なるたけ家から出ずに小説家になる方法〜千葉からほとんど出ない引きこもりの俺が、一度も海外に行ったことがないままルーマニア語の小説家になった話
タイトルの通り、済東鉄腸さんがコミュ障を拗らせて家に引きこもり、さらにクローン病とという難病にかかりながらも、ゼロからルーマニア語を勉強し、ついにルーマニア語で執筆・現地で発表までに至る流れがユーモラスな筆致で書かれている作品。ちなみに、クローン病とはこんな病気らしい↓
想像はできるものの、本当に病気にかかった人じゃないと経験し得ない苦しみ、大変さがある。生まれつきは生まれてつきでしんどいだろうが、ある程度健康状態を維持してきて、そこから不自由・生活の制限がかかるような病気になった場合の大変さもあると思う。
鉄腸さんはクローン病について
短い文章ですが、その大変さがよく伝わってきます。
さて、その鉄腸さんはどうやってこんなルーマニア語で小説を書き、このような自伝まで出版するに至ったのでしょうか。
詳しくは本書譲るとして、
・超内向的性格により、大学卒業後引きこもる
・引きこもりつつも、なんやらねばと言う思いは強く、大学時代からの継続で映画評論を書き続け、「キネマ旬報」などの映画雑誌に寄稿するライターとして活動
・ひきこもり生活のさなかにみたルーマニア映画で、雷に打たれたような衝撃を受ける
・ルーマニアを中心とする東欧文化に傾倒。その後ルーマニア語で小説執筆や詩作を積極的に行い、現地では一風変わった日本人作家として認められている
という、すでに経歴だけでも食指が動きそうな感じですw
で、ルーマニアの勉強ってどうやってするの?と言うのが読者の一番の疑問。
日本には教本らしい語学書が2〜3冊しかない(本書で知ったが、ルーマニアは北欧・東欧諸国でも最貧国の一つらしい)、もちろん、家庭教師なんかいない。
引きこもっているから、現地で勉強というわけにもいかない。。。
で、書籍やインターネットを駆使し、
・Netflixのルーマニア語字幕を使う
・Facebookで数千人規模で友達申請して、現在使われているルーマニア語の情報を得るとともに、現地の人ととつながる
・英語を介して、情報を得る
と文明の利器をフル活用して、どんどんと情報を吸収していきます。
今もnoteでエッセイや自作小説を精力的に更新。今はルクセンブルク語とマルタ語を勉強中。
本文を読んでいても、使用している語彙など、言葉に関する造形が深いのと(自分より年下でした)、言語に対する愛情・情熱が伝わってきて、熱い気持ちを奮い立たせてくれる、そんな一冊でした。
語学という観点からのみではなく、何かに一生懸命になっている人の背中を押してくれる一冊にもなるかも。
客観的に見ると、著者は”社会不適合者”かもしれません。でも、千葉の田舎の一室の中で、情熱に突き動かされるようにしてインプットを重ねた著者が、これまでの成果・結果を出すということに素直な感動すら覚えてしまいます。
論理的思考力や知識量で序列がつけられがちな現在、こうやって尖った趣味嗜好を磨き続け、世に活躍する若い方が出ること。
日本も捨てたもんじゃない、そんな気持ちにさせてくれた本。
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