【進学校の横比較】男子最上位編(筑駒・開成・聖光学院)
同偏差値帯の進学校を集めて横比較してみようという企画です。
大学合格実績や教育内容などを深掘りし、グラフ化するなどして横比較していきます。複数の学校を横に並べて比較することで、それぞれの特徴に気付けたり、入試動向を探る材料になればと思っています。
男子最上位校編では筑波大学附属駒場(筑駒)・開成・聖光学院の3校を取り上げます。これは、偏差値と合格実績を見比べた時に、この3校が頭ひとつ抜けていると考えられるためです。
また、同難易度の共学校である渋谷教育学園幕張(渋幕)と渋谷教育学園渋谷(渋渋)・筑波大学附属(筑附)も比較対象として表示することにしました。
1. 偏差値推移の比較
まずは偏差値の推移を確認します。
ここではサピックス80%偏差値と四谷大塚50偏差値を見ます。年度ごとだと重なりが出て見づらいので、それぞれ前後3年の平均を出してそれをグラフ化しています。
サピックスと四谷大塚で若干動きが異なりますが、共通しているのは聖光学院と開成の差が小さくなっている点かと思います。サピックスだと3校の差がかなり小さくなってきていますが、これはサピックスの母集団が増えたことと関連していそうな気がします。
参考のために共学3校も入れていますが、こう見ると渋渋の急上昇がわかりますね。
2. 大学合格実績の比較
続いて多くの人が関心あるであろう、大学合格実績の比較です。昨今の現役重視の流れを汲んで、現役合格のデータを使用します。
国公立大学実績(2022〜2024年)
国公立大学は、卒業生数を現役合格者数で割った数字を合格者割合として集計します。
見ての通り、聖光・筑駒・開成の3校が合格実績としては抜けています。東大での差が大きいですが、東京一工医で見ても、この3校が50%前後で、共学3校とは20%ほどの差があるのがわかります。(男子校と共学の違いもあるので単純にどちらがすごいとかではなく、他の記事も含め比較の軸として見てもらえればと思います)
学年の半数が東京一工か医学部に現役合格するということで、ちょっと想像を絶する世界に見えます。ただ逆の視点で見ると、中学受験(と高校受験)の超トップ層を集めたこの3校でも半分程度でしかないという見方もできるのかもしれませんが。
私立大学実績(2022〜2024年)
私立大学は重複合格が多いですが、卒業生数を100%としたときの割合を積み上げてグラフ化しました。
ここでは3校の違いが出ています。
筑駒と開成はMARCHまで入れても卒業生数より少ない人数しか合格者を出していませんが、聖光学院は早慶だけでも卒業生数の100%を超えます。(私大の場合、一人で複数学部を受験し合格を取るのは普通にありえるので、100%を超えるのはおかしなことではありません)
これは、筑駒・開成に比べ聖光学院が現役志向強めということだと考えられます。
合格者総数(積み上げ)
ここまでは卒業生との割合で見てきましたが、合格者人数を積み上げてみるとこんな感じです。
合格者数では人数の多い開成がやはり一番多いですが、人数が6割程度の聖光学院もほぼ変わらない数の合格者を出しているようです。
進学実績(2022〜2024年平均)
筑駒・開成は進学者数も公開してくれているので、この次クラスの学校のものと合わせ、進学率グラフも出してみました。
早稲田以外はあまり現役志向が強くないイメージの学校が並んでしまいましたが、私大に関しては合格者数の割に進学者数が多くないというのが分かると思います。
とりあえず開成で早慶合格者数から進学者数の割合を出してみると約17%になりました。ということで、私大合格者数の1/5〜1/6が進学者数というのが一つの目安になりそうです。
ちなみに、この割合を聖光学院に当てはめて計算してみると早慶進学は18%、で国公立のグラフにこれを足すと、計算上は8割が現役で進学しているイメージなのかなと思います。
海外大学実績(2020〜2024年)
もうひとつ、海外大学への合格者数も比べてみます。単年度だと波が大きいので5年間の表を出します。
開成は10年ほど前から海外の名門大学への合格者を出すようになっていて、5年間累計にすると結構大きな数字になります。一般的に海外志向が強いとされている渋渋・渋幕の2校と、実はそれほど大きく変わらないレベルで海外名門大学へ輩出しているところはちょっと世間のイメージと違うかもしれません。
聖光学院も上位の大学を中心に毎年コンスタントに合格者を出しています。一方で筑駒からはあまり多くなさそうです。
開成は進学者数も公開してくれているので見てみると、5年間で24人が実際に進学しているようです。合格者が91人なので、進学率は26%、約1/4ということになります(一般的にはもう少し低いようです)。
これだけの合格人数が出ていても実際の進学者数は年で数人からせいぜい10人くらいなので、全体から見ればそれほど大きなボリュームにはなっていないし、そもそも奨学金枠など経済的な問題も大きいのでこのデータは慎重に見るべきだと思いますが、一応学校の違いとしては挙げていいと思います。
3. 教育内容の比較
教科学習に関しては、国立であり受験向けの授業はしないという筑駒と、中高一貫教育で文科省カリキュラムより先取りする私立2校では大きく異なります。
筑駒の場合はそもそも教科書の内容にもあまり触れないようなアカデミックな授業という話はよく聞きます。
ただこの学習カリキュラムに関してはこれ以上深掘りできる情報が少なく、意味のありそうな比較材料があまり見当たらないので、一旦は国立と私立の違いという点だけに留めておきます。
代わりに、教科授業以外のプログラムについて比較表にします。
教育環境
今、世の中的に関心を集めているであろう次の3点について比較します。
グローバル教育
探求型学習・キャリア教育
ICT
まず聖光学院から触れますが、この学校が筑駒・開成に肩を並べるほどに上昇してきた理由は、もちろん大学合格実績が伸びたのが一番でしょうが、こうした周辺プログラムが充実しているというのも大きいのかなと思います。以前聞いた学校説明会では、聖光塾など学業以外の取り組みを充実させたことで結果的に大学合格実績も伸びたというような話もしていました。
筑駒は自由ということでこの手のものは少ないのかなと勝手に想像していましたが(個人のイメージです)、国立大学附属という教育研究のための学校という背景があるので、SSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)や国際交流拠点校であるなど、逆にこういうアカデミックなプログラムが充実していそうな感じです。
開成は学校側が引っ張るより自主性に任せるというイメージですかね。その分(?)自由度が高く学費も安めという話を聞いたことがあります。
通塾(鉄緑会率)
大学受験のために追加で塾が必要なのかというのは親的に気にするポイントだと思います。
とりあえず東大に圧倒的な実績があり、指定校の在籍者数も公開している鉄緑会の通塾割合がどんなものか見てみたいと思います。
一般論として、学校のQ&Aではほとんどの学校が塾は不要ですと答えている一方、実際には東大合格実績の高い学校ほど通塾率が高いというのが実態と聞きます。鉄緑会の数字だけではわからないし、高校の間だけ通うという人も含まれるはずなので、あくまでもひとつの目安でしかありませんが、面白いのでちょっとコメントしてみます。
開成は生徒数の半分が鉄緑会在籍ということです。確かに絶対数は多いですが、開成=鉄緑会みたいなイメージもある中で半分というのは、多いのか少ないのか微妙なところかなと個人的には思います。高校から入塾する人も多いだろうと考えると、中1から6年間ガッツリという人はそこまでメジャーではないのかもしれません。
筑駒に関しては7割ということで、こうなってくると鉄緑会がデフォルトというイメージになりますね。学校が受験向けのカリキュラムではないということと、国立なので学費が安いというのが理由になりますかね。
聖光学院はそれに比べかなり低いですが、横浜から代々木は遠いだろうという立地の影響と、塾なしで学校で完結させるという学校の方針という両方の影響がありそうです。
まとめ
以上、ここでは表に出ている情報を比較のかたちでまとめました。
別に偏差値や合格実績でどっちが上とか下とか、学校の序列をつけようとかではなく、学校の向いている方向性や入試動向などが見えてくればと思ってまとめています。
志望校選びの一助になれば幸いです。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?