近況雑記:映画2編「ナイトブック」「メタモルフォーゼの縁側」
ぼやぼやしていて気が付いたら、もう7月のおわりのほうになっている。
先日、小川洋子さんの短編集を読んで、おおっとなってから、
どれくらい経過したかな。
あのあと、吉本ばななさんの「鳥たち」も読み始めた。
同時並行で、奥平亜美衣さんがまた気になって、本を集めて読んでいて、そっちへ飛んでしまった。
で、気づいたら、この時期になっていた。
この間、なにをしていたのか???。
お遍路は、いつのまにか八十八番札所まで行き、結願した。
なんだかんだで、家族に付いていく感じだったので、私が意識的でなくても廻れてしまったようだ。
そのほかには、
いろいろなツールを使いながら、小説の構想を練ったり、メモを書いたりしていた。「書けない」意識が強い私にとっては、じりじりと牛歩戦術のようなものだ。
なので、その小さな動きをカウントしたら、小説を書いてるといってもいいかな、と。
そうそう「物語つくり」というテーマだと、
この間に観た映画にヒントがあった。
映画から励ましやインスピレーションをうけとった。
一つは、ネットフリックスの映画「ナイトブック」.
これは娘と観るので選んだ映画だったけれども、
偶然にも、主人公を観ていて、自分の子供のころの感覚を思い出した。
主人公は、空想好きで、怖い話を作っては自分のノートに書き溜めている。
たった1頁くらいの短いお話なのだけど、ちゃんとテーマがあって、メッセージも感じられる。
映画の中では、魔女に捕まってしまい、生き抜く条件として、その物語を毎晩1つずつ魔女に話すことになっている。
男の子の手書きのノートや、
とにかく思いつくままを語りながら、話の筋立てにしていく様子が、
まさに私も子供のころ楽しんでいたお話作りと同じだった。
「そうそう、これで楽しかったんだ!」
「これでも良かったんだ!」
と原初の体験を思い出した。
物語が好き、絵本が好き、お話が好き……という想いは、
もっとシンプルな楽しみから始まっていたはずだったんだと。
書く人、表現が好きな人にとってはそういう視点で楽しめるし、
単純に、子供向けホラーテイスト映画なので、
ドキドキワクワクとしても楽しめる映画だった。
あと、インテリアや小道具など、世界観や演出もなかなか手が込んでるので、観てて参考になった。
それから、もう一つ、すごく感動したのが、
映画『メタモルフォーゼの縁側』
『ナイトブック』が、小学生時代だとしたら、
『メタモルフォーゼの縁側』は、まさに高校時代を彷彿とさせる話だった。
宣伝によれば
「17歳の女子高生と75歳の老婦人。 二人をつないだのはボーイズ・ラブ。 年の差58歳。最初の青春、最後の青春。」とのこと。
地味で、何一つ不思議な設定はないけど、
切なくて優しい、繊細なからみが、
美しいレース編みのように小さく小さく描かれていく。
小さな設定が重なり合って、
主人公の女の子・うららの葛藤と成長、
75歳の雪さんの暖かさと優しさが、うまいことハーモニーになるんですよね。
なんともいえない。
新しい描かれ方、新しい語り口。
ラブスートリ―じゃないのに、
そして、ど真ん中の青春成長物語でもないし、
地味でほんとにゆっくりしか進まないけど、
人と人との交流をこれほどうまく描いてる作品に出合ったのは、
久しぶりだった。
感動してしまって、何度か目頭熱くなった。
けど、夫が隣にいたので、我慢した。
大好きなものがある。
でも、好きなものを好き、と人に言えない。
だけど、本当に純粋に好きで。
一人でも、ずっと好きだったその世界を
やっと共有できる人と出会えた喜び。
好きなことがあるって、やっぱりいいなと思った。
主題は……
友情、といえば、友情。うららの成長物語といえば、成長物語。
もう一つのテーマとして、
自己表現、表現することって読み方もできる。
私はそちらにも共感してしまった。
うららと雪さんは、
BL同人誌を作って、コミケデビューしようとする。
しかし、紆余曲折あって、すんなりうまくいくわけではない。
それでも、とにかく形にすることの大切さを、
リアリティをもって描いている点がよかった。
絵もストーリーも上手な同人作家さんがたくさんいる中で、
初めて作った同人誌を持って、
出店するのはすごく緊張するし、
劣等感のあるうららには、ハードルが高いことだったろう。
それでも、とにかく自分で一からストーリーを書いて、絵もつけて、
同人誌を作ったのだから、えらいよ!って
私は思った。
映画の途中で、
挿入される漫画のストーリーも、
やがて枠物語のように、メインストーリーに流れる情感と重なっていく。
その構造もうまい。
いま、こうして書いていても、良い映画だったなあと思う。
非常に刺激になったし、なにかを得た気がした。
原作漫画も読んでみようかなあ。
映画を見ていて、
私も高校時代に、友達と二次創作や同人誌らしきものを作って、
イベントに出たことを思い出した。
その頃は、ただただ好きで、ただただ物語が書ければ嬉しかったし、
コミケなどで、
美しい絵の同人作家さんの本を買ってきては、
その漫画の世界に浸っては、良い気分になれて幸せだった。
漫画の行間や描かれたイラストからにじむ何かを、味わっていた。
映画のなかの雪さんのように、
大好きな漫画の、きれいな絵、すてきなストーリーで、
うっとりと別の世界にいけた。
そういう単純だけど純粋な思いを、知らぬ間に忘れていたんだ!
と気づいた。
ほんとうの原点は、そこだった、と。
そんなこんなで、
映画をみたり、小説を読んだり、物語を思いうかべたりして、
ある意味で、心のリハビリをしていたような1か月だった。
勉強しすぎて、凝り固まっていた自分の心。
それを自覚して、
ほぐしてほぐして、
本当の、元の自分に戻っていってる……そんなこの頃です。
私にとって、
物語や小説で一番何が好きかというと、
登場人物の繊細な心の動きだったと、
思い出されてきた今日この頃です。
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