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小6で書いた読書感想文

小学校の頃は、必須図書というものがあった。
そして、夏休みかなんかに、その中から本を選んで感想文を書く。

私は読書が好きだったので、感想文を書くのが大好きだった。
よく、小学校から代表に選ばれてどこかに出展して?賞などももらったことがあるので、将来は、小説家、またはあとがきを書く仕事を
したいと考え始めていた。

小学校6年で回ってきた本が、「一房の葡萄」有島武郎だった。
これが、難しくて内容を何度も読んでも、何が言いたいのかまったくわからない。

内容はネタバレにはなるが、横浜の外国基地のそばにある小学校に通う日本人と、ほかの生徒がほとんど外国人、という中で起きた事件である。
海外から来た基地の子どもたちは裕福である。何でも持っている。
そして、戦後だったので、主人公は、日本にある物しか買ってもらえない。

絵を描く授業で空を塗っていた時、12色しかない絵の具で、青が1色。
でも、空はその青ではなかった。絵にこだわっていた主人公は、これは違う、と思って周りを見ると外国人の子は24色か、もっと種類の多い絵の具を持っていた。たいして絵もうまくないのに。
見ていると、その中に欲しい色があるのだ。ほとんど使っていない。

けれど、外国人に「貸して」とも言えない。その色がどうしてもほしくなる。
そのことしか考えられなくなっていた。そしてついに彼は外国人の子が気が付かないときに、その絵の具を取って自分のポケットに入れてしまうのだ。
簡単に言うと盗んでしまった。
なぜ、貸して、といえないのか?ここもわからなかった。
盗るほどなら親に買ってもらうか、諦めるかどちらかしかないだろう、と当時の私はこのあたりから主人公の行動がわからなくなった。

結局、取ってしまったことが、クラス全員にばれてしまい、外国人にいじめられてしまうのだ。
ポケットから絵の具が落ちたかなんかで証拠まで見つかってしまう。

何も言えない主人公。謝れないのか?友達ではないのか?この辺は何も書いていなかった。
騒ぎになっているので女性の先生が聞きに来る。
「絵の具を取ったの?」と聞かれ、認めた。

次に先生はじゃあ、先生と一緒に来なさい、と言われて職員室に連れられて行く。
先生は何も言わない。隣に座って、主人公の男の子は泣いている。
もちろん、注意を受けるのだと思うだろう。
しかし、先生は「自分が悪いことをしたのはわかっているの?」とかなんとか聞く、で、主人公はうなずいて泣いていた。
それ以降、先生は何も言わない。
そして、次の授業はおやすみして、ここで待っていてといって、ブドウを一房彼に渡した。

何も怒られたりしない。何も言わない。不思議だった。
取った彼は、本人に謝ってもいないのだ。普通なら、きちんと謝りましょう、取った理由、など聞かれるだろう、と思って読んでいた。

しかし、帰ってきた先生は、「取られた子はもう、責めないと言っています。明日はきっと学校へ来てくださいね」という。

次の日、行きたくなかったが、彼は先生との約束を守るために学校へ行く。
先生が絵の具を取られた子と、彼を呼び、仲直り、とまた葡萄を一房とって、半分にして分けた、

という話。たしか、これで終わり。短い話だった。

その時、なにこれ?と思って、何を感想文に書いたのか忘れてしまったが、時が経って大人になり、海外ドラマ、たくさんの本を読んで、「ああ、そういうことだったのだ」と気が付いた。まるで忘れていたのに、急に「一房の葡萄」を思い出した。

これは、宗教が関わってくる話だったのだ。
この時の先生は、日本人ではなかった。書かれていないけれど。
日本の仏教だと、修行のあと幸せになれる、お天道さまはいつも見ている、悪いことをしても、自分が見ている、という教え。

だが、この有島武郎が書いた、この外国中心の小学校は、キリスト教だったのではないか、ということだ。
キリスト教は、罪を認め、懺悔することによる、赦し、慈悲の心を教えている。

そう考えると、先生が何も言わなかったのも理解できた。
悪いと思っていることが大切で、取られた子に、赦してあげなさい、ということだったんだ。

日本の考え方と海外の考えの大きな違い。
日本は、潔く認めて対峙して謝ろう、親も一緒に謝りに行こう、という考え。
しかし、キリスト教では、慈悲、赦しが教え。
で、仲直りということ。

なるほど・・・と大人になって合点がいったものの、
小6では、難しいだろ、わかるわけないでしょ。と思った。

私が子供のころの必須図書はとても難しかった。子ども用の本なのかどうかも今となってはわからない。
「車輪の下」ヘッセ、「肥後の石工」などなど。

いやいや、とりあえず、読んでは書いたけれど、難しすぎ。
一房の葡萄だけが、意味不明で、内容は簡単なのだけれど、悪いことした主人公が謝らず、なのに葡萄をもらい、次の日、誰にも責められず、仲直り。

必須図書、今はもっと簡単な本なのだろうと思う。

悩んだ分、大人になるまで覚えていた。
何が言いたいのか、全く分からない本がこの本だった。

いや、わからないでしょ。宗教の違い、教育の違い。
急に日米が一緒になったころの戦後の話。

童話ではない。かなり難易度が高い、と今思う。
気づいたとき、すっきりしたが、当時の感想文を読みたくなった。

そして、今の必須図書を明日調べてみよう、と思った。
是非、「一房の葡萄」にしてほしい。


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