陸上競技の調整方法の話

こんにちは。良いトレーニングできていますか?
そろそろシーズンインしている方もいらっしゃるみたいで、先日も沖縄でアウトドアの記録会の記事がさまざまなメディアでニュースになっていました。まだ寒い地域もありますが、シーズンインに向けて身体も気持ちも準備に入っている人は多いのではないでしょうか?

そこで今回は、オールシーズン使える「調整」についてできる限り深掘りしたいと思います。

皆さんは、試合の日があったとして、調整というものをそもそもしていますか?しているとしたら、どのくらいの日数で、どれくらいの練習量をこなしていますか?

調整している、という方は、「試合に向けて練習量を減らしている」という回答をする人が多いと思います。疲れて試合に臨むわけにもいかないですから。きっと試合で上手くいけば次もそうして、上手くいかなかったらやり方を変えて、という感じで、いい意味で言えば試行錯誤、悪く言えば何となくあやふやに過ごしている人ももしかしたらいるのではないでしょうか?

今日はこの悪いあやふやな部分を明確にして、いい側面である試行錯誤をやりやすくすることが狙いです。

1 コース料理

読んでいただけているでしょうか?そして覚えていただけているでしょうか?トレーニングメニューの立て方。

調整もこの考え方の応用です。コース料理を意識してメニューを立てます。と言っても、調整が例えば1週間必要だとすれば、1週間のメニューを立てるだけではいけません。調整するに至るまでの、負荷の高いトレーニングも込みで調整です。言ってしまえば、日々試合で結果を出すためにトレーニングをしていると思うので、すべてのトレーニングが調整といえば調整なのですが。それを踏まえて、いかに試合に向けて身体も心も整えられるかが試合前の過ごし方にかかっているから、みんな調整をするんです。

こちら、先ほどのリンクの続きの記事なのですが、この中にひと言「超回復」という言葉を出しました。記事中では深く触れませんでしたが、ここで少し触れたいと思います。と言っても、主に図で感覚的に説明します。

2 超回復

メチャメチャざっくり書きました。要は、短距離でも長距離でもウェイトでも、今の実力を100とすると、トレーニングを行うと疲労でだんだん実力を発揮できなくなるけれど、休めば回復してまた力を発揮できます、という当たり前の話をしています。大事なのは回復の先にある現象で、人は筋肉が破壊されると、それが再合成される時に前より強くなるんです。それが超回復の簡単な説明です。なので

①のように、質の高い休養が取れてしっかり身体が回復できていればトレーニング効果は上がり、②のようにトレーニングの負荷が高すぎたり、食事や睡眠が不十分で質の高い休養が取れないと、トレーニングするたびに調子をとしてしまうといった現象も起きてしまいます。

3 調整

ここから少しずつ調整に向けた話にしていきますね。

②のようになるとトレーニングの度に調子を崩してしまう、と言いましたが、これを意識的に行っている時期があります。それはシーズンオフです。結構ハードなトレーニングをこなしている方もいるのではないでしょうか?では何でそうしているのでしょうか?

これは先ほどリンクを貼ったトレーニングメニューの立て方②の方にも書きましたが、自分を追い込んで追い込んで追い込んだ後にトレーニングの負荷を減らすと上の図のように大きく成長できることが期待されます。(これはあまり巷のウェブサイトには出ていない理論なのかなと思いますが、ある世界的な研究者、指導者でオリンピアンでもある恩師の研究なので間違ってはいないと思います。)ただ 負荷をかけすぎて怪我をしないように注意が必要です。

この図は1ヶ月単位でも起こりますし、もっと長く、例えば12月から2月までハードなトレーニングをして3月からシーズン中のようなメニューに変える、といった時にも起こります。詳しくは前述のトレーニングメニューの立て方②の方をご覧ください。コース料理で言うデザートです。

で、調整もある意味デザートのようなものです。上記のように、それまでのトレーニングで負ったダメージを試合に向けて回復させ、試合当日にできるだけ筋肉が再合成されて強くなるようにすることが「調整」です。

この調整に1週間かけるのも、2週間かけるのも3週間かけるのも実はそれまでのトレーニングの過程次第です。リンクを貼った記事でも紹介しましたが、私は夏場試合がない時期に6週間の調整をしました。前半3週間は怪我ギリギリの超ハードトレーニング、後半3週間はそれを回復させつつ瞬発系のスプリントと走幅跳の技術トレーニング、最後の1週間は量を減らして試合に臨みました。その試合が生涯ベストです。

繰り返しますが、調整は過程があっての調整です。例えば怪我が原因で満足なトレーニングができていなければ、調整をする以前にまずはトレーニングできる身体に戻るのが最優先ですよね?全く練習していない人が調整しますと言っても「何を調整するの?」という話です。トレーニング負荷がないのに超回復は起こりませんし、身体は調子が良くても技術が下手になって良いパフォーマンスはできません。

ただこれには面白い話があります。私は高校生の時に県予選で敗退して5月で陸上部を引退したのですが、その後8月の試合で走高跳に出場したら、10cmベストを更新してしまいました。典型的なサボりバネです。しかも5月までと全く違う跳び方に勝手になっていて、あのときなんで跳べたのかが、当時はよくわかりませんでした。

よくよく考えてみると、身体が慢性的に疲れていたのかもしれません。ずっと腰痛に悩まされていましたから。そして、脳も疲労が取れて思考も変わっていたのかもしれません。とにかく、何から何までリセットされて技術的なぎこちなさがなくなったり、軽い気持ちで出たことが気持ちを楽にさせた、と今は考えています。

調整をするという時は、これまでは身体の面の説明しかしていませんでしたが、同時に気持ちも脳も最高の状態に仕上げる必要があるな、経験を通して思っています。普段気が張り詰めている人はリラックスしてみたり、逆に楽観的すぎる人は気が引き締まるようなことをしてみたり。競技場内でも私生活でも。私は気が張る人だったので試合前は(試合前に限らずでしたが笑)ずっとゲームをしていました(ゲームしていないと余計なことを考えてしまっていたので)。気を張るのは前日から、と決めていました。

調子が上がれば気持ちも盛り上がるでしょうし、気持ちが安定していればトレーニングにも身が入ると思います。そうして気持ちの面でも調整をしていきましょう。なので本当に怪我には気をつけてください。調整すると言うことは、まず無事であることが何よりも大切です!

以上、結構長くなりましたが、調整の話をしました。まとめると、

  • 超回復を利用しよう。

  • 調整に至るまでの過程(どんなトレーニングをしてきたか)が大事。

  • 気持ちも脳も調整しよう。

です。そろそろ初戦を迎える皆様、頑張ってくださいね!
最後に前述の恩師の言葉を添えて終わりにします。

緊張したら、冷静になろうとするんじゃなくて、とことん緊張して自分を奮い立たせろ。冷静はその先に待っている

それでは。

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