士の資格にも有効期限はありません。

しかし、3年に一度丸一日に及ぶ定期講習会を必ず受けないといけません。
受講料も一万円近くします。。

資格は責任が伴うものという自覚

で、いかに一級建築士の資格を取るのが大変だったかを書いたのですが、今回、食品衛生責任者という資格を取得するにあたって、同じ資格なのにその扱いがあまりにも違うな~と感じたわけです。

以前、とあるところで、一級建築士を取得するということはどういうことだと思いますか?と問われたことがあるのですが、そこで私が答えたのは、「責任を負える立場になること」だと答えました。

「責任を負う」というのは、なんだか重たいイメージはありますが、よくよく考えると、ちゃんと責任を持つことができることだと思っています。

資格を持っていない時は、「責任をもってやります!」といくら言ったってそれは法的責任を負うことではありません。資格を保有するということは、法を遵守すること、責任を負う立場であるということです。

だからこそ、お客さんに安心して仕事を任せてもらえる立場になるんだと思っています。

同じように食品衛生責任者も国家資格ではないですが、資格です。

講習では内容のほとんどが食中毒に関することでした。
どういうことかと言うと、「人の命に関わること」をちゃんと知識として知っておくようにということだと思います。

結局、建築士も同じく、「人の命に関わる」仕事をする際に資格が必要とされます。
食品なんて、人が口にするもの、直接からだに入るものなので安全性は絶対です。

なのに、そんな杜撰な講習会でいいのか?とちょっと疑問を持ったのでした。
せめて、確認テストは30問くらいあって6割以下不合格とか。
そうすれば、もうちょっとみんな真面目に聞くんじゃないかと。

確認テスト10問のうちの1問にこんな問題がありました

「新鮮な鶏肉は、カンピロバクターが検出されないため生で食べてもよい」

〇か✖か。みなさん分かりますか?

講師の先生は、「これを間違った人は修了証書渡しませんよ(笑)」と言って間違った人を挙手させましたが、なんと半数近くが間違っていました。
もちろん間違った人たちも「講習会に居た」ので修了証書はもらえてしまうんですが(笑)

答えは✖なんですよ(笑)


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