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(本)自分の頭で考える読書 変化の時代に、道が拓かれる「本の読み方」

再読。
自分が今注目している一人が、voicyでbook cafeという番組を担当している荒木博行さん。
一般企業に勤務した後、グロービス経営大学院の講師として経営戦略等の授業を担当していたこともあるそうで、今は学びデザインという会社の代表をしている方。

book cafeという番組では、毎回色々な分野の書籍を取り上げて紹介しているのですが、本の読み方、というか捉え方が非常に面白いなぁというのが第一印象でした。芥川のトロッコを現代社会に当てはめてみたり・・・こういった縦横無尽に具体抽象を行き来できる知力と豊富な知識が魅力。
そんな荒木さんが自らの読書法について語った一冊。
こういった読書術というと、どうやって記憶に残すか、どうやって実務に活用するかという観点から論じられることがほとんどですが、そういった意味では本書は異色で「本との向き合い方」に焦点が置かれているのが特徴。

備忘録がてら、ポイントを数点。

1.本を読んだら抽象化をわずれずに
読書に限ったことではありませんが、昨今はグローバル化が進み、世の中の変化の速度と変化の振れ幅がかつてないほど大きくなってきています。同時に、先が見通せない時代、ともいって良いかと思います。
例えば、今猛威を奮っている新型コロナウイルス。交通手段が限定的であった時代には、おそらくこんな急激に世界的な流行とはならなかったでしょう。徒歩でしか移動できない時代に、仙台で流行した病気が仮に東京まで伝わるとしても、すごく時間がかかりそうなのは想像に難くないですね。
こういう変化の大きな状況においては、N=1の具体的な経験が再度繰り返し起こることは極めて稀。荒木さんはサッカーと野球とで例えられていましたが、サッカーしかしてなかった人が、突然野球をせよと言われるのと同じような変化の波がきている。そういった時に、サッカーの経験を野球に生かしていくためには、「抽象化」という行為が必須というのが本書の一番の主張です。
・シュートの蹴り方、パスの出し方
・各ポジションの動き
といったものは応用が効かなそうですが、あらかじめ抽象度を高くし、
・チームスポーツでの戦力の向上を図るには
・1年という単位で継続してパフォーマンスを出すコツは
といったものは、応用が効きそうですよね。

「つまり、どういうことか?」と自分に問いかける癖をつけましょう。

2.問いを持つ・問いを育てる
目の前にある本を全て記憶し、内容全てを活用することは基本的に不可能です。となると、本の中から自分にとって重要となる・必要となる情報をうまく掬い取ることが大切になります。そんな時に大切なのが、問いを持って読書にあたること。
目的を持って読むべし、というのは類書でも言われていることで、何より大事なことな気がしてます。
本書でも、問いを持つ・抽象度を高めることのイメージを持てるよう例示がなされており、とても分かりやすかったです。

例えば、「上司が自分の提案をちゃんと受け止めてくれずに、頭ごなしに否定ばかりされる」ということで悩んでいる入社3年目の田中さん。
その悩みをそのまま抱えて本屋に行けば、「会話術」「コミュニケーションの教科書」みたいな本がターゲットになる。
しかし、自らの問いを育て(抽象度を高め)「他者を理解することは可能なのか」「他者とは何か」「理解するとは何か」というレベルまで抽象化できると、多くの本が”ヒント”になる。

といった主旨のことが書かれていて、目の開かれる思いがしました。
多分、ほとんどの人は目の前の具体の問題解決ばかりに走ってしまいがち。(自分含む)人によっては、ビジネス書のオタク・ノウハウコレクターとなりかけている人も時々見かけます。

世間的に、より早くより多くの情報を入手し活用することが是といったような空気感があります。でも、上の問いの例のように、目の前の具体的な問題の答えを具体のレイヤーだけで追い求めていては、世の中の多くのヒントを見落としてしまいます。
数を追うこと、たくさん読むことより重要なことがあるはず。
そんな言葉も触れられていて、もっと自然体で読書に臨もうと思わせてくれる一冊でした。

文末の推薦図書コーナーもお勧め。
芥川を茶川と呼んだ同級生のあだ名が茶川になった話はどうでもいい・・笑

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