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能登半島地震の報道を見て思ったこと〜バイアスとの戦い

1/1の能登半島地震でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りすると共に、一日も早い復旧・復興を願っています。
地震当日は東北地方におりまして、それでも長いなと感じる揺れ、テレビから流れる大音量のアラームが今も記憶に鮮明に残っているところです。

小生、大学の学部・修士、そして社会人になってからの博士課程もたまたま防災に関連する分野に身を置いていたこともあり、今回の能登地震のような歴史的にも大きなイベントに遭遇すると、ちょっと他人とはことなる観点で見てしまう癖(職業病?)があるようで、今回も知人・友人との会話で思うところがあったので、何かしら皆さんの気づきにつながればと思ったので、つらつらと書いてみます。

人間は基本的に自分を客観視できない

夫婦に
「家事全体を100とすると、自分はどれくらいやってると思いますか?」
という質問を投げかけて得た回答を、妻分+夫分足し合わせると大半の場合100を超えるという笑い話があります。

他にも自分の容姿を100点満点中で採点して平均をとると、平均値として示していた50点を大きく上回ったり(つまり、多くの人は「自分は多少なりとも他の人より容姿が優れていると思っているということ」)、学業や性格の面でも同じような傾向があるとか。

これらの話を統合すると、人は基本的に「自分は他の人より優れてるし、よく働いている」と勝手に?思い込む性質が備わっている、と言えそうです。
バイアス、というやつですね。

日常生活に支障のないレベルであれば、自己肯定感を維持する観点から、こういった「根拠なき自信」を持つことも悪くないのかなと思います。

一方、防災という観点から見ると、このバイアスが悪い方に作用してしまいます。

自分だけは大丈夫という思い込み

3.11地震津波の際の分析により、津波の避難警報が出ているのに逃げず、それにより命を落とした方が一定数いることが明らかになっています。
これは、上に示したバイアスの一種、正常性バイアスというもので簡単にいうと「自分だけは大丈夫」と思い込んでしまうもの。

能登地震や3.11地震のレベルの災害を後から振り返ると、逃げないなんてバカだと思ってしまうかもしれませが、少し胸に手を当ててみて考えてみると、自分自身もこの正常性バイアスに毒されていることが良くわかります。

・自分だけはコロナにかからないだろうと少しマスクを外してしまったり
・自分だけは大丈夫だろうとインフルエンザの予防接種をサボってしまったり
・自分だけは・・・

と過去を振り返ってみると、楽観的に判断して、結果幸運にも何もトラブルがなかったというケースが決して少なくないことがわかります。

テレビでの鬼気迫る注意喚起

「早く逃げてください!!」
「3.11地震の時を思い出してください!!」
「今すぐ、命を守る行動を取ってください!!」
けたたましいアラーム音とド派手なテロップに、アナウンサーの鬼気迫るアナウンス。
最初は
「恐怖心を煽る報道だな」
と思いつつ、
「もしかしたら、東日本大震災の時の教訓を生かして、行動を促す為にわざと恐怖心を煽っているのかな」
なんてことを考えていました。
後々調べてみると、東日本大震災後の振り返りで避難してもらうための報道のあり方についても議論されていたようで、その結果を踏まえての今回の報道だったそう。
津波の到達は早かったですが、津波で人的に多いな被害が出なかったことはもしかしたらこういった報道の効果も大きかったのかもしれません。

一方で、自分の娘(3歳)は報道を見て半分パニック状態。
普段一人で行くトイレも、怖いといって同行を求められたりで、多少なりとも影響してるのかなと思ってみています。
特に感受性の高い幼少期にああいったセンセーショナルな報道が悪影響を及ぼさないか、というのは子を持つ親としてはちょっと心配になるところでした。
(といっても、人命には代えられないので今回の報道を批判するつもりは毛頭ありませんし、立派だったと思います。)


補足になりますが、こういう恐怖心を煽ることにより行動を促す方法は、ただ恐怖心を煽ればよいだけではないのが難しいところ。
東南アジアでは、喫煙者を減らす目的にタバコのパッケージに真っ黒い肺の写真が印刷されててびっくりした記憶があります。
しかしながら、あまり目立った効果は得られていないそう。
情報の受け取り手側に「今更行動を変えても無理だ、意味ない」と思わせてしまうことが原因の一つと言われていますが、人間は合理的じゃないな〜と自戒の念もこめて思うところです。

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