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戦略案件とIT案件の違い【ビジネスモデル編】

戦略案件とIT案件では、プロジェクト期間が異なる、という話は聞いたことがあるのではないでしょうか。

戦略案件の場合、短いものだと1か月~3か月程度です。一方で、IT案件の場合、短いもので1年ですが、長いものだと3年ほどかかります。

なぜ、このようにプロジェクト期間が異なるのでしょうか。また、プロジェクト期間が異なることによって、ビジネスのやり方はどの様に違ってくるのでしょうか。

今回は、「戦略案件とIT案件のビジネスモデルの違い」を語っていきたいと思います。

 戦略案件のビジネスモデル

まず、戦略案件のビジネスモデルについてです。

戦略案件は、トップマネジメント層が顧客であるものの、案件の規模が小さく、マネージャーのレバレッジが効きにくいです。また、人材の調達が難しいという特徴があります。

戦略案件のビジネスモデルを概観するために、下図のようにビジネスモデルを整理しました。

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顧客は、事業部長(や事業部長に準じた役職)、経営企画部長、本社経理部長、事業開発専門組織といったトップマネジメント層です。

彼らは事業を行っていくにあたって、様々な経営課題に直面しています。定常的な業務で対応できる経営課題であれば、社内人材で対応をしていきますが、中には非定常的な経営課題が出てきます。

こうした課題に対応するために、社内で人材を確保していることは稀です。日常的に行っている定常的な業務に忙殺され、こうした業務へ対応する余力がありません。

そこで、提供価値として、非定常的な経営活動に対する企画立案・推進していきます。

例えば、事業戦略の立案、中期事業計画の策定、新規サービスのビジネスプラン策定、新組織立ち上げに伴う経営管理体制構築、戦略実行のPMOなどです。

期間は、1か月~3か月程度の短期期間です。この期間ですべての経営課題が解決されるわけではありません。プロジェクトの実施期間中に新たな経営課題が判明する場合もありますし、詳細な計画の立案や実行支援を依頼される場合があります。そうした場合は、契約を更新して、1~3か月程度追加で活動を行います。

顧客へのチャネルですが、新規顧客の場合は、セミナーやHP等からの問合せ・提案依頼、ブレックファーストミーティング等でのトップへの直接営業などを通じて契約を獲得していきます。

既存顧客の場合は、ご支援していたお客さんから、他部署・他メンバーへ紹介いただいたり、ご支援していたお客さんと共に実施していたプロジェクトに関与していたリーダーからの引き合いがあったりして、次の契約に結び付きます。

プロジェクトを推進するためのリソースですが、ファーム内人材は、戦略案件の経験が豊富なマネージャーを中心に、メンバー1~3名程度です。

マネージャーは3案件程度を掛け持ちしており、関与率は低いです。掛け持ちしている案件のうち、注力する必要のある案件へ関与を集中させ、他は低くする場合もあれば、各プロジェクトに満遍なく関与する場合もあるなど、プロジェクトの難易度によって変えています。

ファーム外人材について、社外の知見者をメンバーの人脈やミーミル・ビザスク等の会社を通じて適宜活用しています。例えば、なじみのない分野のキャッチアップ、仮説検証、他社事例調査などといった必要性が発生した時に、こうした外部人材を活用します。

収益・コストについては、個々人のランクに応じた請求単価及び費用単価と稼働時間をかけて算出するのが基本です。レベニューシェア、成果報酬などの形態もありますが、メジャーではないです。

1つの案件で数千万円程度の売上です。後続で述べますが、IT案件に比べると圧倒的に金額が低いです。

IT案件のビジネスモデル

次に、IT案件のビジネスモデルについてです。

IT案件は、情報システム部が顧客になりやすく、事業部にリーチしにくいものの、案件の規模が大きく、またマネージャーのレバレッジが効きやすいです。

戦略案件よりも売上が立てやすく、また、人材は比較的調達しやすいので事業をスケールしやすいという特徴があります。

IT案件のビジネスモデルを概観するために、下図のようにビジネスモデルを整理しました。

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顧客は、情報システム部部長・担当リーダーです。

彼らが、社内システムの保守をしていて、各事業部からの問合せ対応や改修対応を行っています。そうした中で「現行システムでは実現できない要件」がたまっていきます。また、システムは保守期限が決まっていますので、保守期限が切れる前に、新システムへ取り替える必要があります。

しかし、こうした新システムへの取り替えは容易ではありません。取り替え先のシステムについて精通している必要がありますし、通常、大規模なプロジェクトを編成する必要があり、プロジェクトを推進できる人材が必要です。

そこで、提供価値として、顧客が単独では導入することが困難なITの導入を行います。また、システムの導入に付随した業務改善も実施します。新システムを導入することによって、BPR的効果が見込める場合があります。既存システムでは非効率だった業務の改善が出来ます。(逆に、新システムの方が非効率になってしまう部分も、あったりしますが・・・)

大規模なプロジェクトが多いため、1年~3年程度の長期間で実行します。

チャネルについて、新規顧客の場合は、セミナーやHP等からの問合せ・提案依頼などがメインです。

既存顧客の場合は、他のシステム更改案件が発生する場合に、引き合いが来ます。またITアウトソーシングを実施していれば、毎月、保守契約を締結し、継続的に顧客との関係を構築できます。

プロジェクトを推進するためのリソースですが、社内人材について、マネージャーは100%関与し、プロジェクトマネージャーを担うか、大規模案件ではチームリーダーを担います。下位メンバーは5人~20人程度です。

ファーム外人材については、システム開発を担えるファーム内の人材がいない場合、外部から開発者を調達することが多いです。

収益・コストについて、戦略案件と同様、個々人のランクに応じた請求単価及び費用単価と稼働時間をかけて算出することが基本です。

1つ案件を取ると2桁億円になるので、戦略案件とは売上の上がり方が桁違いです。

ビジネスモデルの主な3つの違い

ざっと、それぞれのビジネスモデルを概観してきましたが、主な違いは3つあると思います。

1.カウンターとなるお客さんの違い
2.メンバーの調達のしやすさの違い
3.マネージャーのレバレッジのかかり方の違い

1つ目は、カウンターとなるお客さんの違いです。

IT案件では、情報システム部が顧客になることが多いです。これはIT案件を行っているチームからすると、ビジネスサイドへ算入することが難しいことにつながります。

なぜかというと、顧客である情報システム部から、各事業部のリーダーへつないでもらえることが極めて少ないことと、システムの稼働後はトラブル対応が多いため、そもそも他事業部へつないでもらえるよう「お願い」できるタイミングが無いためです。

より上流の戦略案件へ分野を広げたくても、お客さんから期待されていない場合が多いです。「畑違い」であるとお客さんからはみられてしまいます。

2つ目は、メンバーの調達のしやすさです。

IT案件の場合は、メンバーはITスキルがあればバリューが発揮しやすいです。最悪、ITスキルさえあれば、何とかなるという面があります。

なぜなら、カウンターパートになるお客さんは、情報システム部の担当者クラスであり、「目線が近い」ので何とかしやすいです。

その結果、若手でも務まりやすいという特徴があります。

戦略案件の場合は、「これさえあればワークする」というスキルセットが定義しづらいです。

なぜなら、戦略案件特有の思考法(論点思考や仮説思考等)やファシリテーション、ドキュメンテーション、プレゼンテーション等を幅広く高いレベルで出来る必要があるからです。 当然、経営知識も幅広く必要です。

また、互いにそれぞれのスキルの高さが依存しあっている面があります。どれかが出来ないと、支障をきたしやすいです。

例えば思考法が出来ていないとファシリやドキュメン、プレゼンは総崩れになります。ドキュメンが出来ないとファシリが混乱したりプレゼンが的を得ない状況になりやすいです。プレゼンがダメだと、メッセージが不明瞭なためドキュメンも意味不明なものになりがちです。

その結果、人材の調達が難しいという特徴があります。スケールがしにくかったり、プロジェクトでトラブルが発生してマネージャーの手がかかりやすいです。

3つ目は、マネージャーのレバレッジのかかり方です。

戦略案件を行っているチームは、マネージャーのレバレッジが効きづらいです。マネージャーは3案件程度を同時に持ち、配下にメンバーを持ちますが、メンバー数は3~9名程度です。

一方で、IT案件のマネージャーは、1つの案件に集中することになりますが、メンバー数は5人~20人程度持つことができます。

戦略案件のマネージャーとIT案件のマネージャーとで、1.5倍~2倍程度の差が出ます。

なぜレバレッジのかかり方が違うのかというと、IT案件の場合は、大規模投資であるため、メンバーを多くアサインすることができるからです。

また、IT案件は、ITスキルがあれば、バリューを発揮しやすく、若手でも活躍がしやすいという理由もあります。そのため、あまりマネージャーが面倒を見なくてもプロジェクトが遂行しやすいです。

一方で、戦略案件の場合は、事業部長クラスを相手にするため、経験をしっかり積んだメンバーでないとプロジェクトでワークしづらく、マネージャーがメンバーの力不足を補わなくてはいけないシーンが相対的に多いです。

まとめ

戦略案件とIT案件のビジネスモデルの違いを述べてきました。要点を下記にまとめます。

戦略案件のビジネスモデル
・トップマネジメント層が顧客であるものの、案件の規模が小さく、マネージャーのレバレッジが効きにくい。
・また、人材の調達が難しい。
IT案件のビジネスモデル
・情報システム部が顧客になりやすく、事業部にリーチしにくいものの、案件の規模が大きく、またマネージャーのレバレッジが効きやすい。
・戦略案件よりも売上が立てやすく、また、人材は比較的調達しやすいので事業をスケールしやすい。
ビジネスモデルの主な3つの違い
1.カウンターとなるお客さんの違い
  IT案件はビジネスサイドへの参入が難しい構造になっている。
2.メンバーの調達のしやすさの違い
  戦略案件は、「これさえあればワークする」というスキルセットが
  定義しづらく、人材の調達が難しい。
3.マネージャーのレバレッジのかかり方の違い
  戦略案件は、マネージャーのレバレッジが効きづらい
  IT案件の方がレバレッジが効き、売上をスケールさせやすい

総合ファームの場合、戦略チームとITチームで分かれますが、こうしたビジネスモデルの違いから、互いのケイパビリティが異なるので、両チーム間での異動はあまり無いです。

また、ITチームの方が売上規模が大きいので、戦略チームはやや肩身が狭かったりします。


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