見出し画像

疑問を中心のマネジメントへ 〜考える型社員育成の考え方〜

疑問を中心とした指導に変わっている。
ある時、お付き合い先の社長から教えて貰った野球のコーチの言葉である。最近の部活での指導は非常に難しいらしい。指導という名の暴力はリスクが高く、特に保護者が見学をしている際などは、そうした指導はすぐに問題になる。厳しい環境の中で、強い身体と精神を鍛えるために、コーチ自身も選手に厳しく接する事は必要かもしれないが、時代が変わってきたとも言える。

疑問を中心とした指導とは?

「より高いレベルに向上するためには、もっと素振りをした方が良いと思うが、どう思う?」コーチが気になる点があったとしても、まずは本人の意思を確認し、納得した上で練習に取り組んで貰うように指導する。コーチが上で選手が下という考え方ではなく、同じ目線に立って指導することが求められているようだ。

これは企業におけるマネジメントでは重要な視点だと感じた。組織は階層型で形成され、上司と部下という関係性が生まれる。上司は部下を育成するという役割を担い、ここには上下関係が生まれる。丁寧に接する上司もいれば、横暴とも思える指導をする上司もいる。ただ、上下関係を明確にして、上司が絶対的な組織が今の時代に合わない。。。と言いたい訳ではない。組織には意味があり、その時に必要となるマネジメントの方法がある。

人材層とマネジメントの類型

組織は「いやいや型」から「まじめ型」、そして「考える型」「長所伸展型」とマネジメント別にポイントがある。詳しい説明は、以前書いたこちらの記事を読んで欲しい。

私が接してきた会社では「まじめ型社員」が中心となっているケースが多いと感じる。この場合のマネジメントでは、上司(または会社の方針)の指示に従ってまじめに仕事をして貰うことに重きを置く。まじめ型の社員が多い会社の場合は、ビジネスモデルが成立が前提となるが、そうした場合は、指示通りにまじめに働いて貰う事で業績が上がるからだ。

難しいのは採用の失敗から、ビジネスモデルが固まっていないのに”まじめ型社員”ばかりになってしまったケースやビジネスモデルが固まっていて、まじめに働く社員向けのマネジメントで良いのに、個人を尊重する様な流行りのマネジメントを導入してしまうケースである。いずれも上手く機能せず、常に社長は悩みを抱えることになる。

トップが引っ張る組織(いやいや型社員)から、モデルを形成して組織で成長する(まじめ型社員)段階。第二創業期的に考える組織(考える型社員)を再編し、新たなモデルに移行する段階。複数事業が同時並行的に展開する(長所伸展型社員)様な発展のタイミング。それぞれに必要なマネジメントは、組織の作り方も含めて違う。今がどういうタイミングなのか。それを俯瞰的に理解しておく必要がある。

考える型に切り替えるタイミング

さて、一定のビジネスモデルでまじめ型社員を中心に成長してきた企業にとって、大きな課題は次の成長をどう創造するかにある。当初は社長や優秀な幹部社員による少数精鋭でモデルを形成し、そこで確立したモデルを組織で対応するという形で成長してきた。ただ一つのモデルだけでは成長の限界があり、次の成長のために新たな挑戦をする必要がある。

しかし、組織にはまじめ型の社員ばかりになっている。それまでの正しいあり方が、場面が変わることでボトルネックになるという典型的な事象が発生する。この頃の社長の愚痴は決まって「うちの社員は考えられない。。。」である。それを打破するために、様々な研修や社内でのアイディア会議など、考える機会を導入して意識転換を図ろうと考える。

しかし、こうした突発的なイベントや研修では、人の習慣を変えることは難しい。考えずに、目の前の仕事をまじめに対応するという習慣は、その会社が社員にすり込んだことなので、それを払拭するためには時間がかかる。特に階層型組織の場合、中間管理職までがまじめ型社員になっているケースが多い。社歴も年齢も重ねている社員の習慣を変えるためには、日常的に接する機会での対応の変化が重要になる。

疑問を中心としたマネジメント

そこで冒頭の疑問を中心とした指導だと感じた。実はこれまでは、第二創業期に向けた新設部門を作り、新たに採用を行う方法が良いと考えていた。しかし、人口減少の日本において、採用強化型の組織再編は難しくなる可能性が高い。現有戦力の中で、企業の成長ステップに応じた適応力が必要になる。そこで”考える癖付け”のための、疑問を中心としたマネジメントは、新たな組織文化を形成できるのではと感じる。

「部門ミッションを達成するために、営業接点件数をさらに増やしていく方が良いと思うが、どう思う?」上下関係ができている組織の場合、最初は「分かりました。すぐやります」となってしまう可能性もあるが、「いやいや、〇〇さんはどう思うか、教えてくれる?」と重ねて聞く事で、考える機会を与えることがポイントになる。

これまでは疑問を挟むことなく、上の指示をまじめに対応してきた社員は、最初は戸惑うはずだ。上手く考えをまとめられなかったり、答えに窮することが多いと思う。(試しに、自社でも質問をしてみて欲しい。「どう思う?」と聞いたのに、「分かりました。すぐにやります」の様な回答になっている場合は、まじめ型社員の構造になっていると考えた方が良い)

”考える”は習慣であり能力ではない!

考えるというのは習慣である。能力ではなく、習慣的に考える機会が与えられると”考える”という行動は身に付く。良い答えが出せるかどうかは別の問題だが、一度疑問を持ち考えるという事はできるようになる。第二創業期的に新しい事業を展開する場合は、これまでの成功パターンも否定する必要も出てくる。これまでのモデルの全てに疑問を持ち、新しい成功に向けてモデルを再構築する必要がある。その場合に必要な人材は、疑問を持ち考える習慣を持った社員である。

考える型社員を育成する、というのは難しいと考えていたが、野球のコーチからヒントを貰えた。考えるというのを能力ではなく習慣とすると、その思考習慣を身に付けて貰う事は可能である。良いアイディアを出せるかどうか。これは習慣ではなく、才能や能力といった要素が絡む可能性があると感じている。ただ、組織全体として一つの方向性を示せる人がたくさんいる必要は無い。むしろ疑問を感じ考え、たくさんのアイディアが出る組織になることで、その選択肢は広がっていく。

完成されたビジネスモデルを見せられると、素晴らしい発想で創造されたものだと勘違いするケースがある。そのモデルの初期のアイディアは、偶然に発見したり、たまたま出会っているケースが多い。その偶発的なアイディアとの出会いの場を作るためにも、多くの社員が考える習慣を身に付けることが重要になる。

#経営 #ビジネス #組織 #マネジメント #中小企業 #採用 #社長


いいなと思ったら応援しよう!