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漂流教室 No.52 「『源氏物語』から『いにしへ』」

さて、お久しぶりの「源氏物語」です。
しばらく楊貴妃関連のお話ばかりしていたので、話題を「源氏物語」に戻そうと思います。

桐壺更衣のご両親について、こう紹介されています。

父の大納言は亡くなりて、母北の方なむいにしへの人の由(よし)あるにて、親うち具し、さしあたりて世の覚え華やかなる御方々にもいたう劣らず、何ごとの儀式をももてなし給ひけれど、取り立ててはかばかしき後ろ見しなければ、事ある時は、なほより所なく心細げなり。

父である大納言はすでに亡くなり、母である大納言の北の方は、古い家柄の出で、教養のある人で、両親ともにうちそろい、当面は世間の評判もすばらしい方々にも、さほど劣らぬよう、どのような儀式をもおとりはからいなさったけれども、とりたててしっかりとした後見人がいないので、なにかことがある時は、やはり頼り所がなく、更衣は心細そうである。
(訳…いつものように私)

さて、更衣のお父上は大納言。
けれどもうすでにお亡くなり。
通常、父親が亡くなっている場合にはその跡を継いだ兄なんかがいるべきなんですが、どうもお兄ちゃんもいないらしい。

天皇家のお嫁さん、ここでは女御や更衣ですね、
お嫁さんたちの経済的バックアップは実家が担います。
天皇家は特段何もしてくれません。

着るもの、使うもの、調度品や文房具、装飾品なども含めて。
従業員のスカウトや給料。

従業員とは、例えば女房なんかです。
有名どころは紫式部や清少納言ですね。

そういったバックアップをするには経済力が必要です。
ところが桐壺更衣にはバックアップしてくれるお父ちゃんもお兄ちゃんもいない。
これはつらい…
そこでお母ちゃんの出番なんですが、
こう紹介されています。
「母北の方なむいにしへの人の由あるにて」

お母さんは「北の方」です。
お屋敷の北側に居住されているという意味ですね。
中国の後宮も、日本の内裏も北側に配されています。
北側に住むのは奥さんのなかでもトップの奥さん、つまり正妻。
お母さんは父大納言の正妻なのですね。

で、「いにしへの人」。
昔の人?

この「いにしへ」の解釈が実はいろいろあります。
「古風」、「昔気質」、「古い家柄」、「故人」等々。
私は「古い家柄の出」と訳しましたが、
「古風な人」でも、「昔気質の人」でもかまわない。
でも、「故人」ではないな。

古典の解釈にも、その時代時代の流行りというものがあります。
私が源氏物語を習ったころ(おお、今を去ること40年以上も前…)は、
たしか「古風な人」や「昔気質の人」だったと記憶しています。
それが、今は高校で授業をするときは「古い家柄」と訳する。
また、後々お話しますが、娘である更衣の世話をする人の説明をしては、
その人の気質の説明より、経済的立場がわかる説明のほうがよいと思われます。
お金がないと世話なんてできん。
「古くから続く旧家出身」なら少々のお金は持ってそうでしょ?

ということで、以下は次回に譲ります。
そろそろ予習しなきゃ。

業務連絡
授業をするから予習が必要なんですが、
いま、高校2年生が一人しかいません。
そのおひとりのためにせっせと予習しています。
せめてもう数人来てくれんかな?
ということで、小松市及びそのお近くの受験生と高校1・2年生の方々、
国語の成績アップはひふみ塾!

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