関西の進学校事情(網羅編)

今回は関西の進学校事情に関して記載したいと思う。関西は首都圏に次ぐ人口規模を誇るため、実はかなりの実力を備えた進学校が多い。
今回は関西=大阪、兵庫、京都、奈良、和歌山と定義した。関西という場合には、これに滋賀や三重を加えることもあるが、今回はあくまで上記の5つに絞って記述する。
尚、筆者が関西を離れたのはかなり前なので、昔の話が含まれてしまっていることはご容赦いただきたい。関西の進学校を府県別に列挙し、コメントもそこに付記した。今回は東大・京大・医学部の合格者が多いもしくは歴史的に見て進学校と認識されているよねという観点で挙がってくる学校を列挙した。
注:私立には横に★を付記した。

【大阪】
大阪星光学院★
清風南海★
四天王寺★
大阪桐蔭★
北野
天王寺
三国ヶ丘
大手前

→大阪は意外と公立大国で、全国的に強い進学校という観点では実は大阪星光学院しか存在しない。しかも同校にしても灘や東大寺更には甲陽学院に落ちた生徒が進学するため、全国の他の中高一貫校に比肩できるレベルかと言われるとそうでもないとの認識である。地理的な問題で大阪星光学院から東大に進学するのは、大阪南部の生徒が多くを占めるとのことだ。というのも大阪南部に住んでいる場合、灘や東大寺、甲陽学院更には西大和、洛南いずれもかなり遠くなってしまい、同校が有力な進学先として挙がってくることが背景にあるようだ。ちなみに筆者が高校受験した際には、まだ高校受験も存在し、筆者も合格したが今ではもう廃止になってしまっているようだ。高校受験組の進学実績が芳しくないことが背景にあるらしい。東大にはイメージとしては15人程度進学する。学年の人数が少ないこと、医学部や京大にもかなりの割合で進学するので決して悪い進学実績ではない。
私立だと二番手に来るのが男女共学の清風南海、大阪桐蔭と女子高の四天王寺だ。このレベルになると東大は一桁台前半で京大に数十人単位で進学する。清風南海と大阪桐蔭は結構スパルタで有名であり、たまにピカイチで賢い生徒もいるのだがスパルタ教育のせいで後半に失速する生徒も多い。四天王寺は有名なGS出身のモデルや理三のミス東大を輩出する等、スターも生み出すことで有名である。また女子高であるゆえとにかく医学部志向が強い印象だ。
次は公立校の雄であるが、一番最初に挙がってくるのが北野高校だ。ここは昔から大阪ナンバーワンの公立高校であり、大阪北部の秀才を高校受験で集めている。筆者が受験生であったときは北野でさえ、東大合格する生徒は一桁台前半であったが、最近は中高一貫校がこぞって高校受験での募集を廃止していることや理数科を設置し、大阪全土から生徒を集めることに成功しているため東大合格者の数も増加しているようだ。京大に関しては、全国ナンバー1の実績だ。最近では、高校受験で灘を蹴って北野に進学する生徒もかなりの割合で存在するようだ。
次は天王寺高校で、ここは北野よりは南部に立地する。北野と同様に理数科を設置し大阪全土から生徒を集めることが出来る上に大阪南部からは北野は遠すぎることから優秀な生徒を集めることに成功している。それでも東大は多くないが、京大にはかなりの人数を輩出している。
残りも公立進学校であるが、東大には殆ど進学いない上、詳細なことは分からないので割愛する。

【兵庫】
灘★
甲陽学院★
白陵★
神戸女学院★
須磨学園★
長田
神戸
姫路西

兵庫に関しては、灘が断トツトップであり、異論はあるとは思うが全国でナンバーワンの高校だと思う。
筆者は高校受験で灘を受験したが、他の進学校は全て合格する中で灘だけは手も足も出なかった。高校受験では、英語、数学、理科、国語の4科目が存在するのだが、すべての科目が重量級で、特に数学は格別に難しかった記憶がある。東大も受験した身なのでよく分かるのだが、確実に東大(理三除く)よりも難しい。というか合格するには才能が必要だと思う。
学年の人数は200名を少し超えるくらいらしいのだが、まず上から半分の位置にいれば東大理科一類は安パイであるとのことで、上位層はそれより上の理三、京大医学部、阪大医学部に進学するものが多い。
筆者が受験生であった頃の東大実践、東大オープンでは理三の上位層は殆ど全て兵庫だった記憶がある。東大なので東京の生徒が上位を占めるのかと思いきや、殆どが兵庫なのでびっくりした。東京の理系の最上位層はそこまで医者へのこだわりはないため、理科一類にも流れるのだが、灘の場合は理三に集中するようだ。筆者は関西出身であるため、関西をひいき目で見てしまっているし、最近では関西は経済的にも地盤沈下を起こしているようなのでどうなっているかは分からないが、当時は本当に最優秀層は関西に集中していた。首都圏と関西の人口規模が違うにも関わらずだ。関西には天才を育む土壌があるのかもしれない(しれなかった)。
灘に関しては、関西だけでなく四国や九州からも生徒を集めることが出来ているのも大きいかもしれない。いずれにせよ、灘はそれくらい天才が集中している最強の進学校であると思う。
ちなみに関西はかなり理系志向、正確には医学部志向が強い。関東と比較するとエリサラの絶対数が少ないこともあり、高学歴・高収入層の多くが医者であるためだ。そのようなこともあり、灘は東大志向も強い中で、医学部にもかなりの数が進学する。
次が甲陽学院である。灘に隠れがちであるが、全国トップ級の高校である。最近では東大の進学実績も伸ばしてきているようであるが、京大への進学実績は元々全国トップレベルである。学年トップ層は京大医学部や阪大医学部、東大理一に進学するし、学年トップは東大理三に合格するレベルである。
今では高校受験は廃止されてしまったようだ。ここには兵庫や大阪北部の生徒が進学する。京都や奈良から通学している学生は少ないので、灘が西日本から集めることが出来ていることを鑑みるとやはりブランド力が劣ることが分かる。

次は神戸女学院である。ここは女子高の中では関西トップだ。ただ進学実績が公表されていないので、どこまでの進学実績を実際に誇っているのかは分からない。トップレベルの学生は理三に進学することも可能であるし、東大の他の学科にも結構いた記憶がある。
知り合いが数人しかいないので実態は分からないが、兵庫、大阪の富裕層の子女が進学しているようである。関西の中で天才レベルの女子がどこにいるかと聞かれたらここか西大和、洛南辺りを回答すると思う。
次は白陵高校であるが、ここからも平均で15人程度東大に進学する。東大理三への進学者も普通に存在する。兵庫の中でも高砂という割と辺鄙なところにあるため、その周辺に住む天才を集めることが出来ているのかもしれない。
残りの高校からも東大への進学者は普通に存在する。特に公立高校の長田、姫路高校は進学実績も良い。総じて兵庫の高校は大阪の高校よりも進学実績は良い。
【京都】
洛南★
洛星★
堀川

次は京都の進学校を紹介したいと思う。洛南高校は、元々進学実績はかなり良かったが、女子を受け入れるようになってから進学実績はさらに良くなった印象である。中学受験のトップレベルの女子は洛南に進学するようになっているようだ。洛南の東大理三合格者の結構な割合を女子が占める。京都に所在することもあり、京大志向が強く、京大への合格者数がかつてはトップだったこともある。ちなみにかなりのスパルタ高校であることも有名だ。
次は男子校の洛星高校である。ここは中学受験しか募集しておらず、高校から入学することは出来ない。地元の京大志向がかなり強いが、一部の優秀な生徒は東大にも進学する。洛南が仏教系であるのに対して洛星はキリスト教系であり、比較的自由な校風であるとのことだ。
堀川は京都の公立トップ校である。ここは「堀川の奇跡」とかつて言われたほど進学実績が伸びた高校でもある。地元の京大志向がかなり強く、かなりの数が京大に進学するが、東大でも見たことがありトップレベルの生徒は東大にも合格できるレベルであるようだ。
【奈良】
東大寺学園★
西大和学園★
智弁学園奈良★
奈良

奈良は実は全国でもトップレベルの東大・京大への進学実績を誇る。それは2雄の東大寺学園、西大和学園が所在するからだ。
まず東大寺学園の紹介からであるが、ここは奈良の高野原という比較的辺鄙な場所に所在する男子校であるが、全国トップレベルの進学実績を誇っている。関西では灘に次ぐ二番手であり、元々京大・医学部志向が強いため東大合格者数ではそこまで目立たないが、首都圏にあれば開成と比肩するレベルの高校である。京大医学部は20人程度、阪大医学部にもかなりの人数が進学するし、きちんと目指せば理三への合格者も10人とは言わなくとも一桁台後半は目指すことが出来るレベルの進学校である。昔の話になってしまうのかもしれないが、文系もかなり強く、東大文系の上位層を東大寺学園(西大和かもしれないが)の生徒が占めることも多かった。これに加えて東大理系、京大にも進学するのでかなり層は厚いと考えて良い。
生徒の出身県という観点では、勿論地元の奈良も多いが、大阪の東部や区部であれば十分に通学できる距離なので大阪からも学生を集めることも出来ているし、京都、滋賀からも通学している学生もいるとのことだ。灘に合格していたとしても兵庫には通えないため東大寺に進学する生徒もおり、このような学生が進学実績に貢献している。
最近、高校受験を廃止することを公表したようで寂しい限りである。東大寺学園、大阪星光、甲陽学院と関西の進学校が次々と高校受験を廃止していることもあり、関西の優秀な学生は高校受験では公立に進学するしかないのかと考えてしまう。
西大和は最近また急激に進学実績を伸ばしているようであり、直近の東大への進学実績は70人ほどであったと記憶している。元々京大志向も強く関西圏であることを鑑みるとこの進学実績は相当すごいと思う。はっきり言って異常である。
色々な要因はあると思うが、西大和はなぜかそこまで医学部志向が強くないこと、女子を受け入れており優秀な女子生徒の確保に成功していること、かなりのスパルタ教育を行っている(ここは昔の話かもしれない)ことが背景にあるようだ。ただどちらかというと灘や東大寺には合格出来なかった学生が進学していることもあり、天才はそこまで多くないと思う。それが理三、京大医学部、阪大医学部にはそこまで進学者が多くないことの背景にあるのかもしれない。多分東大(非理三)に合格できるがその上には届かないぎりぎりのレベルが西大和なのだと思う。
ちなみに西大和出身の学生は卒業後も学歴にこだわっているものも多く、在学中に結構なスパルタ教育を受けてきたのだなと感じさせられる。
残りの二つも進学校ではあるが、東大への進学者はそこまで多くない。どちらかというと京大への進学者が多い。奈良ではとにかく東大寺と西大和が断トツのツートップである。

【和歌山】
智弁学園和歌山★
近大付属和歌山★
桐蔭高校

和歌山になると進学校はこれくらいで、そのレベルも他県に比較すると高くない。背景としては和歌山の学校に進学するのは和歌山に在住している学生が殆どであり、他県でいえば大阪南部の生徒くらいしかリーチできないことが背景にあると思う。そもそも論として和歌山や大阪南部は人口規模がそこまで大きくなく、教育熱が高くないためこのような結果になるのは致し方ないと思う。
その中でも智弁和歌山はかつてはかなり進学実績が良かった。東大模試でも全国トップレベルの学生がいたし、京大には数十人単位で学生を送りこんでいた。
また和歌山で稼げる職業となれば医者くらいしかないため、医者の子息が多く、医学部志向も結構強かったとの認識である。筆者も高校受験で受けたが、灘・東大寺・甲陽学院・大阪星光・西大和などと比較すると簡単ではあるのだが、それでも一定の難易度は誇っていたと思う。
後は入ってからかなりのスパルタ校であるらしく、大学に入ってから落ちこぼれてしまう生徒も一定の割合で存在する。
他の進学校となれば正直東大はおろか、京大もそこまで進学数は多くない。そのためコメントは割愛する。

関西で進学校と呼べるところはこれくらいだろうか。勿論、これ以外にも進学校があるのは認識しているが、上記の高校以外からは東大はおろか京大もそこまで多くないとの認識である。
関西の進学校はどこも癖が強いのが特徴だが、首都圏にも負けない全国トップレベルの高校が結構多い。注意したいのは東大で留年している学生の結構な割合を関西の中高一貫男子校出身の生徒が占めていたという事実だ。筆者の高校でも東大に進学した学生の多くはどこかで躓いているものが多かった。
関西はどこかのんびりしており、人生に対する切迫感もない。そのため常に競争させられる東大のような大学は合わないのかもしれない。気質だけでいえば絶対に地元の京大の方がフィットすると思う。そのため社会に出てからも苦労するものは多く、筆者もその一人であるとの認識である。
繰り返しにはなるが関西の高校はどこも理系志向であり、特に医学部志向が強い。関西にはそもそもエリサラが多くないし、いたとしてもその殆どが医者であるからだ。もう一つ背景としては国公立の医学部が豊富にあることも挙げられる。京大医学部、阪大医学部、神戸大医学部、大阪公立大学部医学部、京都府立医科大学、奈良県立医科大学、和歌山県立医科大学、滋賀県立医科大学と豊富なラインアップを誇る。
そのため、関西出身でエリサラになるものはそこまで多くないのが実態であるが、なぜか金融機関の市場系の部署には関西人が多い、特にトレーダーに多い印象である。関西の進学校は前述したようにどこも癖が強いこともあり、サラリーマン適性が養われないため、市場系のような対人折衝がそこまで要求されない一方で高い数理的素養が要求される部署と相性が良いのかもしれない。彼らの多くは変人であるが、それでも十分に実績を挙げているので、サラリーマンであっても大事なのはコミュニケーション能力だけではないことがよく分かる。
関西はそこまで物価も高くなく、自然も多く、首都圏と比較するとどこかのどかな雰囲気が漂っており、競争に疲れた本当のトップ層以外は関西で子育てを行うのも一つの選択肢かもしれない。