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「受験生の不安と焦り」の処方箋(夏の終わり編)から思う「進学指導」

戻れない夏、過ぎていく時間に成す術もなく…


受験生にとって、「夏8月の終わり」は【不安】と【焦り】で、精神的に追い込まれてしまうことがあります。
・「予定していた過去問の半分も解く時間がなかった…」
・「全然学力が伸びているようには思えないんだけど…」
・「夏の模試、全然解けなかった…」
・「誘惑に負けた…もっと時間を有効に使えばよかった」
・「はぁ・・・頑張れなかった」

そして、「もう…どうすればいいわからない。。。」となり、がむしゃらに過去問ばかりを解き始めたり、生活リズム・メンタルを崩して学校を休んで勉強しようとしたり、
結果として「・・・志望校、落とそうかな」。。。と考え込んでしまう人。そうですね。完全に「負のスパイラル」に入り込む受験生というのは、毎年それなりにいるんです。

夏の終わりの不安への”対処法”:


さて、そういう【不安】や【焦り】が出てきたという人は、試しに、次のことを振り返り・整理してみてください。

  1. どの取り組みができたのか。そして、どの取り組みができなかったか。

  2. 習慣化できたルーティン学習と、習慣化できていないルーティン学習は何か。

  3. あらかじめ立てておいた「8月末時点での学力の目標到達地点」まで、どの科目の、どの単元が、どれだけ足りないのか。

  4. 一日の過ごし方で、どこが無駄だったと思うか。どこを改善できると思うか。

どこまで細かく振り返ることができるかは、当然、人によって程度が変わってきます。ここで大切なことは、自分で精一杯、現状を整理する活動を通して、≪自分の今の状態を俯瞰する≫ということです。
人間は、常に真っすぐ歩けるわけではありませんよね。脇道に逸れてることが分からないままに、色んな道を通っていくものです。何が真っすぐか、どこが真っすぐかもわからない時も多いです。大学受験でもそうです。だって、まだ10代が経験する、初めての大規模な受験です。浪人生といえども、せいぜい2・3回経験した程度。まだ経験したこともない、初めて行く場所の道の先に何が起こるかなんて、どうやってうまく行くかなんて、なかなかわからないものですよ。
ですからね、本来は、何かあるごとに「振り返る・整理する癖をつけておく」と良いですよ。結果として無駄な動きを最小に抑えることに繋がります。脇道に逸れそうになるたびに、自分で修正していくことになりますからね。
今できることは、自分なりに俯瞰してみること、よく考えていくことです。そして、その振り返り・整理した情報から、最善の行動を計画して実行する。受験生にとっては、特に現役生には、それができれば十分じゃないか・・・と思うのは私だけでしょうか。 

今のあなたが本当にやるべきこと


そして、その振り返り・整理をしていった上で、改めてもう1度、みなさんに次のことを考えてほしいんです。

「今、大学の過去問をがむしゃらに解いていくことで、あなたの学力は上がる状態なんでしょうか?」

『私は基礎学力はしっかり身についている。あとは、問題の形式に慣れるだけだ。』という人は、過去問を軸にしてガンガン解いていくことのみに集中すればいいと思います。
偏差値の話ではないですよ?偏差値はあまりあてにはならない。
ではどうやって基礎学力の定着度を測ればいいのか?
簡単です。
手元に基礎的な問題集は1冊くらいはありますよね?
その基礎的な問題集をスラスラと全問正解できるレベルにあるかということです。1冊の問題集を本当に仕上げたかどうか、ということです。
「東進の英文法レベル別問題集3を4周まわしました!」
「青チャートを2周はしました!」
「現代文のアクセス発展編までいきました!」
…とかではないですよ?
何周まわそうが、問題を1回解いてどんどん難易度を上げていこうが、学力が定着していなければ、仕上げたことにはなりませんよね?
基礎問題集1冊程度を仕上げることができていないのであれば、過去問で形式や難易度の高い応用問題の形式等に慣れる学習にたくさん時間を使うよりも、基礎学力を徹底的に高めることの方に時間を多く使った方が、学力は向上しやすいのではないでしょうか。
そして、自分の今の学力位置を確認するためにも、過去問や模試を定期的・計画的に実施していくという「過去問・模試への考え方」が必要だと思うのです。そうすることで、いずれ解けるようになる必要がある応用問題などへの形式慣れもさせていくことにもなります。「過去問・模試」も使い方が大切だと思います。

こういう風に言うと、『そんなペースで間に合うんですか!?』と言いたくなる人もいるかもしれません。もちろん、本来であれば、早めに過去問漬けになっても良い状態にしたいわけですが、それができなかったわけですから、「仕方がない」ことです。学力向上は【積み木】の様なものですからね。
イメージしてください。土台がスカスカな状態で、上の方に大きな積み木をガンガンおいていくのは、崩れやすくなるだけです。土台(=中学レベル~高校基礎レベル)を先にしっかり固めておいた人は、あとでどれだけ上にガンガン積み木を置いていっても、崩れることはないでしょう?
そうです、これは誰でも知っていることです。ですが、これができていない人が多いんです。

受験生は、俯瞰して冷静に…


私は、これまで夏前よりも、≪夏終わりのこの時期がとても大切≫であると思ってこれまで受験指導をしてきました。その理由はただ一つ、どれだけ高3の1学期に学力が上がった人でも、大学受験の天王山と言われるこの高3夏を頑張れた人でも、この「夏の終わり」にメンタルが一気に崩れていく、もしくは自分でも知らない間に変な動きをし始めてしまう可能性があることを知っているからです。これまで、たくさん見てきました。【だからこそ、この夏終わり、まずは受験生自身が冷静に自分の状態と、今後の流れを俯瞰することが大切だと思います。】
そして、その横には、それを精神的に支えることができるだけの「知識」「経験」「情熱」を持つサポーター(教師)がいるかどうかも重要となってくるでしょう。

この記事を見てくださっている“あなた”が受験生である場合、まずは自分自身が冷静な状態をキープしつづけるためにも、俯瞰状態を作りましょう。冷静であれば、頭が柔軟な状態であるはずですから、他者の意見・アドバイスを聴ける状態であるはずです。そして、誰の言いなりにもならず、それが自分とって妥当なのかどうかの判断を自己決定もできると思います。学校や塾・予備校などの周囲を見渡して、頼れるだけの経験値が高く、王道の進学指導ができそうな教師がいるかどうかを、あなたなりに感じ取ってみてください。焦りがあるかと言って、誰かに依存する状態は一切必要ありません。

進学指導の難しさと重要性


 もしも、これを見てくださっている“あなた”が学校や塾・予備校の先生であれば、「知識」「経験」「情熱」の3つをしっかり備えて、受験生をサポートしてあげることが使命だと思います。特にこの時期は気をつけてあげてください。中には、情熱はあるが、知識・経験がない若い先生方もいらっしゃるでしょう。もちろん、私もそこからのスタートでした。しかし、情熱があるのであれば、若手~ベテラン関係なく、教師として、生徒のために進学指導スキルを勉強すればいいだけのことです。実際は、すべてのスキルが中途半端な方も教師には非常に多いです。中堅、ベテラン、管理職であっても、実は進学指導には自信を持っていない方、今まで実はごまかしながらやってきた方がたくさんいるのも現実です。そういう学校組織は意外と多いと思います。それは、塾・予備校でも同じです。
進学指導をノウハウは勉強する姿勢は、若手~ベテラン問わず、素晴らしいことですし、必要なことでもあります。進学指導力の向上を目指さないのは、生徒の大切な進路活動に対する責務を果たしているとは言えません。その教員の無責任・怠慢からくる進学指導力の無さによって生徒の大学合格先が大きく差が出るならば、それは一大事です。進学指導は、やってるだけでは上手くはならないですし、指導法を研究して、実践訓練しなければ、決して上手くはならないのが進学指導の実務です。難しいですよ。簡単ではありません。熱意・努力が必要です。
もちろん、とても素晴らしい指導力を持ってらっしゃる学校の先生方や塾・予備校の先生方がいらっしゃるのも紛れもない事実です。そういう素晴らしい指導力をお持ちの方もたくさんいらっしゃいます。つまり、何事もグラデーション状態ですよね。学校も塾・予備校も、先生みんなが進学指導力を高めれば、受験生にとっては良い状況なのかなと思います。


 では、なぜ「進学指導ができる人」が限られているのかというと、それは、進学指導が専門的な実務・業務スキルだからです。大学を卒業して、何年も教員をしていたら自然に身につくものではありません。教科指導でさえも、大学受験対応できる先生と受験対応できない先生がいるこの現実です。ましてや進学指導スキルは、教員免許取得時には必要がありません。免許などないわけですから、完全なる実務主義ということです。進学指導力は、授業力よりももっと、先生方によって情熱によるそのレベル差が出てきてしまうわけです。
それには、1つ大きな原因があると私は思っています。
それは、進学指導を“教わる場”がほとんどないということです。
周りに指導力の高い先輩がいれば良いですが、それはまさに・・・運です。ですから、基本は、その先生の進学指導に対する“情熱”による努力にかかっているというのが実情だと思います。私は学校・塾・予備校の素晴らしい先輩の先生方にとても恵まれてきました。多くの実績を残せてこれたのは、先輩方のお蔭でもあると思っています。
だからこそ、今や一線から退いたつもりでいる現在の私は、自分が培うことができた「合格させる進学指導スキル」を熱意のある先生方に様々な形で提供していくことの重要性を感じて、今に至っています。

なお、我流だけでは限界が来ます。特に進学校を目指す私学や、公立の進学重点校の先生方は、そのプレッシャーたるや、本当に大変だと思います。本当にお疲れ様です。少しでも何かのきっかけ、お力になればと思います。


高3の「夏の終わり」をしっかり乗り切れた受験生、つまり、土台をしっかり固めつつ、前に進んでいくという学習計画を実行しつづけた人の数多くが、難関国公立大学・難関私大への合格切符を手に入れていきました。天才や秀才ではなく、普通の学力の受験生が難関大学に合格する確率を限りなく高めたいのであれば、それ相応の手堅い手順・やり方があります。
ちなみに、私の中では、少なくとも高校2年4月からの2年プランで行きたいですね。河合模試で偏差値50くらいあれば、GMARCH・首都圏有名国公立レベルの合格率はかなり高く引き上げることが可能です。本来は六年一貫教育での6年プランが良いです。これは学校・管理職目線ですね。しかし、一貫校もしくは高校受験の中3からの4年プランが、指導する側も受ける側もやりやすいかなと思います。これは学年主任目線ですかね。担任の先生目線でいくと、高2年4月からの2年プラン。この3つのプランは、私がコンサル提案する際の切り口とも言えます。1年では結構キツいですが、無理という言葉ないです。自分を高めるためにすぐに努力ができる状態であれば、先ほどの河合偏差値50台であっても、1年、半年でもGMARCH・首都圏有名国公立レベルの合格を手にすることは可能です。ただ、手堅い手順・やり方があるということです。
詳しい学習プラン・ノウハウ等の紹介は、今後少しずつご提供できるように準備していきたいと思います。現時点で少しだけ触れておくと、例えば具体的な各科目の学習プランは、受験当日までの模試・長期休暇などのイベントの流れ、受験生が精神的にアップダウンしやすい時期や出来事などをあらかじめ想定した上で、受験生とともに作っていくことになります。
また、その先にある出願校の決定に至るまでには、多岐にわたる大学受験の進学情報のみならず、人間心理、自分と向き合うこと、選択と集中、パフォーマンス理論、リスクマネジメント思考など、非常に綿密かつ高度な指導スキルや経験が複合的に必要となってきます。
この様な、様々なスキルと経験を丁寧に対処して受験を戦っていくのか、それとも、大雑把な感覚と経験値をもとに受験を戦っていくのか。

最後に…


孫子の兵法にこういう言葉があります。

「勝つ者は先に勝利してから戦い、負ける者は戦ってから勝つ方法を考える」

孫子の兵法

つまり、すでに計画・準備の時点で、勝敗は決していることが多いということです。

受験生は、この「夏の終わり」の時点で自分の今の状態を俯瞰し、足元をしっかり固めることの重要性を認識して、自分の足でしっかり動き始めてくださいね。そして、「やり方次第では、現役生は2月の受験当日まで学力を伸ばすことはできる」ということを覚えておいてほしいなと思います。

ここまで記事を読んでいただき、本当にありがとうございました。
記事の内容は、あくまでも私個人の見解に基づいたものであり、成果を保証するものではありません。実践される際は、参考の域を脱せず、自己責任の上で宜しくお願致します。
皆様のご成功をお祈り申し上げます。

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