アスリートと免疫機能

運動は免疫機構に影響を与えることはよく知られており、特に「中等度の運動は免疫機能を促進し,長時間の高強度運動は回復期において一時的に免疫機能を低下させる」という説をオープンウィンドウ説といいます[1].

消化管において,トライアスロンやマラソンなどの激しい運動後には,腹痛,下痢,血便などの様々な消化器病態が誘起され,運動負荷はその強度に依存した消化管血流量の低下(虚血)と再灌流を引き起こし,酸化ストレスの増大,腸管透過性の亢進,そして腸管上皮細胞の部分的傷害を誘発すると考えられています [2].

運動後にはグラム陰性細菌由来リポ多糖(lipopolisaccalide; LPS)の血中濃度が増加することからも,腸管粘膜のバリアが破壊されて細菌が侵入しやすくなっていると考えられます [3].このことは腸への異物の侵入を容易にし,一種の炎症状態を引き起こす可能性を示唆しています。こうした炎症反応は,激運動後の消化器の様々な症状を誘引している可能性があります。

昨今の新型コロナウイルスの感染拡大においても、一見体力が高く免疫力の高そうなトップアスリートでも感染が認められました。

「アスリートだから安心」なのではなく、「アスリートだからこそ注意が必要」なのです。

[1] B.K. Pedersen, T. Rohde, K. Ostrowski, Recovery of the immune system after exercise., Acta Physiologica Scandinavica. 162 (1998) 325-32.
[2] A. Bosenberg, J.G. Brock-Utne, S.L. Gaffin, M.T. Wells, G.T. Blake, Strenuous exercise causes systemic endotoxemia., Journal of Applied Physiology (Bethesda, Md. : 1985). 65 (1988) 106-8.
[3] M. Hiromi, Y. Hiromi, Acute exercise suppression of tumor necrosis factor-a epression in rat liver. The Japanese Society of Physical Fitness and Sport Medicine NII-Electronic Library Service. 51(2002) 203-210.

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至学館大学健康科学研究所特別研究員。管理栄養士、公認スポーツ栄養士。食を通じたアスリートの身体づくりやコンディショニング、ケガ予防のための情報をお届けします。