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【エッセイ】ゆで卵と僕、それはある種の人生論。

2021/2/11

 僕はゆで卵が嫌いだ。憎んでいると言ってさえいい。

 今朝、朝食を近所のファミリーレストランで食べた。ツナサンドのモーニングセットを注文した。
 僕はツナサンドが好きだ。そこにあるツナの旨みが好きだ。トーストされたパンのサクッとした食感、コーヒーの匂い、そんなものの何もかもが大好きなんだ。

 そのモーニングセットはそこまでは完璧だった。気持ちよく晴れた水曜日に女の子とピクニックをするくらい100%の完璧さを備えていた。
 しかし、モーニングセットには問題があった。ゆで卵がついてきてしまっていた。まるでピクニックの女の子の両親がついてきてしまったみたいに邪魔な存在だった。

 しかし、僕は食べ物を大切にする男。環境問題に敏感な正義感溢れる良い男。出された物を残すことはできない。
 ツナサンドを平らげた僕は仕方なくゆで卵を手に取った。テーブルの角に打ち付けて殻にヒビを入れる。そのヒビに親指を優しく添えて殻を剥き始めた。細かく割れる殻、殻にくっついてボロボロと崩れ落ちる白身。震える指先、溢れる涙。

 そう、僕はゆで卵の殻を剥くのが苦手です。壊滅的に下手くそで、卵を壊滅させちゃいます。
 今日なんて結局、黄身しか食べられませんでした。口の中、ボソボソ。水分なくなった。

 僕は不器用なんです。大抵のことをうまくできません。不器用な人生を送ってきました。
 人付き合いは得意じゃないから友達は少ないし、仕事だって要領良くできないし、考えるのが遅いから自分のやりたいことに気付くのが遅れて回り道ばかりしている人生です。毎日、自信を失くしてしまうことばかりです。

 そんな僕でも生きていかないといけません。お裁縫しながら針を指にチクチク刺しちゃって絆創膏だらけの指になっていた、あの晩の夜なべしていた母のように。不器用なりに生きていかないといけないのです。

 不器用は不器用なりに生きていこうと思います。きっと人生において大切なのって器用さとは関係ないところにあるはずだから。
 友人が多くなくたって親友がひとりだけいてくれればそれだけで素敵なことだし、仕事も要領良くできなくても一つ一つ丁寧にやることが大切だし、夢を見つけて頑張れば年齢なんて関係ないと信じています。自信がなくても他者を信じる誠実さがあれば良いと思っています。

 だから僕は歌うんだよ 精一杯でかい声で
 
 それではみなさん、良い一日を。

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