見出し画像

【進学校の横比較】男子Y65編(浅野・麻布・栄光・海城・駒東・武蔵・早稲田+渋幕・渋渋・筑附・小石川)

同偏差値帯の進学校を集めて横比較してみようという企画、第2回は男子二番手(と言うと怒られるかもしれませんが)、四谷大塚偏差値65前後の学校群です。

浅野・麻布・栄光学園・海城・駒場東邦(駒東)・武蔵・早稲田の7校ということでちょっと学校数が多いとは思いますが、偏差値や大学合格実績を見てもこの7校でひとかたまりと感じるのでこれでいきます。

また、共学校である渋谷教育学園幕張(渋幕)・渋谷教育学園渋谷(渋渋)・筑波大学附属(筑附)・東京都立小石川中等教育学校(小石川)も、偏差値・大学合格実績から近しい比較対象として見ていきます。

【更新情報】
・2024.10.29 現役+浪人データと共学校の追加
・2024.9.2 noteへの移行と構成の変更
・2024.6.6   進学実績・偏差値を2024年版へ更新
・2023.9.28 進学実績を3年平均に変更(2021〜2023年)
・2022.11.22 初版投稿(2022年データ)

大学合格実績や教育内容などを深掘りし、グラフ化するなどして横比較していきます。複数の学校を横に並べて比較することで、それぞれの特徴に気付けたり、入試動向を探る材料になればと思っています。


1. 偏差値推移の比較

まずは偏差値の推移です。

ここではサピックス80%偏差値と四谷大塚50偏差値を見ます。単年度のグラフだと重なりが出て見づらいので、それぞれ前後3年の平均を出してグラフ化しています。

【データ出典】
サピックス:翌年度の第1回志望校判定サピックスオープン80%偏差値
四谷大塚:各入試年度の四谷大塚結果50偏差値一覧

なお、偏差値表の有効性を見るために集計した塾別合格実績は次の通りです。

各塾の2024年合格実績より
*都立小石川の四谷大塚実績は非公開のため割愛しています

とりあえずサピックスを中心に、四谷大塚も見ておくことでカバーはできそうです。神奈川2校については日能研の方が四谷大塚より多いので、実際に検討する際は見ておきたいところです。(なお早稲アカ分は四谷大塚+他塾に重複して含まれると見ているのでここでは無視します。考え方はこちらの記事(塾合格実績の集計)にて。)

入試形式の違う小石川ですが、早稲アカ実績から四谷大塚を想定すると、武蔵を少し縮めたくらいのグラフが想像でき、サピックス・四谷大塚の偏差値表も十分信頼に値すると考えます。

前半日程(2月1〜2日まで)

ざっくり、①2011〜2016年、②2016〜2020年、③2020年〜の3つのフェーズで分けて見ると、次のような勢力図の変化を読み解くことができそうです。

①武蔵低迷時代:麻布・栄光・駒東の上位グループと、早稲田・浅野・武蔵・海城の下位グループとに分かれる
②駒東の急落と武蔵の復権:
駒東が下位グループに飲み込まれる
③ほぼ一団:
上位・下位のグループ分けがなくなりほぼ一団に

ということで、偏差値的にはほぼ一団になったというのが現在の状況でしょう。渋谷系は別の動きをしていますが、それ以外の男子校はどちらの偏差値表でも2ポイント差の中に全て入っているということで、まさに団子状態という感じです。

後半日程(2月3日以降)

ぱっと見て目立つのは小石川の上昇ですね。出題形式が異なる都立中高一貫校ですが、私立型からの対応が可能なことがわかってきたことで、難関校との併願が増えていると言われ、それが反映されていると考えられます。

あとは(渋渋以外)それほど大きな動きはないように見えますが、海城②・早稲田②の上昇によって筑附が相対的に低めに推移してきているようです。浅野が少し離れて低く見えますが、前半日程の偏差値と比較するとそこまで差がないと思われます。

【2024年の注目点】四谷大塚で見ると早稲田が一歩抜けていきそうな勢いを感じますが、サピックスだとそこまで高くはないという違いがあり、今後どうなるかですね。この2年ほど大学合格実績が良いので、もう一段高があっても不思議はないと思います。

2. 大学合格実績の比較

続いて多くの人が関心あるであろう、大学合格実績の比較です。

【データ出典】
・合格者数データは各学校Webサイト、卒業生数は日能研入試情報より

【集計・表記のルール】
医学部などの重複カウントを避けるため以下のルールで集計しています
・一工:一橋大+東工大
・医学部:国公立大医学部医学科(数字に東大理Ⅲと京大医学部は含まない)
・旧帝大:北海道大+東北大+名古屋大+大阪大+九州大
    (数字に東大・京大・医学部は含まない)
・他国公立:(数字に医学部は含まない)
・私立医:私立大医学部医学科
・早慶:早稲田大+慶應大(数字に慶應医学部は含まない)
・上理:上智大+東京理科大
・MARCH:明治大+青山学院大+立教大+中央大+法政大
並び順は東京一工医までの多い順(黄色ライン)

国公立大学実績(2022〜2024年)

国公立大学は、卒業生数を合格者数で割った数字を合格者割合として集計します。ここでは現役+浪人を含む全合格者と、現役合格者の2系統でグラフを作成します。また比較しやすいよう共学3校も並べてみます。

以下2校はややイレギュラーです。
武蔵:基本的に進学者数のみの公開です。(2022年までは国公立大学の合格者と進学者の差分情報があり集計できていました。2023年から消えてしまいましたが、せいぜい数人程度だったので誤差として見ていいと思います。)
早稲田:半分が内部推薦で早稲田大に行きながらも進学校でもあるという独特な学校なので、比較は難しいですが一応推薦分も明示して同列で比較を出してみました。

各グラフに共通した注釈は以下の通りです。
*栄光学園・駒場東邦・渋幕の医学部データは進学情報誌さぴあより
*栄光学園の旧帝大は医学部と重複の可能性があります
*武蔵は進学者数のみ(数名程度の誤差の可能性あり)
*早稲田は早稲田大学への内部推薦も併せて表示   
*渋幕の旧帝大には名古屋大・九州大は含まれません(他国公立に含む)

現役・浪人合算の合格者割合

ここでは栄光学園が頭ひとつ抜けた格好で、東京一工医までで半数を超えます。続いて駒東・麻布・海城が4割超え、浅野・武蔵が3割超えといったところです。早稲田は半分が内部推薦の上で25%が東京一工医ということになります。

また共学の4校は、ちょうどこの辺りの男子校といい感じで並んでいるというのがわかります。

現役合格者割合

現役だと東京一工医で30%前後のところが多く、武蔵・早稲田がやや下がって20%前後という感じです。ちなみに最難関編の3校は50%前後、この次にくるサレジオは20%以下となるので、偏差値的にも合格実績的にもここで一塊のイメージが妥当と判断しています。

内訳の違いで見ると、東大が多めなのが栄光学園・駒場東邦・麻布で、医学部が多めなのが海城といったところです。浅野は東工大の合格者数で全国トップを取ることが多かったのですが、ここ2年ほど方向性が変わり東大シフトになってきているように見えます。

現役のみで集計したときに相対的に伸びてくるのが、海城・浅野・早稲田、共学校では渋渋・小石川といったあたりです。それぞれ比較して見ていくと面白いです。

【2024年の注目点】
駒場東邦は年度による変動が激しく、2023年は開成にも迫る実績でしたが2024年は低調だったため、今回の集計ではやや後退しました。麻布も2024年は低調で、東大の減少が全体を押し下げた格好です。一方で大きく伸ばしたのが早稲田で、2024年単年度で見ると難関国公立で30%を超え、もはや麻布を上回るところまできています。半数が早大推薦の上でなので、これは驚くべき数字じゃないかと思います。

私立大学実績(2022〜2024年)

私立大学は重複合格が多いですが、卒業生数を100%としたときの割合を積み上げてグラフ化しました。

各グラフに共通した注釈は以下の通りです。
*栄光学園・駒場東邦・渋幕の医学部データ、筑附のMARCHデータは進学情報誌さぴあより
*武蔵は進学者数の数字(合格者数とは大きく異なる可能性)

現役・浪人合算の合格者割合

武蔵は進学者数のみなので除外して見ると、各学校でそれほど大きな違いは見えないです。私大医+早慶で100%を超えているのがほとんどです。

現役合格者割合

現役になると大きくグラフが変わります。これが校風の違いというか、方向性の違いとして出ていると考えられます。

男子校で合格者が明らかに多いのが海城・浅野、中程度が栄光・駒東、少ないのが麻布といったかたちです。これは現役志向の強さと関連していると考えられます。早稲田は推薦分を抜いて考えると海城・浅野に近いイメージになりそうです。

共学校には女子も含まれるのでやや傾向が変わり、全体的に現役合格者は多いです。その中でも渋幕・渋渋・小石川は非常に多めで、小石川はMARCHも多いので、現役での私大志望者もそれなりに多いと考えられます。

あと、上智と東京理科大を分けてみると東京理科大の方が明らかに多いのが男子校の特徴と言えるのではと思います。まあイメージ通りですかね。

文理割合

文系・理系の割合を、国公立難関大(東京一工医)への合格実績を使って算出します。具体的な集計内容についてはこちらの記事(進学校の文系理系割合比較)を参照してください。

オレンジ線・紫線はそれぞれの定員ベースの割合

定員に比べて文系が多いように見えますが、これは医学部の定員を全国の国公立大なので多めになっていることが要因なので、その部分は少し割り引いて見る必要があります。それを加味し、文系4割というのを分岐点として考えると、渋渋が文系寄りというのは明確な傾向と言えるでしょう。

あとは医学部が多いのが海城・筑附あたり、医学部を含め理系が多いのが海城・筑附・早稲田という感じでしょうか。

進学実績(2022〜2024年平均)

進学者数を公開してくれている学校は多くないのですが、公開されているところを筑駒・開成もあわせてグラフ化します。ここは現役のみの数字を使用しています。

*栄光学園の国公立医学部はデータがないので、合格者全員が進学しているものとして点線で示します

武蔵は合格者数の情報がないので、逆に進学者数から他校との比較でイメージが付けられればよいかと思います。私大のイメージは栄光学園に近そうですかね。

早慶の合格者数から進学者数の割合を算出したところ、開成は17%、栄光学園は22%でした。ということで、私大合格者数の1/4〜1/5程度が進学数と思っておけば良いかなという感じです。

あと面白いのが、早稲田以外の4校で見ると現役進学率はほぼ6割で揃っていて、進学先が違っているだけという点ですかね。

早稲田は8割以上が現役進学のようです。ちなみに聖光学院の現役進学率も8割程度のようです(学校Webサイトより、進学先の内訳はなし)。この2校と私大合格者数が似たような傾向の学校(海城・浅野・渋谷系など)は、そんな感じと見ておけばよいのかなと思います。

海外大学実績(2020〜2024年)

もうひとつ、海外大学への合格者数も比べてみます。名門大学(THE世界大学ランキング100位以内などの基準、具体的にはこちら)と、全海外大学の合格者数をグラフ化しています。

*駒場東邦・武蔵は合格者数ではなく進学者数のみ
*筑波大附属のデータは進学情報誌さぴあより

渋幕・渋渋が突出して多いのはひとまず置いておくと、そのほかで目立つのは海城小石川、それに武蔵です。この3校は毎年コンスタントに合格者が出ています。(武蔵は進学者分しか出ていないので、実際どの辺りの学校にどのくらい合格しているのかわからないのが残念なところですが)

それ以外の学校はそれほど大きな動きがあるようには見えませんね。

全体からすればほんの一握りの話だとは思いますが、それでもこの辺りの学校から海外大学への道筋ができていくのか、もしくはそういう子は国際系と呼ばれる学校群に吸収されていくことになるのかは、今後注目して追いかけていきたいところです。

こちらもどうぞ
海外大学合格ランキング 2024年版
海外大学合格ランキング 2023年版
海外大学合格ランキング 2022年版

3. 教育内容の比較

最後に教育内容の比較をします。

まず、国立大学の附属校である筑附は先取りカリキュラムではありません。また、附属小学校から上がってくる生徒も合わせ、全体の8割程度が附属高校へ進学する(成績下位の2割は高校受験で外部へ出る)ということで、いわゆる中高一貫教育ではないというのが他校との大きな違いとなります。

それ以外の学校は中高一貫教育となっていて、大学受験に照準を合わせたいわゆる先取りをやっています。小石川は都立校ですが6年一貫の中等教育学校であり、この部分は同じです。

教科学習に関してまずおさえておくべき違いはここでしょうが、これ以上深掘りして横比較できるほどの情報はないので、ここからは授業以外のプログラムについて比較します。

教育環境

今、世の中的に関心を集めているであろう次の観点で比較します。

  1. グローバル教育

  2. 探求型学習(+キャリア教育)

  3. その他特徴的な教育/ICT環境

  4. 特進クラスの有無

また校是や教育方針はその学校の根底にある思想であり、それが教育に現れているはずなので、そこも合わせて見てみます。

・各学校のWebサイトから取得できる情報を中心にまとめたもので、全てをカバーできていない可能性があります
・各項目の詳細はそれぞれの学校Webサイトを参照してください

ここに挙がっている男子校は、どこも海外研修や教養講座・論文的なものは何らか導入していて、教科学習だけでない教養を身につけさせようという学校側の姿勢が窺える気がします。ただ、全員を海外に連れていくプログラムはなく、海外研修はあくまで希望者向けというのはこの7校で共通しています。

共学4校の方は書ききれないほど多くのプログラムを有しています。全生徒対象の海外研修は渋渋・渋幕・小石川の3校で実施され、小石川に至っては中2と高2の2回もあります。そのほか、SSHやSGH、海外交流、国際プログラムなど、揃いも揃って盛りだくさんです。

これらは学校の特色を現している部分も多いと思うので、それぞれ深掘りしていくと色々見えてくるのではないでしょうか。

今回はどこも色んなプログラムがあって調べていても面白いのですが、都立小石川はちょっと凄いなと思いました。体験価値でコスパを語るなら圧倒的な感じがします。財政の強い東京都がバックにつき、最優先もされそうなトップ校、日比谷高校より3年長い在校期間など、親目線では最強に見えます。ただ、多数のプログラムとか全科目履修とか、普通の中高生よりやることはかなり増えるということでもあるので、何でも前向きに取り組むとかバイタリティとか、そういう適性は求められる気はしますね。

通塾率

学校の勉強以外で塾へ通う人がどのくらいいるのかというのは親的に気にするポイントですが、通塾率を公開している学校はありません。

そこで、鉄緑会とSEGが学校ごとの在籍者数を公開しているので、その数字と、全生徒数における割合を一覧にしひとつの参考情報にしてみます。

ここでは参考までに最難関編の学校も含めて一覧化します。なお鉄緑会は指定校のみ公開されているので、空欄はゼロではなく非公開という意味になります。

鉄緑会在籍者数/SEG在籍者数は各塾Webサイトより
全生徒数は進学情報誌さぴあより

鉄緑会が代々木、SEGが新宿にあるため、この立地の影響は大きく受けていると思われ、その他の大手塾の情報もないため、これをもって通塾率を語るのはかなり無理があると思います。また、中1〜高3まで全学年の数字なので、必ずしもそれぞれの学年でこの割合が通塾しているわけではないという点にも注意が必要です。それらを踏まえた上で、あくまでひとつの切り口として見ていければと思います。

まず鉄緑会は筑駒・開成が飛び抜けていて、そこ以外はそれほど学校間の差は大きくない感じです。ちなみに逆にSEGだとこの2校は少ないんで、少なくとも筑駒・開成についてはとりあえず鉄緑会、みたいな感じなんだろうなと想像します。

あとはまあ地理的要素で、近い学校は人数が多くなり、人数が多いと指定校にもなる、という話なんでしょう。なお2023年に指定校になった早稲田は15%ということで他校より少なめですが、半附属と考えれば多く、やはりこの学校は附属ではなく進学校として通っている人が多いということでしょう。

神奈川の学校が軒並み少ないのはやはり地理的な要因でしょうね。

鉄緑会の指定校というワードが出てきますが、これは入塾テストを免除される学校のことを言います。ただ指定校でも、テスト免除のためには中1入学時からの入塾が必要ということで、要は早くから囲い込んで収益を上げたい塾の営業戦略であり、ある種のブランド戦略のように見えます。別に塾に入れば東大に入れるわけではないし、そもそも入塾テストくらいパスできないとカリキュラムにもついていけないだろうと考えれば、指定校というものに価値はないと個人的には思います。指定校かどうかを気にする人もいそうですが、あまり本質的でないものにとらわれない方がいいのではと思います。(鉄緑会に行くことを否定しているのではなく、あくまで指定校についての話です)

4. まとめ

以上、前回の最上位編に引き続き、男子二番手グループについてまとめました。

別に偏差値や合格実績でどっちが上とか下とか学校の序列をつけようとかではなく、学校の向いている方向性や動向などが見えてくればと思ってまとめました。

多くの人が気にする大学合格実績はもちろん軸のひとつだと思いますが、そこも国公立・私立や理系・文系、海外大学など見る指標はいくつかあると思います。また海外研修や留学、体験型プログラムを重視する人もいるだろうし、学校ブランドや偏差値が高いこと(友人の学力の高さや卒業後の人間関係など)もひとつの価値でしょう。

ここで挙がっている学校はどこも色んな方向性・特徴があって色んな選択ができるというか、選びがいがあると思います。どこも難関なので、そんな簡単に選ぶとか言えるような学校ではありませんが、志望校を考える一助になれば幸いです。

【進学校の横比較シリーズ】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?