虐待犬ナツ 〜幸せな犬生へ〜
人からの虐待を受け、完全に心を閉ざしてしまった犬にアナタの人生の最後を看取ってもらえたら人として、どんな気持ちになれるんだろうか?
第二話
保護センターでの佳子とナツの生活が始まった。
保護センターには三十匹近い犬と他にも色々な事情を持つ動物達が暮らしていた。
他の犬達が物珍しそうにナツの周りに集まり尻尾を振りながらナツの匂いを嗅いだりしナツを歓迎してくれているような雰囲気だった。
しかし、ナツはただ震えるだけで仲間達と目すらも合わせる事が出来ていなかった。入院の間も立ち上がる事もなく餌を食べる時も便を出す時も、ずっと丸まったままでずっと震え続けていた。
山岸佳子「ナツ、みんな同じ生活をしていく仲間達だよ」
佳子はナツに向けて周りに集まる仲間達の名前を紹介していった。
ナツは全く周りを見る事はなく、ただ震えて怯えている様子が続いていた。
夜ご飯の時間になり職員達がみんなに餌をあげ始め周りの動物達は一目散に餌に飛びつき取り合いの喧嘩なども始まっていた。
山岸佳子「ナツご飯持ってきたよ!一杯食べてね」
佳子がナツのゲージの中に餌を置いても全く反応はなかった。そして目線はずっと同じところを見続け、そのまま消灯の時間を迎えた。
山岸佳子「ナツご飯は食べれたかな?みんな寝る時間になったけど、ゲージの中にご飯入れとくから朝までに食べてね。おやすみ」
これまでの間に、ナツが餌の匂いを嗅ぐ仕草や水を飲むような様子が一度も見る事が出来なかった。
2日目の朝
みんなの朝を職員達は見回っていた。
山岸佳子「ナツ、おはよう。昨日は寝れたかな?ご飯も食べてなさそうだね。」
水もほとんど減っていなく便も出ている様子は全くなくナツは丸まったまま、一点だけを見続けていた。
朝の職員会議が始まり、各々が担当している動物の体調確認の打ち合わせが始まった。
山岸佳子「昨日から来たナツは水も飲まず、ご飯にも全く手をつけていないです。臭いすらも嗅がないので今日もこの状態だと何か対処を考えないとナツの健康面が危ないかもしれません」
職員「ジャーキーとか匂いの強いものを持って行ったらどうでしょう?」
職員「大好物が分かればなぁ、とりあえず色々な物を与えてみてはどうだろう?」
施設長「今日も一切食べないようならサプリメントで栄養をとらせるしかないかな。とりあえずは今日の夜まで色々と試してみよう」
この日佳子は1日ナツに付きっきりになり、ナツが興味を持ってくれるような事を探し続けた。
色々な食べ物を与えても全く反応もなく、全く動く事もなかった。
山岸佳子「所長、今日から私が施設に泊まってずっとナツと居ては駄目ですか?」
所長「構わないが、山岸は大丈夫なのか?」
山岸佳子「ずっと一緒にいなきゃナツは心開いてくれないと思うんで、私はずっと一緒にいたいです。仕事には支障出さないようにちゃんと生活しますから。」
この日から佳子とナツはずっと一緒に生活をする事になった。
しかし、ナツが佳子の与えた餌を食べる日は来なかった。無理矢理サプリメントを口に入れ飲み込ませる、そんな日々が1ヶ月以上続きナツの体は痩せ細り骨が浮き出てしまっていた。
山岸佳子「ナツ、ご飯食べないと元気出ないよ!今日こそは食べようね!」
佳子がいつものようにナツのゲージに餌を置いた時だった。ナツは餌の匂いを嗅ぎペロリと餌を舐めた!!
山岸佳子「!!!ナツ、今舐めた??」
ナツが初めて餌に興味を示してくれたように見えた!
その後も匂い嗅ぎ、舐めていた。
少しずつではあったが、餌を食べるようになってきてくれ、少しずつではあるが佳子への信頼感が出てきているように見えてきた。
しかし立ち上がる事は一切なく、ずっと一点だけを見続け、周りの動物、佳子の事を見る事はなかった。こんな状況でも佳子は他の動物の世話をし、時間がある時はずっとナツの近くにいて24時間ナツと寝食を共にし一生懸命に介護していた。
山岸佳子「ナツ、ごめんね。私達人間のせいでこんな想いさせちゃって。でも私はナツが元気になってくれるまで頑張るから。ナツも他の子達みたいに元気になろうね」
第三話へ続きます
「ど・ヤンキーホームレス中村君」
2018年11月7日。
東京都府中市の伝説のホームレスヤンキーは、
34歳の若さでこの世を去った──。
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実際に暴走族だった作者の体験をもとに書かれた血湧き肉躍る青春フィクション。
最後まで見て頂いて本当にありがとうございます! 皆さんに喜んで頂ける物語を今後も頑張って作っていきたいと思います!宜しくお願いします