陸上競技の調整方法の話② 開き直る力

こんにちは。良いトレーニングはできていますか?
さて。今回は、前回の話で書き足りなかったことを書きました。それは調整の、特にメンタルに関する話です。テーマは「開き直る」です。

前回は調整について、超回復の話を引き合いに出して主に身体の調整についてお話ししました。最後に少し気持ちのことも書きました。調整は、過程があっての調整であり、負荷の高いトレーニングとセットで行うのが調整です、というのがざっくりとした要約です。

皆さんがトレーニングをしている時には、走る時ならタイム、跳んだり投げたりする時には記録を測ったりすることもあると思います。そんな中、試合がだんだんと近づいてきているのに、タイムや記録、補強が続かないなども含めて、調子が上がらないこともあるかもしれません。ここにはさまざまな原因があるのですが、ここで焦ってしまったら大半はうまくいかないでしょう。

この時、選手としてできることはいくつかありますが、1つにまとめると「開き直る」ことです。開き直る、と言っても、やるべきことはあります。

①トレーニングメニューを見返す

もしハードなトレーニングをしていたのなら、調子は落ちて当たり前です。しかし試合前1週間を切っても一向に身体が重いなと感じれば、身体の回復が追いついていない可能性があります。ここで、「調子が上がらないからもっとトレーニングを積まなきゃ」と考えてしまうと逆効果です。いい意味で開き直る勇気が大事です。あくまでもハードにトレーニングしていたなとわかったことが前提ですが、思い切ってリフレッシュしすることをお勧めします。

具体的には、気合いは胸にたぎらせながら、トレーニングを1時間以内に収める、アップシューズだけでトレーニング、芝生があるなら裸足になってみる(怪我注意)、大の字に寝て何も考えず空を見上げてみる(瞑想)、などなど。全て自分が実践したことがあることです。こういうことをやってみると、意外と試合当日が怖くなくなります。

②技術的にしっくりこない時

こういう場合もあると思います。この時、もし解決策がわかった場合、「こうすれば試合当日はうまくいくな」と具体的にイメージできたところでトレーニングを終わらせて試合に臨むことをお勧めします。あくまでもベストなパフォーマンスは試合で出すべきです。具体的なイメージと、試合当日の緊張や会場の雰囲気がかけ合わされば、相乗効果で記録が出る、という、こちらも前向きな開き直りが大事です。では、技術的な問題の解決策が全くわからなかったらどうするか?その時は、良かったと思える時の動きをイメージして、振り付けをしてみましょう。以前記事でも紹介しました。

技術は速い動きの中では習得できにくい、ということは何度か紹介しています。それを踏まえると、今技術的な問題があるけれど上手くいかない場合、原因がわからない場合は、ゆっくりゆっくり動きを確認した方が改善に近づきます。さらには、意地になって速い動きの中で悪い動作を改善できずにいると、それが癖になってしまい、悪循環的に動きは悪くなってしまいます。上手くいかない時は基本に戻って、できることからやるというのはすごく大事なことで、これは試合前の調整段階でも当てはまることです。ここでこういうメンタルを持てないと、きっと動きが悪くなってしまうでしょう。開き直ることが大事です(ちょっと強引な結論でしょうか笑)。


ここで調整に関わる昔話です。
短距離を専門としていた後輩が、毎回毎回、いちいち先輩からこう言われていたそうです。
「今日の30mスタートダッシュのタイムだと100m10秒〇〇だな」
後輩は試合に向けて全くモチベーションが上がらなかったそうです。

あくまでも試合に向けてハードにトレーニングをしている最中のタイムは目安でしかなくて、ここから方向性を決めてトレーニングを修正したりこのまま継続したりすればいいんです。当の本人はそれがわかっていたのですが、先輩が全くわかっておらず、本人も「だんだん気になって仕方なくなってきた」と言っていました。

繰り返しますがあくまでも通過点の記録に一喜一憂する必要はありません。方向性が分かれば良いのですから。でも気になるようだったら、それをやめるように言うか、言えない環境なら「あーはいはい」と受け流す技術(スルースキル)を身につけるか、その場を離れるかすることです。積極的に開き直ってください!もし指導者の方がこれを見ているのならば、選手を不安にさせないでくださいね。


ということで調整段階で開き直る話をしました。調整が順調だと感じるのであればそのままの調子で試合を迎えてください。ただ、もし調整に不安を感じるのであれば、これまで書いてきたことが少しでも参考になればと思います。

トレーニングは嘘をつきません。結果が悪ければ、きっとこれまでのトレーニングに問題があることを正直に教えてくれています。あとはそれに素直に向き合ってまた次の試合に向けて調整してください。

そうやって、人は強くなっていくんです。

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