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【72.水曜映画れびゅ~】"American Hustle"~ハンパねぇ演技合戦っ!~

"American Hustle"アメリカン・ハッスル(2013)は、デヴィッド・O・ラッセル監督による映画で、その年のアカデミー賞にて作品賞・監督賞を含む10部門でノミネート、ゴールデングローブ賞作品賞 (ミュージカル・コメディ部門)を受賞した作品です。

あらすじ

1979年、ラスべガスやマイアミに続くカジノタウンとして開発中のニュージャージー州アトランティックシティ。詐欺師のローゼンフェルドを逮捕したFBI捜査官のディマーソは、司法取引でローゼンフェルドを捜査に協力させ、偽のアラブの大富豪をエサにした巧妙なおとり捜査によって、カジノの利権に絡んだ大物汚職政治家たちを逮捕していく。

映画.comより一部抜粋

演技合戦とは?

「演技合戦だ!」

映画レビューを書くなかで、ついついこのような言葉を使ってしまうときがあります。それは、俳優たちの途轍とてつもなくハイレベルな演技を目の当たりにしたとき。そこに、演技を超えた魂のぶつかり合いのような闘争心を感じると、この「合戦」という言葉がピッタリくるんですよね。

例えば、2020年公開の『シカゴ7裁判』

エディ・レッドメンやマーク・ライアンス、サシャ・バロン・コーエンといった実力派から個性派まで、多様なキャストが入り乱れつつ、それぞれの持ち味が発揮される今作を観ると、「演技合戦」という言葉が頭に浮かんできてしまいます。

また、昨年Netflixにて配信され、アカデミー賞作品賞にもノミネートされた『ドント・ルック・アップ』(2021)も、圧巻の演技合戦作品。

そもそもキャストが、レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス、メリル・ストリープ、ティモシー・シャラメ…といったオスカー常連俳優目白押しの一作。そんな超豪華俳優が、コメディ全振りのこの一作に、全力でぶつかり合っている姿は、バトルの様相を呈した勢いを感じました。

そんな演技合戦と形容したくなる作品たち。そのなかでも、特に俳優たちの闘争心がむき出しとなった、壮絶な合戦があります。
それが、今回紹介する『アメリカン・ハッスル』です。

俳優たちの演技を光らせるデヴィッド・O・ラッセル

本作は、「天才詐欺師が主導したFBI捜査」という信じがたい実話をベースにしたコメディ作品。

監督を務めたのは、デヴィッド・O・ラッセル。
『ザ・ファイター』(2010)や『世界にひとつのプレイブック』(2012)の監督としても知られています。

そんな彼の作品の特徴は、とにかく役者の演技を輝かせまくること。

その証拠に『ファイター』では、アカデミー賞にてクリスチャン・ベールが助演男優賞に、エイミー・アダムスとメリッサ・レオが助演女優賞にそれぞれノミネートされ、クリスチャン・ベールとメリッサ・レオが受賞。

『世界にひとつのプレイブック』では、アカデミー演技4部門(主演男優・女優賞、助演男優・女優賞)すべてにブラッドリー・クーパー、ジェニファー・ローレンス、ロバート・デ・ニーロ、ジャッキー・ウィーヴァーがそれぞれノミネートされ、ジェニファー・ローレンスが受賞しました。

そして本作も例外ではなく、『世界にひとつのプレイブック』に引き続き、第86回アカデミー賞において演技4部門すべてでノミネーションを獲得しています。

超絶なる演技合戦

このようにデヴィッド・O・ラッセルの作品は、往々にハイレベルな演技の魅せ合いが繰り広げられる作品なのですが、本作はそのなかでも一際「演技合戦」という言葉が似合う作品なんですね。それは、劇中の超個性的なキャラクターたちに対して、まさに適材適所といえるキャストが当てられているところにあるといえます。

クリスチャン・ベール

役作りのための過度な体重の増減がいつも話題となる、稀代のカメレオン俳優クリスチャン・ベールが、本作で主演を務め、天才詐欺師に扮しました。

その異常な役作りは例の如く、本作でも激太りしてみせたベール。この一年前に公開された『ダークナイト ライジング』(2012)でバットマンを演じた面影など跡形もございません。

もちろん、素晴らしいのは容姿の変貌ぶりにとどまらず。クールなイメージのあったこれまでのクリスチャン・ベール像とはかけ離れた、身勝手でクズで、しかもハゲという性格も外見もダーティな姿を、凄みのある演技で見事体現しています。

ブラッドリー・クーパー

そんな詐欺師とタッグを組むことになったFBI捜査官役として、くるくるパーマを纏ったブラッドリー・クーパーが出演。

この二人が、まぁ~相性最悪なんですね(笑)。四六時中ケンカし合っているようなもんです。そんな二人のギスギス感を、クリスチャン・ベールとブラッドリー・クーパーという演技モンスター同士のバトルで、見事に作り出しています。

エイミー・アダムス

そんな二人の仲介役として活躍するのが、こちらもオスカー常連の名優エイミー・アダムス。ベール演じる天才詐欺師の愛人役を務め、もう一人の主演ともなっています。

子どもみたいにケンカする二人を、エイミー・アダムスらしいサバサバとした演技で仲介。その一方で、二人との三角関係にも縺れるという微妙な立ち位置でもあり、そんな本作のキーマンを、バランサーとして上手に演じていますね。

ジェニファー・ローレンス

そしてなんといっても、この映画の見どころはベール演じる詐欺師の妻役を演じたジェニファー・ローレンス

役としては30代中盤くらいのおばちゃんで、それを当時20代半ばのローレンスが演じるということなんで、それだけ聞くと「いや、無理があるっしょっ!」と思うかもしれません。

しかし、このジェニファー・ローレンスの演技を観ると、そんなことどうでもよくなります。
とにかく勢いが凄まじい。終始しゃべりっぱなしのマシンガントークとその爆発力は絶大で、オスカー受賞級の名演、というか怪演です。それはもう、ジェニファー・ローレンス史上最高の演技といっても過言ではないくらい。

特に圧巻なのは、「掃除の名シーン」
ジェニファー・ローレンスが、ただただムカつくながら掃除しているだけのシーンなんですが、これが…もう…凄すぎ…。

「合戦を制し天下を獲るのは私だ!」と言わんばかりの演技に、ただただ圧倒されました…。

そのほか、ジェレミー・レナーなども出演。
また、ちょい役のカメオ出演でロバート・デ・二ーロを出演していますが、その登場シーンも、この演技合戦にピリッと異なる緊張感を与える印象深い一幕となっています。

デヴィッド・O・ラッセルによる、新たな演技合戦の開幕か…?

ということで今回は、超豪華俳優による多種多様な演技のぶつかり合いが堪能できる作品『アメリカン・ハッスル』を紹介させていただきました。

そんな本作で監督を務めた、演技合戦映画量産の名匠デヴィッド・O・ラッセルの最新作が、公開予定ともなっています。

そのタイトルは、"Amsterdam"

そのストーリーの全貌についてはまだ明らかにされていませんが、撮影自体は終了しているようです。

出演には今回紹介した『アメリカン・ハッスル』以来のタッグとなるクリスチャン・ベールをはじめ、マーゴット・ロビー、ジョン・デヴィッド・ワシントン、アニャ・テイラー=ジョイ、ロバート・デ・二―ロなど超豪華キャストが集結。また、テイラー・スウィフトや今話題のクリス・ロックなども出演するとの噂もあり、今度はどんな演技合戦映画を作ってくれるのか、今から楽しみでなりません。

一応、予定通りいけば今年の11月にアメリカ公開。気が早いですが、来年のオスカーの有力候補になる可能性大と言えますね。
日本公開は年明けごろになるでしょうか。何はともあれ、早く観てぇ~。


前回記事と、次回記事

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来週は、アメリカの人気歌手ビリー・アイリッシュが、インタビューで常に一番好きだという映画"Fruitvale Station" フルートベール駅で(2013)について紹介させていただきます。
お楽しみに!


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