JP-MIRAI youth 企画「学生レポーターによるインタビュー」 第4回 :実習生受入れ企業・日系ブラジル人・ 大泉町観光協会(群馬県大泉町)へのインタビュー(上)

「学生レポーターによるインタビュー」企画第4回目は、12月20日に群馬県大泉町を訪問し、技能実習生受入れ企業、大泉町在住日系ブラジル人、大泉町観光協会にインタビューしました!

今までの記事はこちら↓
第 1 回(監理団体)    
https://note.com/jpmirai_youth/n/n8b453e25907f
第 2 回(愛知県・介護施設)
https://note.com/jpmirai_youth/n/n4c7ca3f56d73
第 3 回(静岡県・建設会社)
https://note.com/jpmirai_youth/n/n2e31b62ce0d0
https://note.com/jpmirai_youth/n/n6897ca34e34b

※技能実習制度とは
技能実習制度とは、発展途上国の若者が日本の企業で働くことを通して技術を学び、帰国後にその技術を母国の発展のために活かしてもらう制度です。

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大泉町


最初は、技能実習生受入れ企業(メーカー)の代表取締役社長にお話を伺いました!

― まずは自己紹介をお願いします

大泉町で製造・環境・建設関連の会社を経営しているA(仮称)です。もともと大泉に実家があり、実家ではスーパーマーケットや工場の下請けの会社をやっていました。都内で仕事を続けていましたが、田舎のスーパーマーケットがどんどん衰退していくのをみて実家の会社がなくなってしまうかもしれないと感じ、それまで勤務していた証券会社を辞めて地元に戻り、スーパーマーケットの経営を始めました。数年その仕事をする中で、事業の厳しさを肌で感じるようになり、業態転換をして小売りから加工出荷に切り替えました。切り替えた当時は大変でしたが、今はだいぶ安定してきました。また、大泉町は小さな町ですが、三洋電機(現パナソニック)の大きな工場があるので、加工出荷の傍ら、工場の下請けのようなこともやっています。

Q:実習生を受入れ始めたきっかけは何ですか?

人手不足になったからです。ベルトコンベアなど単純作業の仕事に人が集まらないことから、実習生の人に来てもらえないかと思いました。ですが、その時技能実習制度は労働力を補うための制度ではなく日本の技術を覚えてもらうことが目的だということを知り、受入れするかずいぶん悩みました。それでも、母国に帰ってから活かせる仕事に就いてもらえるよう色々と準備し、7、8年前から実習生の受入れを始めました。


Q:現在何名の外国人労働者(実習生含む)がいますか?


今、会社には300人くらいの社員がいますが、そのうちの1割程です。


Q:実習生の仕事内容は何ですか?


最初は工場でのライン作業をお願いしていました。電気電子部品の組み立てが実習制度の中の1つのカテゴリーにあり、ちょうど自動販売機などの製造をパナソニックが大泉町で始めたばかりだったので、その仕事をしてもらいました。また工場の他に、惣菜の製造というカテゴリーもあります。白衣を着て食品製造工場にてニンジンやジャガイモを切ってパック詰めをしてもらっています。悩んだ末に始めた技能実習生の受入れですので、実習生の人たちには技術を覚えてもらいたいと切に願っています。


Q:実習生はどのような目的で日本に来ますか?


母国にいる家族のために来る人が多いです。子供が生まれたばかりのお母さんが来たこともあります。「生まれたばかりの子どもの世話は大変だし近くにいた方がいいのでは?」と面接で聞くと、「私はこの子の将来のために日本に行きたい。この子の教育は祖母に頼んでいるから是非私を採用して欲しい。」と言われました。日本に来て、技術を身につけたいという思いもあると思いますが、それ以上に生活のため、家族のため、子供のために稼ぎたいという思いを感じます。それと同時に、そういう人たちに来てもらうのであれば、やはり環境も整えてあげたいし、最後母国に帰る時には日本に来て良かったと思ってもらえるようにしてあげたいと思います。仕事場や住むアパートにしても、日本人と変わらない環境を用意し、受入れています。中には、人の好き嫌いや同僚間の喧嘩などもありますが、そこは間に入りながらうまく仕事をしてもらっています。


Q:受入れにあたって不安はありましたか?


言葉ですね。加工の部分で勝手に作業されてしまうと不良製品になってしまうので、具体的な作業指示を理解してもらえるか不安でした。


Q:最初の受入れと2期目以降で何か違いはありましたか?


2期目以降と比べると言葉の面もあり、1期目は大変でした。直接彼らを担当する部門長には、「今度来る実習生は日本語があまりできないけど、ちゃんと仕事を覚えてもらえるように大事にしてください」「国に帰る!と言われないようにきちんと面倒をみましょう」と言っていました。そんなふうに、みんなで実習生の子達に安心して働いてもらおう、仕事を覚えてもらおうという気持ちをもって乗り越えてきました。

 
Q:研修生から何か要望を聞くことはありますか?


ありますね。「給料を上げてください」や「残業を増やしてください」ですね。日常的なことというよりは、お給料のことが多いです。部門長から聞く実習生の仕事の要望は、できる範囲で対応しています。ただ、特別扱いはしません。日本人と同様に扱った上で、言葉のハンデなど配慮しなければならないことは対応するように伝えています。だんだん部門長が頑張っている実習生に感情移入をして、「社長お願いがあります。あの子達の給料を上げてやってくれませんか!」と言われることがありますが、日本人と差別しないことが原則ですから、上げるにしても定期昇給の時にするなど、平等にしています。


Q:実習生は帰国後どのような仕事をしていますか?


日本語を活かした仕事、特に送り出し機関で働く人が多いと聞いています。日本で得た技術というよりは、日本語とかコミュニケーションを活かした仕事ですね。ベトナムで日本に関する仕事をしてくれる人がいるのは嬉しいなと思います。


Q:面接に来る外国人はどの国の人が多いですか?


就職で面接を受ける人は、ブラジル人やペルー人が多いです。ただし、実習生は、ベトナムから来る人がほとんどです。


Q:採用ではどういうところを重視していますか?


日本語能力は大事ですが、最も重要視しているのは、作業がきちんとできるか、真面目に働いてくれそうかですね。外国人に限らず時間にルーズな人は採用したくないというのもあります!


Q:実習生と日本人社員の交流はありますか?


基本的には実習生と日本人社員は同じ職場で働いているので、必然的に交流はあります。日本人に実習生へ指示出しをしてもらうこともあれば、ベトナム人同士で指導してもらうこともあります。その他に、実習生の子達に日本文化を味わってもらおうと、都内に行って日本文化を堪能できる施設を訪問したり、着物を着て写真を撮ったりする機会も設けています。


Q:実習生と地域住民との交流はありますか?


ここ2年はコロナでできていませんが、食品工場の駐車場でお花見をすることがあります。その時近隣の人から「楽しそうだね」と声をかけられることがあるので、一緒に参加してもらっています。ただし、会社として「積極的に地域社会と関わってください」と言うことはありません。道路清掃などには一緒に参加してもらっていますが、地域社会との交流を無理に持たせようとまでは思っていません。日本人でも、無理やり誘われたら嫌な人もいますよね。日本人が嫌なことは外国人にとっても嫌だと思うので、楽しいと思う範囲でやっています。


Q:実習生の受入れにあたって、地域の反応は考えましたか?


受入れをはじめた時は、地域の人の反応までは考えられなかったというのが本音です。とにかく人手不足でどうすればいいかと思っていました。周りの人にこのことを相談したら、「技能実習生に来てもらっているよ」と教えてくれた会社がありました。そこで技能実習制度のことを知り、組合の人に相談しました。その時、組合の人からは「人手不足を補う制度ではないからね!」と何回も言われました。それから、制度を理解し、受入れる条件も整えていきました。悩んだことは、どうしたら制度の目的と合致するかということでした。なので、地域の人たちの意見や、コミュニティになじめるかということは考えていませんでした。来ることが決まってからは、ゴミ出しなどしっかり教育しようと思いました。


Q:仕事においてコロナの影響はありますか?


工場の仕事は操業停止や部品が入らないことによるラインの停止などがあったので大変でした。食品は急に仕事がなくなることはないですが、物流の影響によって注文の増減があります。それでも、家で食べる人が増えてスーパーマーケットの利益が上がるといった好影響もあり、仕事量的には特に大きな違いはなく、実習生にとって給料に関わる不安はなかったと思います。


Q:「人手不足だから人が欲しい」という考えから「日本で技術を身につけて欲しい」という考えに変わったきっかけを教えてください。


やっぱり面接ですね。小さな子どもを国に置いてまで日本に来たいと言ったお母さんの話もそうですが、日本に行きたいという熱意や、家族を助けたい、家計を何とかしたい、子供の将来のためにお金を貯めたい、といった必死な想いを直接聞くと、そういう思いで日本に来るんだなと考えさせられますね。そうした中で、大事にしてあげないといけないなと思いました。自分の国から3年間、見ず知らずの国に行って、誰も知らない国に住んで働くという大変な覚悟を決めて来るわけですから、やはり大事にしてあげたいなと思います。この子達が本当に日本に来て良かったと思ってくれる環境を作ってあげないといけないなと本当に思いました。


Q:日本語教育について、社内で日本語の指導を行ったり、社外で日本語教室に通ってもらうことはありますか?


地域でベトナム人のための日本語教室が開かれていて、そこに行ってもらうことはありました。社内でも教えますが、なかなか日本語を教えるための時間というのはとりにくいので、外部に行って学んでもらっています。
日本人が外国語を学ぶ時も同じだと思いますが、やはり個人の熱意によって同じ教育をしても程度の差は出てきます。そのため、どうしても覚えの早い子に指示を出して、他のベトナムの子には通訳をしてもらうということが業務上は多くあります。日本語検定を受けてもらって、受かったら時給を上げるという制度も設けています。これは仕事のためだけではなく、日本にいる3年間の間に、仕事とともに日本語も覚えてもらうことで将来に役立たせて欲しいからです。

― 最後に多文化共生や外国人労働者関連に興味がある若い人に向けてメッセージをお願いします。


多文化共生を勉強・研究しようと思っている方には、「多文化共生が良いかどうか」「多文化共生をしている町がどんな風になっているか」ということだけをレポートにしないでもらいたいです。「本当に異文化の人たちが、日本で暮らすことが良いかどうか」「どうしたら良くなるのか」を是非考えて欲しいです。私は、どんどん外国人に来てもらって移民も受け入れて、日本に暮らす人を増やす方が日本にとって良いと思っていますが、皆さんにもどうすれば日本が良くなっていくか、そのための多文化共生がどうあるべきかを考えていただけたら嬉しいです。大泉に来て多文化共生の現場を伝えてもらっても、レポートにはなりますが、「それをどうしたら良いか」というところまで踏み込んで考えなければ、あまり役立たないと思います。私たちは多文化共生をする実践者ですが、どうしたら良くなるのかまでは考えが及んでいない人の方が多いです。なので、外から研究してくれている皆さんには、どうしたら良くなるかを研究していただき、教えていただきたいです。その考えがあっているかいないかは分かりません。正解はわからないけど、そこまで踏み込んで研究してもらえると、我々はとても嬉しいです。

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学生レポーターの気づき・学び

実習生の方を実際に受け入れていらっしゃる企業様に直接お話を伺う機会は得難く、大変貴重な経験をさせていただきました。当初は自社の人手不足という逼迫した問題から考え始めた受入れが、実習生1人1人の思い・背景を知る中で、彼らが来てよかったと思ってくれる、彼らの為にもなる実習にしたいと思われるようになったというお話が心に残っています。実習生・日系人・移民などと主語を大きくして語ると、ともすればそこにいる個人が希薄化してしまう。多文化共生社会に求められることは、互いに歩み寄る対話を通し、大きなラベルの下の人間を感じ取ることだと再確認しました。今回の経験をもとに、今後も一層ユース活動、多文化共生実現に関わっていく所存です。(遠藤)

ブラジル、タイ、ベトナムなど様々な国の店が並び、レストランで飛び交う多言語を聞く中で、大泉町がインターナショナルタウンであることを実感しました。その町を支えているのは地元企業であり、企業を支える実習生とその実習生を支える社員の方々の支え合う関係だと思います。インタビューでは、そうした実習生の来日にかける思いや企業の方の実習生に対する思いを肌で感じることができ、地域における多文化共生を考えるうえで大変貴重な経験になりました。今回の訪問で学んだことを今後のユース活動に活かし、多文化共生社会づくりにつなげていきたいです。(藤井)

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JP-MIRAI youthとは
JP-MIRAI youthは、責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム(https://jp-mirai.org/jp/)のユース組織です。2021年8月から始動し、外国人労働者に関する活動・研究をしている、または関心を持つ方のための学びや交流の場を提供しています。

「学生レポーターによるインタビュー企画」とは
学生が外国人労働者受け入れ支援に取り組んでいらっしゃる企業・監理団体・送出機関等に取材をし、さらに外国人労働者の方々にインタビューをすることで、多文化共生や在留外国人に関する知識と理解を深めることを目指す企画です。学生が外国人労働者支援の現場を実際に訪問し、そこで得た学びや気づきを同世代に発信していきます。

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