森保ジャパンのサッカーを解説。その正体は継承による複合体。

まず前提の1つにあるのはミハイロ・ペトロヴィッチのサッカー。「3-4-2-1」というシステムで、攻撃時には2ボランチの1枚がDFラインに下がりビルドアップに参加、「4-1-4-1」というシステムに変化し、前線に5枚、更には、SB化したCBも攻撃参加、という攻撃的な戦い方。但し、この戦い方は攻撃的過ぎるので、「4-1-4-1」に変化するのは同じだが、より「5-4-1」でブロックを作って守るの比率を上げ、それが功を奏してサンフレッチェ広島を5年間で3回の優勝に導いた。

そしてそれを、「4-2-3-1」もしくは「4-4-2」でもやろうとしている、と考えると森保ジャパンのサッカーは解りやすい。従って、攻撃時には、SHはワイドよりも中寄りの位置、ハーフスペース、「3-4-2-1」におけるシャドーのような位置取りをして、尚且つ、両SBは高い位置へと上がり、「2-2-5-1」あるいは「2-2-4-2」という形になる。ちなみに、その時の後ろのボランチとCBの配置については、「2-2」ではなく「3-1」である時もある。

更には、ブロックを作る、という事についても、「5-4-1」つまり「5-4」のブロックを「4-4」のブロックに変えて、というだけである。但し、サンフレッチェ広島時代の後期にも、もう少し高い位置から守備をする、という事に取り組んだが、「5-4-1」でブロックを作った状態からであると、FWが1枚なのでハイプレスは難しく、しかし、西野ジャパンが守備時は「4-4-2」になる形で、ある程度はハイプレスを機能させたので、それを継承という形で取り入れている、という部分の違いはある。

つまり、まずは「4-4-2」という形で守備ブロックを作りハイプレス、そこからのショートカウンター。そして、それができなかった時はロングカウンター。しかし、速攻ができずに遅攻に移行する状況になったり、相手がリトリートするなどして速攻ができない試合では、「2-2-5-1」あるいは「2-2-4-2」という形になって攻撃する、というのが森保ジャパンのサッカー。ちなみに、そこに属人的な要素は少なく、例えば左SHが中島でも原口でも、そういうサッカーをする、というのは変わらない。

ただ、攻撃についても、西野ジャパンから継承されている部分が有り、それが右下寄せのビルドアップから左上に大きくサイドチェンジする攻撃。その時に左上で待っているのは左SBではなく左SHである場合もあるので、それをやる時には、「2-2-5-1」あるいは「2-2-4-2」になる、というのは当て嵌まらない。従って、森保ジャパンのサッカーというのは、西野ジャパンのサッカー(ザックジャパンのサッカー+ハリルジャパンのサッカー)+森保監督のサッカーの複合体である、という事が言える。

もっと言えば、そもそも森保監督のサッカーはミハイロ・ペトロヴィッチのサッカーをアレンジしたものなので、ミハイロ・ペトロヴィッチのサッカー+ザックジャパンのサッカー+ハリルジャパンのサッカーが森保ジャパンのサッカーである、とも言える。所謂、ショートパスとコンビネーションという要素もミハイロ・ペトロヴィッチのサッカーとザックジャパンのサッカーに内包されているし、更には、デュエルや縦への速さという要素はハリルジャパンのサッカーに内包されている。つまりはそれがゲームモデル。

ゲームモデル、というのは、再現性のある、という事だと思うが、森保ジャパンには間違い無く前述してきたような事をやろうとする再現性はある。単純にそれが、選手あるいは試合により、上手くできている場合とそうではない場合がある、というだけであり、その範疇の属人的要素は、どうあっても除外できない。そしてまたそれと、「2-2-5-1」あるいは「2-2-4-2」になる、という戦い方が良いのかどうか、森保監督の采配、チーム作りや途中交代の采配が良いのかどうか、というのは別問題である。

そもそも、臨機応変、という事もコンセプトの1つとしているし、自分たちのやりたいサッカーよりも、まずは相手のストロング・ポイントを消す事を重視するような、相手の戦い方に対応したサッカーもできなければ、という事もあるし、個の特性を活かす、という部分でも、完璧に再現性のあるゲームモデルの確立は、その妨げになる可能性も高い。臨機応変さやバリエーションやオプションの不足に陥る可能性も高い。誰がやっても同じにはメリットとデメリットが有り、その最適値を落とし込む事が重要だと思う。

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