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読み聞かせの思い出

 新米母だったころ、区の子ども図書館で情感たっぷりに読み聞かせをしているよそのお母さんを見て、わたしにはあんなことできない…! と絶望したじゅんぷうです、こんにちは。

 そうは言っても読み聞かせは自分なりに普通にやってきました。家で寝かしつけ時にはもちろんですが、子どもたちの通った小学校の図書ボランティアに参加していました。
 小中学校の多くに同じ趣旨の組織があると思いますが、PTAの役員会や委員会とは別に有志で成り立っているボランティアで(PTA自体ボランティアではあるのですが)、自分の子どもの学年に属して、学年ごとに活動を行います。各学年、5~6人ずつ程度は参加していたでしょうか。

 娘が3年生のときに人手不足だからと頼まれて加入し、そのまま3学年下の息子卒業まで7年間。図書室の整理や季節の飾りつけも年に1回は持ち回りでありましたが、メインは読み聞かせ。学校によるようですが、うちの学校は自分の子どもたちの学年にだけ読み聞かせをすればよかったので、本選びも子どもの意見を反映しやすい面はありました。

 活動スタイルは学年ごとに任されていて、娘の学年は1学期に1回、授業時間を1時間いただいてたっぷり読みました。事前に選書と下読みで時間配分を確認し、図書室を2時間押さえ、初めの1時間で席の準備とリハーサル。一人MCを立てて、4~5冊を読み手と本の中身を見せる係で回すスタイルでした。
 これだと、まあゆったりは読めるのですが、リーダーになったときは授業時間と図書室の空き時間との調整がいちばん大変でした。メンバー間でも、このころはまだLINEをやっていないお母さんもいて、選書の日程も含めてグループメールでのスケジュール調整に難儀した記憶があります。

 息子の学年は月に1回、1時間目が始まる前の15~20分で、図書室には移動せず学年のオープンスペースで短めの本を3冊ぐらい。これだと仕事の出勤前にできるし、下の子がいたりして読み聞かせに参加できないお母さんは、毎回、本紹介をアプリでさくさく作ってくれて発行していました。こうして記録に残すのもいいことだし、このスタイルだと忘れ物を届けに来たり何か別の用事で学校に来たお母さんが覗いていけたりして、ボランティアの活動内容もオープンになるし気軽な雰囲気がよかったです。

 読み聞かせをすることで、こんなにも学年によってカラーが違うものかなと実感しました。
 娘の学年は、静かに聴いてくれるけどリアクションも少ない。5年生ごろからは塾疲れもあってか、読み聞かせという名の休憩時間になっていき、それはそれでリラックス効果があるならよしとするかな、と思いましたが、いくらMCがいても50分も読み聞かせって確かに難しい。だから、先生のご意見も聞きつつ、長短含めてできるだけメリハリのある選書をしていました。
 その時期の授業や活動内容に関連のあるテーマを入れつつ(校外学習の行先の歴史や地理に関する本や、給食の食材に関する本など)、
・視覚的に刺激のある本
・聴覚的に刺激のある本
・落語はマスト
(これ、江戸っ子のママは巧い)
 なんだかドライな学年の子たちを飽きさせない本選びに苦心しました。

 娘の学年で忘れられないのが、まだ3年生のころ、わたしが読み手を担当した『なっとうぼうや』。これ、歌が出てくるんです。きりんの男の子がなっとうを食べようとすると、パックの中から歌が聴こえてくるという…。

 今やこの歌も公式メロディが存在するようなのですが、そんなものなかった(知らなかった)あのとき、わたしは「サザエさん」のメロディにのっけてなっとうネバネバソングを歌ってみました。するとこれがドライ学年の心をほぐし、みんな歌い出したというちょっとコワ…いえ、ハートフルな思い出です。

 これきっかけで、わたしは毎回イロモノ担当になり、本選びの時期になると娘から「また歌って~!」とせがまれるようになりました。しかしドライっ子たちの心をあれ以上熱くすることはなかなかできず…「豆腐小僧」を深田恭子の声色でやっても響かず。

 この学年の卒業前の最後の読み聞かせは「旅立ち」をテーマに本を選び、ラストは、わたしの趣向全開エンターテイメントにさせていただきました。「世界中のこどもたちが」の写真絵本を読み聞かせして、MCが「今のこのフレーズ、みんな知ってるよね?」と言って音楽をかけ、まずお母さんたちが「世界中のこどもたちが」の歌に合わせて手話を披露。
 そして「じゃあみんな一緒に」と誘い、恥ずかしがっていたドライっ子たちも最後はみんな一緒に手話&歌で胸アツのフィナーレ。

 世界中のこどもたちが いちどに笑ったら♪

 時は流れ、この春から高3の彼ら。もう忘れてしまったかもしれないし、読み聞かせの観点からはずれていたかもしれないけど、あの瞬間こそ「世界中のこどもたちが いちどに歌ったら」だったんだと、一瞬でも感じてもらえたはずだってお母さん信じてる。

 こうしてドライっ子たちを送り出し、息子の学年に下がってまた参加していたのですが、この学年はコミュニケーションが活発。男女間も仲がいいし大人ともよく話す。そして読み聞かせとなると、ものすごい集中力で、リアクションも良好。高学年になってもそれは変わらず、読み聞かせ甲斐あるんです。こうも違うものかなと驚きました。

 結局、卒業前にコロナで休校になってしまい、最後の読み聞かせどころかすべての思い出作りが未完成で終わってしまいました。休校が発表されたとき、中3の娘も小6の息子もずっと泣いていました。

 もう読み聞かせをするような年齢ではなくなってしまい、PTA活動もコロナ前に比べたらほとんどありません。わたしはたいして教育熱心な親ではないけど、たくさんの子どもたちに本を読む機会があったことはいい経験だったと思います。
 反応はいろいろでも、子どもたちは本のことも、読みに来た親たちのこともそれぞれの目でしっかり見ていると感じられた、というお話でした。

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