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『神田川』かぐや姫 1973年 若者の「清貧」を描いた不朽の名曲

「神田川」(かんだがわ)は、かぐや姫(当時のグループ名は「南こうせつとかぐや姫」)が歌った日本のフォークソング。1973年(昭和48年)9月20日にシングルレコードが発売された。喜多條忠が、早稲田大学在学中に恋人と神田川近くの アパートで暮らした思い出を歌詞にして、青春の悲しみが若者の共感を呼んでヒット曲となった。

リード・ボーカルは南こうせつ。バイオリン演奏は武川雅寛。

南から作詞を依頼された喜多條は当時25歳で、早稲田大学を中退したのち放送作家として売り出し中だった。彼はタクシーで早稲田通りの小滝橋を通りかかった時、神田川の河川整備をする東京都庁職員を目にし、19歳の時に1年間だけ早大生の髪の長い女学生と三畳一間のアパートで同棲した日々を思い出した。

窓から汚い神田川と大正製薬の煙突が見えるアパートだった。そしてその「青春時代を総括するつもりで」、約30分で一気に詞を書き上げた。

さっそく南に電話をかけて詞を読み上げると、南はそれを折りこみチラシに書き留めながら、即興で思い浮かんだメロディを口ずさんでいった。詞を書きながらメロディが湧いてくるのは南も初めての体験で、電話を切った3分後にはもう曲が完成していた。

神田川 作詞 喜多條忠 作曲 南こうせつ

貴方はもう忘れたかしら
赤い手拭いマフラーにして
二人で行った横町の風呂屋
一緒に出ようねって言ったのに
いつも私が待たされた
洗い髪が芯まで冷えて
小さな石鹸カタカタ鳴った
貴方は私の身体を抱いて
冷たいねって言ったのよ
若かったあの頃何も怖くなかった
ただ貴方のやさしさが怖かった

間奏

貴方はもう捨てたのかしら
ニ十四色のクレパス買って
貴方が書いた私の似顔絵
巧く書いてねって言ったのに
いつもちっとも似てないの
窓の下には神田川
三畳一間の小さな下宿
貴方は私の指先見つめ
悲しいかいってきいたのよ
若かったあの頃
何も怖くなかった
ただ貴方のやさしさが怖かった

記録 
オリコンチャート 最高位1位
総売り上げ数 推定200万枚

1974年、関根恵子・草刈正雄の主演で映画化された。作詞者・喜多条忠の自伝的小説の映画化である。大学の人形劇サークルに所属する上条真と、巡業先で出会った少女・池間みち子が同棲するというストーリーであるが、歌詞の内容とは無関係である。


『清貧』と聞いて、どんなことをイメージするであろうか。

清く、貧しく、美しく。。。などと昭和の昔はよく言われたものだ。
高度成長期を迎えた日本では、その『清貧』からの脱却こそが、夢であり、願望であり、現実的な指標であった。

物質社会の到来である。
田中角栄内閣はより国を豊かにするために日本列島改造論をブチあげ、
それを現実化させてみせようとする。
金権乱脈と汚職にまみれていく日本。
ヒト、モノ、カネ。。。。

例え、どんな生き方をしようとも、物欲を満たし、金を得ることが善であり、正義とされた。
資本主義とはそういうものだと知らしめられたのだ。

男女の恋愛ですら、例外でなく金で買えるようになっていく。
もう誰も、「愛があれば、お金なんていらない」などとは言わない世の中が当たり前になったのである。

恋愛も結婚もお金がなくては成り立たない。
いくらなんでも、「お金なんていらない、愛があれば」なんて綺麗ごとも言う気もさらさらない。
風呂なしの3畳アパート、銭湯通いなど想像もつかないのではないか。

『清貧』なんて、まっぴらごめんだし、貧乏とか味わいたくもない。

テレビゲーム、携帯電話、パソコン、インターネット、スマートフォン、
そして、SNSの登場で、人々は容易に孤独から逃れることが可能となった。

もう、1970年代の若者が貧しかったことなんて、誰も記憶にすらないし、
新しい世代の人には想像もつかないだろう。

しかし、それでも、なおかつ、この曲は歌い継がれてきた。
心のどこかに留めておかなければと、受け継がれてきた。

繰り返し、様々なアーティストが心を込めて歌ってきたのである。

以下のカバーリストをご覧頂きたい。

1974年、あべ静江(アルバム『透きとおった哀しみ』収録)
1974年、小柳ルミ子(アルバム『あたらしい友達』収録)
1975年、坂本九(アルバム『ターニング・ポイント TURNING POINT』収録)
1979年、芦川よしみ(アルバム『わたしの四季 -芦川よしみ春夏秋冬-』収録)
1994年、香西かおり(アルバム『綴織百景 VOL.4 旅』収録)
1996年、大月みやこ(アルバム『昭和の名曲を歌う vol.10』収録)
2002年、松浦亜弥(アルバム『FOLK SONGS 2』収録)
2005年、石川ひとみ(アルバム『With みんなの一五一会〜フォークソング編』)
2007年、嘉門達夫(替え歌『パンダだわ』として、アルバム『言葉のチカラ!』収録)
2007年、ケイ・リラ(アルバム『KANDAGAWA』収録)
2007年、クミコ(アルバム『「10年」〜70年代の歌たち〜』収録)
2009年、中森明菜(アルバム『フォーク・ソング2 〜歌姫哀翔歌』収録)
2009年、荻野目洋子(アルバム『Songs & Voice』収録)
2010年、坂本冬美(アルバム『Love Songs II 〜ずっとあなたが好きでした〜』収録)
2012年、吉幾三(アルバム『あの頃の青春を詩う』)
2013年、ももいろクローバーZ with 南こうせつ(アルバム『5TH DIMENSION』初回限定盤A収録)
2016年、桑田佳祐(Blu-ray・DVD『THE ROOTS 〜偉大なる歌謡曲に感謝〜』収録)
2021年、さだまさし (アルバム『アオハル49.69』収録

1974年以来、これだけの歌い手が絶えることなく、ジャンルを超えて、この曲を残していこうとしてきた。

このどうしようもなく、切なく、胸を打つ、男女のはかなくも、もろい。
それでいて、固く結ばれた絆は時代を超えて愛されていたし、共感されてきたという証なのではないだろうか。

恋愛は、どんなに恵まれた時代になろうとも不変である。

古代ギリシャの時代から、現在に至るまで、恋愛の詩がなくならないのが、それを物語っている。

男女のどうしようもない、離れがたい愛の形と気持ちの高まりは揺るがないものだ。

もし、この曲を聴いて、心を揺さぶられたとしたら、きっとあなたは豊かな感性の持ち主であろうし、これから、どんな困難を乗り越えてでも、幸せな愛を手にすることができるのではないだろうか。

わたしの勝手な思い込みかも知れないが、そんな気がしてならない。

清く、貧しくな時代はとうに去った。

清く、豊かな時代で新しい世代のひとたちの愛が成就して欲しい。

そう願うばかりだ。


JR御茶ノ水駅から、帰途へ向かう人ごみの中、
冬の神田川を見渡しながら。。。。

そんなことを考えつつ、スマートフォンのキーを打ち終えるのだった。


最後までお読み頂きありがとうございました😊これからも頑張りますので、良かったらスキやフォローをお願いします💖

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