指導者がいない陸上競技選手のためのトレーニングメニューの立て方②

みなさん、トレーニングは順調ですか?

この記事は前回の

こちらの記事の続きになります。
ぜひ①の方をご覧になってからこちらを読んでください。


前回、トレーニングメニューを立てるときに意識したいこととして
「コース料理」を例えに話しました。
前回は1日単位、1週間単位の話で終わりにしました。
今回はそれよりも長いスパンでの「コース料理」の話です。

前回のことを要約すると、
トレーニングには「流れ」が大事だということ、
言い換えれば目的意識を持つことが大事で、
そのためにはコース料理のように
それぞれのトレーニングの意図を明確にする必要がある
という話をしました。
そしてそれは1日単位だけではなく、
1週間、1ヶ月、さらに長い単位で考えることが大事だというところまで
話しています。

今回は1ヶ月単位の話から始まり、さらに長いスパンのこと、
そして、「コース料理」のメリットを改めて掘り下げたいと思います。

1ヶ月単位

ここからは特に、冬季練習、シーズンオフで真価を発揮する話です。

1日単位、週単位での「コース料理」、トレーニングメニューを
継続していくにあたっては、
月単位でも流れを作ることが大事です。
特に冬季練習では運動量も増えるので、
量のバランスをあらかじめ決めておくことで、
運動の過不足をなくし、怪我防止につなげることもできます。

例えば、ある月の1週目は「前菜」。
2週目は「スープ」。
3週目は「メイン」。
4週目は「デザート」。
と決めて、走る距離や本数を調整すれば、
月単位での流れができます。
イメージとしては
前菜とスープはそこそこハードなメニュー、
メインはすごくハードなメニュー、
そしてデザートはご褒美としてメインの7割程度のメニュー。
という感じでしょうか?

1ヶ月単位でのコース料理で、一番大切なのは何だと思いますか?
これはあくまでも個人的見解ですが
大事なのは「デザート」。僕はそう思います。
理由は「回復」させるため。
前菜、スープ、メインで負ったダメージを
デザートの期間で回復させるんです。
ただ何もやらないわけじゃなくて、
本数を減らして精度を高めたり、
疲労が溜まっているのならジョギングと補強にするとか、
身体と相談して柔軟にメニューを変えても良い週にするのが
デザートです。
同時に気持ちの面でもリフレッシュして
また新たな気持ちで次の月を迎えられるようにする狙いもあります。

ずーっとガンガン走っていたら正直身体が持ちません。
でも冬季だからといって、
闇雲にハードな練習をやり続けてしまう人が結構いるのも事実です。
ぜひデザートを大切にしてみてください。
この辺のことは話すと長くなるので、
「超回復」という言葉を調べてみてください。
これは1回単位の話だけではないんですよ。
とだけお伝えしておきます。

1クール単位

例えば冬季練習全体とか、
目指す試合までの期間とか、
その単位での話です。

ここではコース料理の流れというよりは、
どんなコース料理を食べるか、という話になります。

陸上競技的に言い換えれば、
例えば冬季練習の
12月・・・ウェイトを重視した期間
1月・・・持久的な運動(インターバル走など)を重視した期間
2月・・・徐々にスピードを上げる期間(レペテーション)と技術練習
3月・・・シーズンインに向けた調整期間
というように、出されるコース料理自体を変えるということです。
もちろん12月から3月に向けては一貫性のあるもの、
つまり意味のあるものにしなければなりません。

また、シーズン中でも、
これは実際自分がやったことですが、
夏休み全く試合に出ず、6週間の空きを作って、
前半3週間・・・ウェイトを週3日入れるメニュー(うち2回は軽い負荷)
後半3週間・・・技術練習、調整など
というように目指した試合に向けて調整したこともあります。
今考えると、怪我するかしないかのギリギリを攻めた
かなりぶっ飛んだトレーニングでしたが、
自己ベストが出せたのでよかったです。

以上のように、コース料理自体を変えてしまう発想が
1クール単位でのトレーニングメニューの立て方です。

年単位

これはコース料理で言うならば、
季節の旬を食べるべき時期に味わう、という感じでしょうか?
主にシーズン中に気をつけることです。
気をつける、と言うと語弊があるんですが、
要は目指す大会を設定しなさい、と言うことです。
簡単でしょ?

ただ実際、
目指す試合を設定はしてても、
毎回毎回自己ベストばっかり狙っていませんか?
それはそれでいいんです。
でも、
試合に出過ぎて肝心の県大会で怪我をしました、
では悲しすぎますよね?

それを防ぐために、
1クール単位、1ヶ月単位、1週間単位、1日単位の
コース料理的なメニューの立て方を力説したと言っても
過言ではありません。

先に結論から言ってしまうと、
まずは年間のコース料理の見通しを立てること、
言い換えればどの時期のどの試合に目標を置くか、
を考えるのが一番です。
8月の全中なのか、7−8月のインターハイなのか、
10月の国体なのか。
もっと言えば、大きな大会で勝つことと、
自分の記録を更新することは別の時期でも構わないと思います。

ではその為にいつどんなトレーニングを行うか、
今度はスモールステップで
地区予選や記録会などの試合に小さな目標を置いて
1クールごとに目標を立てます。
地区予選ならば当然順位が目標になり、
記録会ならば記録の更新や、技術の修正を試合で試すとか
そういうことになるでしょうか。
そして今度は1週間ごとの流れを見て、
最終的に1日のトレーニングメニューを立てていくんです。

説明しやすかったので1日単位での
コース料理の話から始めましたが、
実際は説明したのと逆の順番でコース料理を設定するのが
いいと思います。

繰り返しますが

  1. 年単位でのコース料理

  2. 1クール単位でのコース料理、冬季ならば1ヶ月単位

  3. 1週間のコース料理

  4. 1日のコース料理

です。それぞれの概要はこれまで説明したとおりです。

コース料理のメリット

1.目標が立てやすい
コース料理式だと、
何のために今このようなトレーニングを行っているのか、ということが
明確になると思います。
試合期はもちろん試合が目標になると思うので、
そこに至るプロセスを考えやすいと思います。
冬季練習でも、長くキツいトレーニングの目標を見失わず、
意識を高く持ってトレーニングできるはずです。

2.何のためのトレーニングかが明確になる
1にも関連しますが、コース料理のように
「流れ」「「一貫性」があると、
同じトレーニングを行っていても質は絶対に変わります。
無目的に走るのと、目指すことを意識して走るのとでは
感覚の研ぎ澄まされ方は絶対に変わってきます。

3.目標が共有できる
部活の仲間同士、もしくは、
主旨とは若干反しますが指導者と選手の間など、
何のために行っているトレーニングなのかを共有することで、
みんなで同じ方向を向いて、団結してトレーニングできます。
なので別にこれに関してはコース料理式を使わなくてもいいんですが、
これまで説明してきたコース料理を使うと、
お互いがわかりやすいかなとは思います。
実際自分も指導していた時、中高生に説明しやすかったですし、
冬季練習を惰性で過ごしていた選手はいませんでした。
全員が、明確に目標を共有できた(と思う)ので。

最後に

では、実際どんなメニューを立てればいいの?
という話にもなってくるでしょう。
しかし、これに関しては明確な答えは持ち合わせていません。

それは、学校それぞれで、環境や資源が違うからです。
グラウンドの広さ、用具の有無、休日に陸上競技場へ行けるか、
学校の決まり事、地域の事情など、全国様々です。
僕が指導していたとある中学校では、
グラウンドは縦50m横30m、しか取れず、
冬は下校時間が早くなり、12月の平日の部活は30分のみでした。
なので長い距離を走りたい時は50m*6本の往復走を3セットやったり、
急いでサーキットの用具を出して時間いっぱいやって片付けて帰るまでを
30分でやったり(すごく忙しかった・・・)、
工夫してトレーニングをしていました。
(この工夫は前任の指導者が考案したものでした)。

というわけで、一番最初にメニューの中身には触れないと言ったのは
各環境や資源などが違うからです。
スペースがないのに300m走って、とは僕も言えません。

なので。
みなさんの学校などで持っている環境や資源、約束事などを踏まえて、
そしてコース料理式を使ってみて立てていただけたらと思います。
もしご質問やご相談などがありましたら、
お気軽にコメントをください!

それでは。


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