JP-MIRAI youth企画「学生レポーターによるインタビュー」 第3回:建設会社(実習生受入れ企業・静岡県) 技能実習生・特定技能外国人へのインタビュー(上)

「学生レポーターによるインタビュー」企画第3回目は、静岡県にある建設会社2社を訪問し、職員の方々と技能実習生や特定技能外国人にお話を伺いました!

今までの記事はこちら ↓

第1回(監理団体) https://note.com/jpmirai_youth/n/n8b453e25907f

第2回(愛知県・介護施設) https://note.com/jpmirai_youth/n/n4c7ca3f56d73

1社目は、鉄筋にコンクリートを流して固まるまでの間、その形を保持しておくための「型」をつくる、型枠工事を行っている建設会社です。これは建物を建てる中で最も基礎的な工事であり、高い正確性が求められます。

※技能実習制度とは
技能実習制度とは、発展途上国の若者が日本の企業で働くことを通して技術を学び、帰国後にその技術を母国の発展のために活かしてもらう制度です。

※特定技能制度とは
特定技能制度とは、人材確保に困難を抱える特定の産業分野で、即戦力となる外国人を受け入れるための制度です。在留資格「特定技能」の取得には、一部例外を除き、技能試験や日本語試験の合格が必要になります。

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1. 建設会社の代表取締役へのインタビュー  

10月15日に建設会社を訪問し、代表取締役にお話を伺いました!

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― 技能実習生受け入れについて教えてください

Q: 技能実習生を受け入れ始めた経緯を教えてください

私たちは若い人材を確保するよりも、職人を育て上げることを目的に活動しています。ただ若い人材に技術を伝承するためだけではなく、ベテランの職人にコーチングする機会を与えたいと考えていました。技術を後輩に伝授することで、今までに身につけたスキルをブラッシュアップすることができます。
しかし、入社してから1年以上働き続ける人は10%もいないような状態で、長期でコーチングできる相手がいないのが現状です。 そんな中、技能実習制度を活用すれば型枠大工の技術を海外に伝承でき、職人にコーチングする機会を与えることができるのではないかと考え、利用し始めました。現在は、技能実習満了後も継続して勤務している特定技能外国人2名と技能実習生1名を受け入れています。

Q:3年間の技能実習期間は、一人前の職人になる為には短いですか?

とても短いです。日本人でさえ7~10年かかるので、日本語を覚えなければいけないというハンデを考えると、最低10年は必要です。
とはいえ、ここで働く実習生たちは仕事を覚えるのが早いので、5年ですべてのスキルを身につける人もいます。ただし、現場リーダーまで成長させる為には、より高い日本語力が必要なので、10年以上はかかると思います。

― 技能実習生との仕事について教えてください

Q:実習生の受け入れや、採用前にはどのような不安がありましたか? その不安に対して、現実はどうでしたか?

一番大きな不安は、言葉でした。例えば「そこへ行くな」や「危ない」といった言葉が伝わらないと、事故に繋がります。日本語が理解できないことが、命に関わる可能性もあるので、とても不安でした。
実際にここで働かれている外国人の語学力は、個人差があります。N3(注1)をすでに取得した人もいれば、ぎりぎりN4(注2)合格の人もいます。わかりやすく言えば、小学校低学年レベルから幼稚園レベルまでの能力差があります。しかし、今まで受け入れた実習生で日本語が全く通じない人はいませんでした。

(注1)日本語能力試験 3 級。日常的な場面で使われる日本語をある程度理解することができるレベル。

(注2)日本語能力試験 4 級。基本的な日本語を理解することができるレベル。

Q:安全面で気を配っていることはありますか?

危険な時は大きな声で「危ない!」と叫ぶよう、日本人の職人に指導しています。また、送出し機関(注3)には「危ない」「危険」という言葉や、危険告知の看板の読み方を現地で教えるように伝えています。

(注3)現地で技能実習生を募集し、日本へ送り出す機関のこと。日本語教育や、現場で必要な実技の教育を行う。

Q:言葉以外で何か困ったことはありましたか?

宗教と文化の違いですね。カルチャーショックを受けることもしばしばあります。例えばインドネシア人の実習生がいきなり裸足で現場に入った時はびっくりしました。あとは、インドネシアではコーヒー粉にそのままお湯を入れて上澄みを飲むのですが、それを知らずに飲んだので、驚いて吐きだしてしまいました。

Q:実習生への福利厚生に関して、衣食住等で会社が提供しているものはありますか?

日本人と外国人に対して、平等な福利厚生を提供しています。家賃は必要ですが、住居もあります。一軒家をリフォームし、各職人のプライベート空間を確保するための一人部屋を設けています。

― 技能実習生とのコミュニケーションについて教えてください

Q:仕事において、コミュニケーションで気を配っていることはありますか?

「叩かない」「怒らない」「怒鳴らない」ことを方針に、親切、丁寧に教えるよう日本人の幹部ミーティングでよく注意喚起しています。
また、マニュアル書を「本」と呼ぶ人もいれば、「小さな単行本」「教科書」と呼ぶ人もいます。専門用語では「セパレータフック(注4)」という工具のことを、「セパ抜き」、「セパぐり」と呼ぶ人もいます。このように一つのものに複数の名前を付けると実習生に負担を与えてしまうため、一つ一つの物に対し呼び方を統一するよう日本人側に呼びかけています。

(注4)型枠同士を繋げるためのフック。

Q:日本人と技能実習生は、どのような交流がありますか?

現場で働いている職人は実習生とよくコミュニケーションを取っています。実習生の出身国の文化に興味を持って、出身地について調べたり、帰国後のキャリアについて話しているようです。
私も休日にはよく一緒に出かけます。彼らと接する時は日本のお父さんという立場で、叱るべき時にはきちんと叱り、お金やプライベートに関する相談があれば、できる限りのサポートをするようにしています。

― コロナ禍での技能実習について教えてください

Q:コロナ禍は、実習生の生活や仕事にどのような影響を与えていますか?

業務内容には大きな変化はありませんが、新しい実習生が入って来ないため、思う通りのコーチングができていないのが現状です。また、感染防止のため実習生に外出を控えるようにと呼びかけていますが、旅行に行けずストレスが溜まっているようにみえます。実習生の中には親御さんがコロナで亡くなられた人もいて、感染を非常に怖がっていると思います。

― 実習生の将来について教えてください

Q:実習実施後、実習生たちにはどのような活躍を期待しますか?

実習生には母国で身につけた技術を活かして欲しいですが、期待する以前に実習生が帰国後に型枠工事の技術を活用できる場所や仕組みを我々が作らないといけません。特定技能外国人として技術をさらに深めている人もいますが、「技術を活かす」というインセンティブがなければ、学ぶ側の学習意欲も下がります。そこの仕組みづくりができれば良いと思います。

― 外国人労働者支援に興味をもつ若者へメッセージをください!

日本は決して優れた国ではなく、20、30年後には日本の若者が東南アジアへ出稼ぎしなければならない日も来るかもしれません。グローバルな視点で区別や差別をせずに、多種多様な人と関わってみてください。
技能実習生や特定技能外国人の皆さんはすごいですよ。彼らのように幹線道路もないような場所から来日するというバイタリティを持つ日本人はなかなかいません。自分の町から出たくないという日本人の職人には、アウェイの地で教えて来いとよく言います。海外で仕事をすることがどれだけ厳しいのか経験すると、互いに分かり合えることがあるのではないかと思います。


2.技能実習生と特定技能外国人へのインタビュー           

こちらの建設会社で働いている技能実習生と特定技能外国人は、日本人の若手職人と同じカリキュラムで型枠大工の技術を学んでいます。先輩が作った設計図に沿って加工場で加工材を作り、建設現場で組み立て等を行います。

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インドネシア出身の特定技能外国人(元技能実習生)2人(AさんとBさん)と技能実習生1人(Cさん)にインタビューを行いました!

― まずは自己紹介をお願いします!

Aさん:ジャワ島から来ました。今年で24歳です。趣味は絵を描くことです。母国では油絵をたくさん描きました。

Bさん:同じくジャワ島出身で、今年で25歳です。アニメを観るのが好きです。今は「東京リベンジャーズ」と「鬼滅の刃」を観ています。

Cさん:インドネシアのスマトラ島から来ました。24歳です。小学生の頃からサッカーをやっています。チェスも好きです。

― なぜ日本に来たか教えてください

Aさん:お金が欲しかったのと、日本で仕事をしてみたかったので来ました。

Bさん:私もお金を稼ぎたかったのと、日本の生活や文化を体験してみたかったのが理由です。あとは日本人の女性はきれいだと聞いたので、実際に会ってみたかったからです。本当にきれいでした!

Cさん:海外で生活することが夢でした。日本を選んだのは、家族から「日本へ行ける人は頭が良い人」と言われたからです。日本に来るために頑張って勉強しました。

― 皆さんの仕事について教えてください

Q:仕事で楽しかったことは何ですか?


Bさん:現場の仕事が楽しいです。時間が経つのが早く感じます。

Aさん:最初は加工場が好きでしたが、一日中木を切ったり組み立てたりしていると、飽きてしまいます。現場はくぎ打ちや資材運びなど作業が多くて楽しいです。

Cさん:現場の仕事が楽しいです。他の会社の人(同業他社の社員)と話せるからです。

Q:仕事をする中で難しかったこと、または大変だったことは何ですか?

Aさん:高いところで作業するのが怖かったです。

Bさん:私も同じです。30m以上19階建てのホテルで作業したときは、とても怖かったです。

Cさん:私は設計図を理解するのが大変でした。現場によって図面が異なるため、どういう見方をすればいいか分からなかった時もありました。

Q:一日のスケジュールを教えてください。

Bさん:5~6時に起き、朝ごはんを食べてから作業場へ行きます。貯金するためにお弁当を作っていた時期もありましたが、最近はコンビニでお昼ご飯を買っています。17時頃仕事が終わったら、家に帰ってお風呂に入ったり、夜ご飯を食べたり、アニメを観たりしています。

― 日本での生活について教えてください

Q:国内旅行をしたことはありますか?

A:大阪に住む友達から新幹線のチケットの買い方を教わり、京都へ行きました。

B:社長さんと一緒に静岡でスキーをしたことがあります。あとはインドネシアの日本語学校で出会った友だちとなばなの里(注5)へ行きました。青春18きっぷを使って東京と茨城へ行ったこともあります。

(注5)三重県桑名市にある日本最大級の花のテーマ―パーク。

C:スポーツが大好きなので、初めて水上スキーをしました。私たちは休日を使って年5回ほど旅行していましたが、今はコロナでなかなか行けません。今年のクリスマスの予定はまだたてていないです。

Q:どうやって日本語を勉強しましたか?これからも日本語を勉強したいですか?

Bさん:アニメを見ながら日本語を覚えました!

Cさん:カラオケが好きなので、日本語の歌を歌いながら覚えています。また、作業の休憩時間を使って、1日10分ぐらいアプリで勉強しています。

― 皆さんの将来について教えてください

Q:技能実習を終えた後は、何をしたいですか?

Aさん:あと6か月働いてからインドネシアに帰って、友だちと絵画関係の仕事をしたいです。

Bさん:来年帰国することを考えています。今は家族と月に1,2回ビデオ通話をしていますが、やはり直接会いたいです。

Cさん:日本に残り、これからも日本語、日本文化を学び続けたいです。仕事ができるところはたくさんあるけれど、私は型枠大工を学び続けたいです。

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学生レポーターの気づき・学び

職人のスキルアップには伝承の技術が不可欠であることを知り、教える職人と学ぶ実習生のwin-winな関係をもたらす機能が技能実習制度にあることを知りました。その一方で、実習期間の延長など、現在ある規定を改善する必要があり、より現場に寄り添った制度にしていくことが求められていると感じました。実習生とのコミュニケーションにおいて、複数呼び方がある用語の統一は大切な取り組みだと感じました。来日してすぐ働き始める実習生にとって、言語面でのサポートは仕事の効率を上げるだけでなく、精神的ストレスの軽減につながると考えます。実習生の方々へのインタビューを通しても、そうした職員の方々による配慮が、楽しい職場を築いているのだと感じました。(藤井)

技能実習生や特定技能外国人の受け入れは彼らに技術を伝承し、母国の発展につなげるだけではなく、日本人職人にコーチングする機会を提供することもできることを初めて知りました。教えることはいかに難しいか、またどのぐらい大切なのか代表取締役へのインタビューを通して初めて感じることができました。外国人材が習得した型枠大工の技術を母国で活用できるよう、今後はその場所や仕組みが整備されることを期待します。(荘)

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JP-MIRAI youthとは
JP-MIRAI youthは、責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム( https://jp-mirai.org/jp/)のユース組織です。2021年8月から始動し、外国人労働者に関する活動・研究をしている、または関心を持つ方のための学びや交流の場を提供しています。

「学生レポーターによるインタビュー企画」とは
学生が外国人労働者受け入れ支援に取り組んでいらっしゃる企業・監理団体・送出機関に取材をし、さらに外国人労働者の方々にインタビューをすることで、多文化共生や在留外国人に関する知識と理解を深めることを目指す企画です。学生が外国人労働者支援の現場を実際に訪問し、そこで得た学びや気づきを同世代に発信していきます。


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