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中目黒の桜

都内有数の桜の名所と言えば、中目黒にある、目黒川の桜ですよね。

小さな頃、中目黒は特に何もない地域で、あえて行くような場所ではありませんでした。東横線の急行も止まり、渋谷にほど近い街で日比谷線も通っているのに、通り過ぎる街以上の認識を誰もが持っていなかったと思います。

やがて代官山がファッションの街になるに従って、その波はいつの間にか中目黒にも波及して、いつしかお洒落な街に定着していきました。中目黒を舞台にしたドラマが放映された事も影響していたと思います。

そしてその頃から、目黒川の桜も注目されるようになっていきました。しかし地元の人間としては、人が多くなって困るなあ、くらいであまり特別な感情はありませんでした。

しかし無関心だったはずの僕も、その桜の下で恋をしてから、中目黒の街と桜が特別なものになってしまいました。小説「鎗ヶ崎の交差点」のモチーフとなった恋のせいで。

小説には桜のことはあまり書きませんでした。なぜなら、小説に書けないほど、彼女との思い出が桜の下にあり過ぎたから。第二稿を書き直している今も、桜の下での思い出を書こうとすると、過去の思い出に苛まれてキーボードを打つ手が止まってしまいます。

実はその恋が終わってから、僕はあまり中目黒の街に近寄っていません。小説の主人公と同じように。でも今日の朝、用があって中目黒の街に久しぶりに行くことになりました。

坂を降りて、目黒川にたどり着いてしまった時、僕は勇気を出して桜の木を見上げました。

まだ満開ではなかったけど、川を包むように立つ桜の木は相変わらず美しくて。でも、やっぱりとても切なくて。

夜になると、桜はライトアップされ、美しい桜を誰もが楽しんで見上げることでしょう。そして今年も、ピンク色の花びらが舞う中で、様々な物語が生まれるのでしょう。

皆さんの物語がハッピーエンドであることを心から願っています。僕は、まだ中目黒の桜を楽しめないから、切なさを噛み締めながら筆を走らせようと思います。

でもね、週末に代々木公園にお花見は行くんですけどね。そっちの桜は大丈夫みたい笑

僕は37歳のサラリーマンです。こらからnoteで小説を投稿していこうと考えています。 小説のテーマは音楽やスポーツや恋愛など様々ですが、自分が育った東京の城南地区(主に東横線や田園都市線沿い) を舞台に、2000年代に青春を過ごした同世代の人達に向けたものを書いていくつもりです。