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【短編小説】「星空の下で」高校生学園恋愛ライトノベル 作画・早川怜


「星空の下で」

#2024創作大賞

第一章:舞台裏の夢

 高校の演劇部に入部したのは、運動部に所属していた僕にとって偶然の産物だった。

 僕は見習いというか音響や照明、舞台づくりの手伝いとして、一学年上の17歳の宮村ナオと共に汗と時間を期間限定で演技部に捧げた。彼女とは、二人一組で柔軟体操をよくしたものだ。
 演劇部と言えども、体力作りや長距離走などのトレーニングに抜かりはない。腹式呼吸での発声練習も含めて非常にハードなのだ。

 ナオは演劇部のスターで、155cmくらいと小柄だけど、その長い黒髪は舞台上で独特の存在感を放っていた。彼女は、あれだけ聖子ちゃんカットが流行る中、あえて自分のスタイルを貫いていた。そんな女の子はクラスに一人か二人しかいなかった。彼女は僕を名前でなく、『弟』と呼ぶ。
「チェッ、俺を子供扱いして!」正直言って、苦々しく思っていた。

 僕たちの目標は明確だった。全国大会での優勝。演題は「翼は心につけて」。白血病という病魔と闘う女子高生の有名な舞台ドラマ。そのためには、夜遅くまで練習を重ねる日々。疲れ知らずのように見えるナオだが、彼女にも弱さはあった。それを知ったのは、ある冬の夜のことだった。

 学校から駅までの田舎の長い道のり。ナオは突然僕の手を掴み、僕に近づいてきた。周囲には僕たちしかいない。
「私ね、とっても怖いの。もしも結果が出なかったら・・・努力が報われなかったら。そう思うと・・・怖いのよ」

「み、宮村先輩? どうして?」続けて、「そんなことあるもんか。誰より頑張ってる先輩じゃないですか。神様がちゃんと見てますよ!」
「おとうと、ううん、早川くん。ありがとう」と小声でナオ。
「ごめんね。ちょっと弱音を吐いてみた・・・」
 そう言い終えると、間髪入れずに背伸びをした態勢の彼女が、僕の頬にキスをした。その瞬間、僕たちの関係は変わった。それは、ただの演劇部の仲間以上の、特別な絆を感じさせるものだった。

第二章:練習と真実

 都心の洗練された、青山学院大学高等部を全国優勝に導いたという、実績のある顧問の日々の練習はますます厳しく、時には心が折れそうになることもあった。しかし、ナオはいつも僕を励まし、前に進む力をくれた。彼女の存在は、僕にとってかけがえのないものになっていった。「頼もしくて可愛い先輩だ」いつもそう思っている。

 演劇部の仲間たちは、僕たちの関係をどう思っているのだろうか。噂や憶測は飛び交うが、僕たちは気にしなかった。僕たちにとって大切なのは、舞台上で最高のパフォーマンスをすること。そして、お互いを理解し、支え合うことだった。

第三章:夢へのカウントダウン

 全国大会が近づくにつれ、僕たちの練習はさらに激しくなった。夜の11時まで続く練習。体は疲れ果てていたが、心は輝いていた。ナオとの絆は、僕たちを強くしてくれた。県大会は千葉の日本大学第一高校。優勝した。そして関東大会を経て、いよいよ全国大会のステージは九段下の日本武道館だ。

 そして、ついに大会の日がやってきた。僕たちは舞台裏で手を取り合い、互いに成功を祈った。僕たちの演技は、観客を魅了し、審査員を唸らせた。結果は、僕たちの想像を超えるものだった。

エピローグ:星空の約束

 大会後、ナオは僕に言った。
「これからも、一緒に夢を追いかけよう」と。

 僕は彼女の手を握り返し、心から同意した。もしかしたら彼女は泣いていたかも知れない。僕たちの物語は、まだ始まったばかりだ。星空の下で交わした約束は、僕たちを新たな舞台へと導くだろう。

 これは、高校の演劇部で育まれた、一つの青春の物語。夢を追いかけるすべての人に捧げるライトノベルだ。

宮村ナオの物語 - 演劇部の静かなる情熱

 宮村ナオは、ただの演劇部のスターではない。彼女は、その静かなる情熱と、舞台に対する真摯な姿勢で、周囲を魅了する存在だ。ナオの長い黒髪は、彼女の個性と内面の強さを象徴している。流行に流されることなく、自分のスタイルを貫く彼女の姿勢は、多くの人々に影響を与えている。

 ナオは、演劇部においても、学校生活においても、常に完璧を求める。しかし、その完璧さの裏には、彼女なりの葛藤と繊細さが隠されている。彼女は、自分の感情をあまり表に出さないが、それは彼女が弱いからではない。むしろ、強い意志と自己制御を持っているからこそ、感情を内に秘めているのだ。

 ナオの演技は、観客を引き込む力がある。彼女が舞台上で見せる表情一つ一つには、深い意味が込められている。彼女は、役になりきることで、自分自身と向き合い、自分を表現する。それは、彼女にとっての生きがいであり、情熱なのだ。

 ナオと僕の関係は、単なる演劇部の先輩と後輩という枠を超えている。彼女が僕の頬にキスをした行動は、彼女の内面の一部を垣間見せる瞬間だった。それは、彼女が普段見せない、感情の表出であり、主人公への特別な信頼の証だ。

 ナオは、演劇部の中でもリーダーシップを発揮する。彼女は、部員たちを鼓舞し、励まし、時には厳しく指導する。しかし、それは全て部員たちが成長するため。ナオ自身もまた、部員たちから多くを学び、自分を高めている。

 宮村ナオは、演劇部という小さな世界で、大きな夢を見ている。彼女の夢は、全国大会での優勝だけに留まらない。彼女は、演劇を通じて、人々に感動を与え、心を動かすことを目指している。ナオの物語は、ただの高校生の物語ではない。それは、夢に向かって努力するすべての人々の物語なのだ。

 そして、その物語はこれからも続いていく。夜空に輝く星のように、永遠に。


この物語は現実に基づいたフィクションであり、実在の人物や出来事とは関係ありません。

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