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その45 先生 だいじょうぶ?(1267文字)

1 はじめに

 小学校国語科の時間、物語文の授業が行われています。

2 物語の授業

 授業者「考えたことを発表しましょう。」

 特定の子どもが、挙手をし、指名を受けて発言していきます。
 何度も同じ子が指名を受け、発言します。
 発言する子どもは、とても、いきいきしています。

 指名を受けた子どもの目的は、教師に伝えることです。

 発言内容が、学級全体に届くことは、あまり大切にされていないようです。

 子どもの発言を聞いて、授業者は、その内容をまとめて、再び声に出して、子ども達に伝え直します。
 自分の考える授業プランに沿うように進めています。

 授業者の考える範疇の「重要な考え」が出たことと時間配分を考えた結果、次の発問に移ることにしたようです。

 授業者が、次の発問をしようとした、その時です。

 いわゆる『しんどい子』が、初めて挙手をしました。

 しかし…しかし…教師は、そのことに全く気がつかず、授業を進め、次の発問に移ったのでした。

 すると、その子は、手を下ろしたかと思うと、右手に持っていた鉛筆を、教科書に突き刺し始めたのです。

 そして、教科書に穴を開ける程に突き刺し続け、遂には、破れてしまいました。
 更に、はさみを取り出して、教科書の1ページ分を縦半分に切ったのです…。

 ワークシートも、鉛筆にくるくると巻きつけてしまいました。

 この授業時間内に、挙手することも、顔をあげることもありませんでした。

 この子の心の中は、どんな状態だったのでしょうか。

 そうして、チャイムが鳴り、授業が終わりました。

 ワークシートを提出していない、その子の元に、授業者がやってきました。

 そして、ワークシートを提出するように促します。

 もちろん、子どもは、応じません。

 この子の心の中は、どんな状態になっているのでしょうか。
 また、この授業者は、この状況を、どのように捉えているのでしょうか。

 唐突ですが、例え話になります。

 この先生がお笑い芸人だったとしたら、『三流芸人』と呼ばれるのではないか、と思いました。

 お客さんの笑いのツボを見ようとしているでしょうか。

 笑わなかったお客さんに対して

「どうして笑わないの?劇場には、笑う為に来ているんじゃないですか。笑わないといけません。次、劇場に来た時に、あなたが困らない為に言ってるんですよ。」

という感じでしょうか。

3 次の時間

 席替えがありました。

 この子が、トラブルを起こしました。

 座りたい席、一緒に座りたい友達等自分の考えていることを、上手に表現することができませんでした。

 担任が仲裁に入りますが、担任の話は聞きたくない姿勢を貫きます。

 担任とは、先ほどの授業者です。

4 おわりに

 この授業を見ていた、ある先生。

 授業後、この子に声をかけました。

 この先生は、この子の頭をなでる仕草をしながら「とても頑張ってたね。手あげてくれたこと、先生は見てたよ。考えてたこと聞きたかったよ。」と伝えました。

 席替えのトラブルが起きた後、この子は、この先生が居る職員室に来て「ここで給食を食べたい」と言ったのでした。


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