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幻惑社会

最近の女性ファッション誌ときたら、表紙に男性の人気俳優やアイドルグループを起用することが着実に増えているなと感じる。

雑誌のタイトルはこれまでと変わらないのに、視覚的に一瞬、脳が戸惑う。

さらには、最近流行っている “推しメン” とやらを意識してのことなのか、各誌はこぞって若手男性タレントのインタビュー特集とか、売り出し広告的な記事で紹介する。

女性誌の紙面に男性が登場することがおかしいわけではないけれども、純粋に女性向けファッションの傾向や欲しいなぁと憧れるアイテムを見つけたりしたいのに、人気の若手男性を載せれば購読者数が増えるだろうという、出版側の意図が見える。しかも、どの女性ファッション誌においてもそういった企画があり、マンネリ化していることは否めない。

また、世の中には “推し活” などしていない私のような人間もいる。現代においてその存在はマイノリティなのかもしれないが、それこそ「多様性」を尊重していないのではないかとさえ思う。

昨今、家電や洗剤のCMに男性を起用したりするのも「家事≠女性」を意識してのことは言うまでもないが、どの商品CMも、逆に男性に偏り過ぎてやしないだろうか。

そして、社会全体が性の多様性を謳いながらも政府は「女性活躍推進」とか「男性育休の推進」とか、「男女」の課題を掲げているちょっとした矛盾。

多様性ってナニ?
ナニ基準の多様性?

当社においても「サステナビリティ経営」を標榜しているにも関わらず、(有価証券報告書で開示しているとおり)男女の賃金格差は甚だしいし、また、時間外労働の課題があるがために「健康経営優良法人認定」や「くるみん(子育てサポート企業)認定」を受けられないのが実情だ。

そういうことに向き合おうとしない状況で、先日、サステナビリティ担当役員が「当社のサステナビリティ情報を充実させるように」との指令が下りてきたので、私は思わず従業員代表という立場も含めて抵抗の意を表した。

社員の心が豊かでないのに、外向けには「サステナビリティ経営を推進しています」などと公言することが健全なわけない。

そんな私に対して役員は、「君の言うとおりであり、そんなことは理解している」としながらも、「それとは別に、これは私の指示だ」と強行姿勢。

は?
ちっとも理解してなくない?

誰のための多様性?
誰のためのサステナビリティ経営?

そうした矛盾や不条理を受け止められない私は、さりげなくスルーして、とりあえず「承知しました」なんて、社交辞令であっても絶対に言うもんかと心に誓うのだった。(そののち、上司が私の肩を持ちつつフォローしてくれた。)

世の中の風潮に幻惑されてしまう毎日。

なんと我々は、混沌とした社会に身を置きながら、聞こえのよい言葉に慣れてしまっていることだろうか。

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