JP-MIRAI youth企画「学生レポーターによるインタビュー」 第1回:監理団体へのインタビュー(VRB協同組合様)

「学生レポーターによるインタビュー」企画第1回目は、VRB協同組合様を取材しました! 

VRB協同組合は、中小企業の活性化と共生社会の実現を目指し、技能実習生と実習実施企業の双方に対して積極的な支援を行っている監理団体です。 

VRB協同組合のウェブサイトは右記をご覧ください。→ https://vrb.jp/ 

※技能実習制度とは 

技能実習制度とは、発展途上国の若者が日本の企業で働くことを通して技術を学び、帰国後にその技術を母国の発展のために活かしてもらう制度です。

 ※監理団体とは 

監理団体とは、技能実習生を受け入れ、その活動及び受け入れ企業へのサポートを行う団体です。企業の依頼を受け、技能実習生の募集、受入れまでの手続きや現地での面接を行うほか、受入れ後は各企業が適正な技能実習を行っているかどうか、監査と指導を行います。

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 9月29日、 VRB協同組合の西田代表理事、宮城様にオンラインインタビューを実施しました。

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― VRB協同組合の取り組みについて教えてください

 Q:西田さんが監理団体の業務を行うVRB協同組合の代表を引き受けたきっか けは何ですか? 

西田様:「本来の趣旨に基づく技能実習」を行いたいと思ったからです。東南アジアの山奥から来た技能実習生が建設現場で型枠施工(注1)をしていることがありますが、家族が畜産業で生計を立てているのに、日本で型枠施工の技術を学んで帰国後どうするのだろう、といった職種のミスマッチに対する違和感がありました。 

また、私はVRB協同組合の代表を引き受ける前、インドネシアなどの発展途上国で長きにわたり国際協力に携わりました。その中で、JICAの教育や人材育成のプロジェクト等で育った人たちがもっと日本に来て活躍してくれれば、日本と途上国でよい人材還流が起こるのではないかという考えがありました。JICAが途上国で実践する人材育成と技能実習制度が上手にリンクする工夫が必要だと思いました。 

このような背景から、「本当の技能実習」をしたいと思ったことが、代表理事を引き受けた理由です。

 (注1)型枠施工は建設業の技能実習の職種の一つ。

 Q:技能実習生受入れのサポートにあたって、力を入れていることは何ですか?

 西田様:技能実習生をサポートする上で一番大切なことは、受入れ企業のマインドの醸成です。技能実習生を「安い人件費で安定した労働力」という意識ではなく、「技能実習制度を人材育成と捉え、実習の祖国に思いを馳せてもらえる」よう、受入れ企業をしっかりサポートしています。同時に、技能実習生が日本で仕事や生活をする上で困らないようなサポートも大切にしています。日本語の語学面の指導に限らず、「おはよう、さようなら、ごめんなさい」の挨拶、報連相ができるかどうかが大切です。

 また、無理に技能実習生を企業に紹介せず、ニーズに合った外国人労働者を選んでもらうという点にも気を配っています。例えば「3か月間だけ人手が欲しい」という企業であれば、技能実習生を無理に雇う必要はなく、アルバイトで十分なので、「VRBのグループから留学生に来てもらうのはいかがですか」という提案をします。そのような提案ができるように、日本語学校などと連携しています。 技能実習制度を無理やり使おうとすると、企業にも実習生にも無理が生じ、制度が実態を壊してしまいます。なので、私たちVRBは、外国人が何をしたいのか、企業がどのような外国人を受け入れたいのかを見極めるようにしています。

 ただ、これは実習生を受け入れてくださる企業を減らすことになり、結果として監理団体の運営費用を得る機会を自ら手放すことに繋がるので、強い信念が必要です。

 ― 外国人材受入れの現場について教えてください (技能実習生・受け入れ企業)

 Q:技能実習生から仕事場や生活の困りごとの相談を直接受けることはありますか?

 宮城様:はい、しょっちゅうあります。最近は、介護施設や工場で勤務する実習生等、祖国と比べて職場のコロナ対策が厳しく、不安を感じる実習生も多いです。コロナ禍においては、LINEやZoomでのリモートのフォローをしています。長期間連絡がない場合は、直接電話をしたりします。西田はインドネシア語を話すので、現地語でのサポートも行っています。 

Q:技能実習生のサポートとして最も求められていることは何だと思いますか? それにどのように取り組んでいますか? 

宮城様:ニーズは人それぞれ異なるので、VRBではそれぞれの技能実習生の希望に沿ったサポートに取り組んでいます。例えば、日本語学習に対する意識が高く、今後のキャリアに生かしたいと思っている実習生には日本語試験のサポートや無料の日本語授業を行う地域の団体・学校の紹介をしています。給料を上げてほしいという相談もしばしばありますが、そのような相談に対しては、実習先企業に働きかけつつ、実習生に対して「給料を上げてもらうためにはどのようなことを努力すればいいのか」「そのために日本語や仕事関係の資格の勉強を頑張ろう」という話をして、実習に前向きに取り組んでもらえるように取り組んでいます。 

Q:実習実施企業から受ける相談としてどのような内容がありますか?

 西田様:様々な相談や質問をいただきます。例えば最近だと、技能実習生が「ちょっとトイレに行ってきます」と言って30分くらい帰ってこなかったという相談を受けました。日本人の「ちょっと」と彼らの「ちょっと」は違いますよね。これは日本語学習の問題ではなく、生活習慣の違いが原因です。技能実習生だけにいくら働きかけても改善はむずかしいので、企業にも働きかけ、多文化共生や異文化理解を推進する必要があると思います。 

宮城様:また、技能実習生が何を目指しているのかがわからないという相談もあります。例えば、技能実習生が採用面接では、はっきりと「日本で介護を学びたい!」と断言して日本に来日したにも関わらず、来日後、他にも魅力的な仕事を見つけたり、新しい分野に興味関心を持ったりして、将来について悩んでいる様子を目にすることがあるようです。

 実習生を子供を育てるように手をかけている実習実施企業からすると、そういった話を聞くと力が抜けてしまうようです。そんなとき、私たちはニュートラルな立ち位置を生かして、どちらの話も聞くことができます。双方の話を聞いたうえで、どうしたら実習生側にも企業側にも納得してもらえるか、私たちで議論をします。答えが出ないことも多いですが、選択肢を提示し、その中から選んでもらうようにしています。 

―技能実習のあるべき姿について教えてください 

Q:技能実習が成功するために大切なポイントはどこだと考えますか?

 西田様:技能実習がうまくいくかを決める第一関門は現地での採用にあると考えます。国の中でも地域や文化、宗教によって生活が全く違うことがあるため、どの地域の実習生を採用するかを十分に配慮しないと企業でトラブルが起こることがあります。例えば、企業から「うちの実習生は2人ともインドネシア人のはずなのに二人の間で全然話さないのはなぜか」と聞かれたことがありますが、そもそも二人はインドネシアのスマトラ島とジャワ島という違う地域からきていたため、話す言語が違いました。そのほかにも、「とんかつ屋さんに連れて行っても、なんでこっちのインドネシア人は食べるのに、あっちのインドネシア人は食べないんだ」という声もありました。同じ国出身でも宗教が違うと食べられる食材も変わりますよね。このようなボタンの掛け違いが生じないように、実習生受入れの入り口の段階で気を付ける必要があります。

 Q:技能実習生の受け入れに成功している企業としてどのような事例がありますか? 

宮城様:例えば介護に関して、実習生が企業に良い影響をもたらした事例があります。介護の現場では、同じような業務が続き、さらにそれまでできていたことができなくなっていく利用者さんを見ているので、職員の方々がモチベーションを保つことが難しいそうです。そんなところに、あまり経験はないものの、「将来母国で介護の仕事に就きたい、そのために勉強をしたい」という強い思いのある実習生が入ることで、すごく良い相乗効果があったケースがいくつかあります。最近聞いた話ですが、介護施設でのレクリエーションの時間に、どんなにプロの日本人職員の方が声がけをしても、何も応じなかった認知症のおばあさんがいたそうです。しかしそこに実習生が入り、利用者に寄り添って日々話しかけを行い、彼女なりの静かな介護を継続したことで、気が付いたらそのおばあさんが塗り絵をしていたそうです。それが施設内で話題になり、「マジック○○(実習生の名前)」と呼ばれているそうです。 

そのように技能実習生が現場に良い影響をもたらす姿を見た企業の方々から、「技能実習生をもっと育てたい」「彼らは将来のことをどう考えているの?」「今日顔色悪かったけど大丈夫かな」といった声を聞くようになりました。そういった職場ではもはや実習生は「外国人」「日本人」という括りではなく、「同じ志をもって働く仲間」であり、このようなケースでは技能実習は成功なのかもしれないと感じます。実習生と企業の双方が学びあう、技能を教えてもらう実習生にも受け入れる企業側にもメリットがある状況が本来の技能実習だと思います。

 西田様:技能実習は3年間で育てましょうという制度なので、配属した日から働けるという前提を持ってはいけません。企業が実習生を育成し、その成果を実感することで、受け入れに対するモチベーションが高まるというのが技能実習のあるべき姿ですし、企業にも理解いただきたいと考えています。

 ― コロナ禍での外国人材受け入れについて教えてください

 Q:コロナ禍で、技能実習生や企業からの相談に以前との変化はありますか?

 宮城様:私はコロナ禍に入ってからここで働き始めましたが、コロナ禍特有の実習生の悩みとして、母国にいる家族が心配という悩みが見られます。「母国にいる家族が感染してしまった」「コロナ禍で家族が失職したので自分が仕送りを増やさないといけない」というような不安が多いです。

 Q:その他、技能実習生受け入れに関して、コロナ前後での変化はありますか? 

西田様:企業についてお話しすると、コロナ禍の前後では技能実習生のリクルートの方法が大きく変化しました。コロナ禍以前は受入れ企業の方々が年に1回現地に訪問し、面接をして雇用関係を結んでいました。しかし、コロナ禍ではZoomやSkypeでの面接となりました。オンライン面接では、その人の雰囲気や人となりがわかりづらいというデメリットもありますが、逆に、雰囲気等感性に頼った判断材料だけでなく、出身地や家族構成・日本への理解等の情報を、事前に送り出し機関を通じて収集し、複合的にその人を評価できるようになったという利点もあります。また、以前は受入れ企業が現地渡航し、企業の社長さんのみで実習生を選んでいましたが、リモートでは監理団体も面接時の様子を確認できるため、スクリーニングの精度が上がったと思います。

 ― 技能実習生と地域のかかわりについて教えてください 

Q:技能実習生の方々と、地域住民や監理団体職員の方々の交流はありますか? 

宮城様:実は、私が訪問する中では実習生と地域の方々のかかわりを見ることはほとんどありません。しかし、それを作るのが監理団体の仕事だと考えています。技能実習生が地域に住み始めるときに、近所の方々に挨拶回りをしたり、近所の方々にしっかりとあいさつをしようといった指導をしたりしています。地域の方々の中には、近所に外国人が住むことを嫌がる人たちもいます。しかし、実習生が生活をする中で、だんだんと関係を構築することができている様子を見ることもあります。

 実習生の来日後、入国後講習のために地域の宿舎を借りていたことがあり、地域の方たちは最初、「外国人が来たぞ」という様子で宿舎を覗いて見ていました。しかし、1か月間講習を続け実習生も近所の方に挨拶をする中で、だんだんと関係を築くことができ、「よく来たね」と受け入れてくれるようになりました。講習を終え宿舎を発つときには、お見送りに来てくれたりお菓子を持ってきてくれたりしました。

 また、フルーツが大好きな技能実習生がいて、宿舎に向かう道沿いの家の庭に植えてあるミカンの木を毎日研修の休み時間に眺めていたそうです。その木には沢山ミカンがなっていたのですが全く収穫されておらず、下に落ちて腐ってしまう実もあり、彼は「なんで食べないのだろう」と思い、ミカンを眺めながら挨拶を続けていました。すると、近所のおばあさんが「食べたいの?」と話しかけ、「私たちは食べないから持っていきなさい」と言って山ほどのミカンをくれたそうです。

 このように、実習生が地域にいることによって自然と交流が生まれ、地域の人とも関係構築できるケースも私たちが知らないだけできっと色々あると思います。

 ― VRB協同組合の職員の方について教えてください

 Q:技能実習生の方々とコミュニケーションを取る上で気を付けていることはありますか? 

宮城様:メディア等でよく報道される「○○人は泥棒だ」というような噂に翻弄されないように気を付けています。目の前の実習生を理解し、実態を見つめることが大切です。また、やさしい日本語を使って実習生にわかりやすく話しかけたり、実習生の母国の情勢を常にチェックしてなるべく実習生と同じ目線で話ができるように心がけています。 

― 外国人労働者支援に興味をもつ若者へメッセージをください! 

自分自身が「外国人」になる経験をしてください!海外で生活することは、自分の常識を否定される状況で活動しなければいけないため、メンタルが折れることが多いです。その経験をしておかなければ、日本にきて苦労する実習生の気持ちを理解することは難しいと思います。留学でもスタディーツアーでも何でもいいので、学生の間に「アウェーでの経験」をしてみてください。 

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学生レポーターの気づき・学び

 私は「あいさつ」が大事であることを学びました。国内旅行でも旅行先の方からの「おはよう」という一言だけで心が温まり、そこから交流が生まれると思います。しかしながらその一言を話すためには勇気が必要で、難しいことも理解できます。西田様から「アウエーを感じてみる」というアドバイスを頂き、来年の大学院留学を通して経験し、在留外国人について考え直す機会になるのではないかと考えました。労働力ではなく、出身地の発展という大切な将来を背おっている技能実習生をこれからも応援したいです。(荘) 

「技能実習の本来あるべき姿は何か」「実習生・企業にとって何が良いのか」を考え実現しようとなさっている姿が特に印象に残っています。技能実習制度が掲げている目的は日本での技術習得を通じた国際協力ですが、それを実現するためには、受け入れ企業にとっても、職場の活性化といったメリットを得て技能実習生をもっと育てようというモチベーションにつながるといったサイクル作りが必要であると学びました。そのために実習生と企業の双方に働きかけ、丁寧なサポートを行われているVRBの方々の取り組みや信念を聞くことは、技能実習生のサポートに関心を持つ若者の一人として何が求められているのかを考え直すきっかけになったと思います。(相山) 

特に印象に残ったのは西田さんの「来日する外国人がどういうことを日本でやりたいか」「受け入れる企業がどういった外国人を受け入れたいか」、内容に応じてスキームを利用するべきだと発言されていた部分です。技能実習制度に対する評価や批判は様々ですが、利用側にとって大事なことは、制度を適切に理解し、制度の利用によって利用側にどのような未来が待っているのかをしっかり考えることだと思います。日本に行く実習生、実習生を受け入れる企業や監理団体、現地の送り出し機関等の各主体が、制度利用によって生じるメリットや注意点に留意し、関係主体との連携が取れているか、信頼できる相談先を確保しているか十分検討して制度を利用する事が大切だと感じました。同時にそうしたことが難しくある背景には、人手不足や経営難に悩む中小企業の実状や、資金稼ぎの目的で来る実習生など、日本社会全体そして国を超えて考えるべき課題があるからだと思います。今学生として何が出来るのか、JP-MIRAI Youthの一員として今後どう行動していくべきかを考える大変貴重な機会でした。 (藤井) 

技能実習制度が機能するためには、技能実習生への教育と並行して、企業側の異文化理解の促進が欠かせないという話が印象的でした。日本人-外国人、雇用者-労働者という二重のパワーバランスの偏りがある中で、「ニュートラルな立場」で企業と実習生の双方に働きかけることができる監理団体の重要性を改めて認識しました。(持田)

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 JP-MIRAI youthとは

 JP-MIRAI youthは、責任ある外国人労働者受け入れプラットフォーム( https://jp-mirai.org/jp/)のユース組織です。2021年8月から始動し、外国人労働者に関する活動・研究をしている、または関心を持つ方のための学びや交流の場を提供しています。

「学生レポーターによるインタビュー企画」とは

 学生が外国人労働者受け入れ支援に取り組んでいらっしゃる企業・監理団体・送出機関に取材をし、さらに外国人労働者の方々にインタビューをすることで、多文化共生や在留外国人に関する知識と理解を深めることを目指す企画です。学生が外国人労働者支援の現場を実際に訪問し、そこで得た学びや気づきを同世代に発信していきます。

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